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イランは、イスラエルと米国の攻撃によって、最高指導者のハメネイ師が殺害され、今やほぼ孤立無援の状態にある。長年の親密国であるロシアと中国は、攻撃に対する外交的な非難と懸念表明しか提供していない。これまでの密接な関係は、紙のごとく薄いものであったことを示した。イランは、追詰められている。

 

『ロイター』(3月6日付)は、「孤立イランが報復、ロシア・中国が静観する理由」と題する記事を掲載した。

 

イランは、中東を越えて報復攻撃をすることで応酬した。ミサイルやドローン(無人機)の攻撃は世界のエネルギー市場に衝撃を与え、米国から中国に至るまでの各国政府を震撼させ、世界の石油供給量のうち2割を担うホルムズ海峡経由の海上輸送をまひさせている。イランのミサイルはキプロスやアゼルバイジャン、トルコ、湾岸諸国にまで到達し、極めて重要な企業やエネルギーインフラ、米軍基地を標的とした。石油施設や製油所、石油の主要供給ルートが攻撃を受け、原油と天然ガスの供給に深刻な混乱が生じた。

 

(1)「アナリストらによると、ロシアと中国の事態を静観する姿勢は、冷徹な計算に基づいている。ワシントン研究所のロシア専門家、アンナ・ボルシェフスカヤ氏は「ロシアのプーチン大統領には他の優先事項があり、その最たるものが(侵攻した)ウクライナだ」とし、「ロシアが米国との直接的な軍事衝突に踏み込むのは愚かな行為だろう」と指摘した。ロシアの高官筋は、「イランとその周辺およびペルシャ湾での情勢悪化は、既にウクライナでの戦闘からの関心をそらしている。これは紛れもない事実だ。他には『失った同盟国』への感情論があるに過ぎない」と語った」

 

ロシアには、冷酷な計算がある。世界でのウクライナ侵攻への関心が薄くなることだ。もはや、イランへの同情を示す余裕もなくなっている。

 

(2)「紛争が激化する中で中国、ロシアの両国は制約を受けた。中国は湾岸諸国へのエネルギーと貿易への依存やアジアの安全保障上の優先課題に、ロシアはウクライナでの消耗戦にそれぞれ縛られた。その結果、明白な逆説が生じている。それは、イランが両国にとって戦略的に有益であり続けているものの、戦って守るほどには有益ではないということだ」

 

ロシアと中国にとって、イランは米国と戦ってまで守る価値がないということだ。これまでの両国は、国際連帯を「ポーズ」として見せつけてきた。そうとも知らずに、心底から中ロを「頼りになる存在」と位置づけてきた国々には、冷水を浴びせられた思いであろう。中国は、台湾と国交を結んでいる国々へ甘言を弄して接近し断交させてきた。その甘言は、イランが例のように、いざというときの「保険」にはならないであろう。

 

(3)「中国の抑制的な対応は、長年の戦略を反映している。それは中核的な利益を守るため、遠く離れた地域での拘束力のある安全保障上の約束を避けるという戦略だ。カーネギー国際平和財団のエバン・フェイゲンバウム氏は、米国の同盟が相互防衛義務に基づいているのとは異なり、中国は貿易・投資・武器販売を基盤とする連携を好むと指摘。こうした関係は、東アジアを越えた高コストな紛争に中国が巻き込まれることを防いでいると説明した」

 

中国は、東アジアを越えた高コストな紛争に巻き込まれないという壁を立てている。それ以外の地域では、張り子の虎にすぎない。一帯一路は、ビジネス用で「中国利益」のために存在するワンウエイ(一方通行)だ。

 

(4)「中国は、貿易およびエネルギー購入で世界最大級の国である。イランや、イランのライバルであるイスラム教スンニ派の湾岸諸国との関係を維持している。中南米でも、トランプ米大統領が今年1月に当時のマドゥロ大統領を拘束させたベネズエラだけに全力を注ぐことは決してなかった。これに対し、ワシントン研究所のヘンリー・トゥーゲンンダット氏は、「中国がさらに何かを行いたいと思ったとしても、戦略的関心や軍事資産を中核的な安全保障から移すことはないだろう」と指摘。その上で「中国が関心を持っているのは、外国での自国の評判だけだ。中国が関心を持っているのは台湾と南シナ海、そして米国と日本からの脅威と認識されているものだけだ」との見方を示した」

 

これまで、中国は中東外交に乗り出したとして注目を集めてきた。だが、肝心の時には、姿を見せず、見当違いの「新日本軍国主義論」とやらを吹聴して回っている。外交戦略がズレているのだ。

 

(5)「イランを巡る紛争は、中国にとって有利に働く可能性さえある。中国は、米軍が東アジアから遠く離れた場所で足止めされ、兵器の備蓄が枯渇する様子を傍観しながら、米国の能力や作戦をリアルタイムで観察することができる。培った知見は、将来の台湾に対するシナリオを考えるのに役立つだろう。中国の大きな弱点は、ホルムズ海峡を通るエネルギーの流通にある。中国の石油輸入のうち約45%はホルムズ海峡を経由している。しかし、専門家によると中国は戦略的な備蓄を既に構築し、タンカーや貯蔵施設に相当量のイラン産原油を確保している」

 

中国が、米国へ一目置いた腰の引けた姿勢の背景には、深刻な自国経済の停滞がある。米国の機嫌を損ねたら、輸出に大きな影響が出るという危惧だ。3月から4月にかけてのトランプ訪中を実現させて、中国国内での権威立直しに利用したいという目先の利益だけだろう。