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中国は目下、開催中の全人代で26年GDP目標を「4.5~5%」へ引下げた。5%目標の線が、昨年下半期から崩れているからだ。「内巻」という新語が生まれるほど、過剰生産による値下げ競争の結果でもある。こうした状況で、企業収益は一段と悪化している。最高裁は2025年9月、労働者と雇用主が年金である社会保険料を支払わないことを違法と判断した。社会保険料も支払えないほど、疲弊しているのだ。この中国経済は、これからどうなるのか。超高齢社会で、年金空洞化によって路頭に迷うことは確実である。

 

『ロイター』(3月7日付)は、「道半ばの中国『社会保険改革』、企業にも個人にも負担重く」と題する記事を掲載した。

 

中国南部・東莞の自動車部品工場に勤めるジョン・チャオさん(37)とチャーリー・ウェイさん(23)はともに、中国政府が近年進めた社会保険制度改革を巡る最高人民法院(最高裁)の画期的な判決への勤務先の対応に不満を抱いている。しかし、両者の不満は全く異なる。

 

(1)「最高裁は2025年9月、労働者と雇用主が社会保険料を支払わないことを違法と判断。これにより、社会保障制度を通じて生産者から消費者に対する長期的な資源再分配の基盤を整えた。すると、チャオさんとウェイさんの勤務先はコスト削減のために給与体系を改定し、1万2000元(約1747米ドル)の月収のうち約3分の1の基本給だけを社会保険料算定の対象にした。現在では従業員側も社会保険料の一部を自己負担しなければならない」

 

中国の経済政策と同じで、企業も労働者もその場しのぎである。年金という老後保障の要を、適当にあしらっているからだ。今が良ければ、老後はどうでも良いという刹那主義に驚くほかない。

 

(2)「最高裁判決から約半年が経過したが、労働者も雇用主もエコノミストも、順守の状況は完全ではないと指摘する。人事社会保障省と国務院(内閣に相当)はコメントの要請に応じなかった。人事社会保障省の報道官は今年1月、社会保険制度改革が「着実に推進されている」と主張した。ロイターが10人を超える労働者と工場経営者に取材したところ、企業は判決に対して自社負担を最小限に抑える形で対応しており、場合によっては賃金を引き下げるケースさえあった。大半の企業は給与全額ではなく、より低い基本給で社会保険料を算定しており、残りを賞与(ボーナス)や福利厚生として補っている。一部の労働者と1人の工場経営者は、社会保険料を支払う余裕がないため、依然として全く支払っていないと明らかにした」

 

国家として、職場で社会保険料がどう扱われているか常にチェックしておかなければならないはずであろう。日本との実情と比べて雲泥の差である。

 

(3)「雇用主が収入の約25%、従業員が収入の約10%をそれぞれ拠出することを義務付けた決定は、社会保障網の強化を目的としている。これは労働者が将来の備えとして個人貯蓄に回すのではなく、現在より多く消費するよう促すための重要な一歩となる。同時に、この施策は労働コストを上昇させる。このような拠出を回避してきたことが、中国の競争力を強化し、輸出を主要な成長エンジンに変えられた経緯がある」

 

雇用主が、収入の約25%、従業員は収入の約10%をそれぞれ拠出する。こうして社会保険財政は成立する。現状は、雇用主が不況で払えないので、月収を切下げる形で積立額を減らしている。これが、中国の現場で起こっている実態だ。中国経済は、完全に「左前」になっている。

 

(4)「ハーバード大ケネディスクールのモサバー・ラマーニ・センター・フォー・ビジネス・アンド・ガバメント研究員のリチャード・ヤロー氏は、「競合他社が社会保険料の支払いを回避しているなら、なおさら順守しない理由がある」と語った。ある産業用バルブメーカーの経営者は、当局から順守するよう圧力を受ける事態にはならないと予想する。なぜならば、その場合には自社のような工場を「つぶす」ことになるからだと指摘した」

 

当局は、社会保険料の徴収を順守するように企業へ圧力を掛けないと予想されている。なぜならば、企業が潰れるからだという。ここまで、追い込まれているのだ。

 

(5)「人材サービス企業の中和集団が2025年8月、6689社を対象に実施した調査によると「完全に順守」していたのは34.1%にとどまった。社会保険制度の最大の収入源となっている都市部年金は、25年に前年比5.77%増の7兆8000億元の収入があった。ただ、増加率は24年の5.61%とほとんど変わらなかった。労働問題が専門のある弁護士は、企業が低い基本給を使うことで支払額を過少申告する傾向があると指摘する。これは違法行為となり得るが、「企業はリスクを認識しながらも、可能性の問題として扱っている」と語った」

 

社会保険料徴収ルールが、「完全順守」されているのは全体の3分の1にすぎない。残りは、守られていないのだ。中国の「老後破産予備軍」は、確実に増えている。