中国は、米・イスラエル両軍によるイラン攻撃を巡り、友好国イランへの直接的な支援を見送っている。トランプ米大統領の訪中を3月末に控え、対米関係の悪化を避けたいという事情があるからだ。現実に中国は、中東情勢へ介入できる余地が少ない。習近平政権は、これまで貿易・投資面で中東との関係を深めてきた。だが、米軍の圧倒的な戦力を前に何もできず、経済による影響力拡大の限界を露呈している。自称、中国大国論は遠くへかすんだ感じである。
『ブルームバーグ』(3月9日付)は、「中国、イラン戦争でも米国との関係を最優先-トランプ氏訪中に期待感」と題する記事を掲載した
トランプ米大統領は、対イラン攻撃の拡大を示唆し、中国の戦略的パートナーを「非常に激しい」打撃を与えると警告した数時間後、中国の王毅外相は世界中から集まった報道陣を前に2026年が米中関係にとって節目の年になり得るとの考えを示した。
(1)「王氏は8日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の会期中に行われた年次記者会見で、米中が「誠意と信義をもって向き合えば、26年を中国と米国の関係にとって健全で安定的かつ持続可能な発展の画期的な年にできる」と述べた。この発言は、王氏自身が5年前に署名したイランとの関係強化を維持しつつも、米国が主導しているイラン攻撃にもかかわらず、米政府との関係を守る意向を中国側が示したこれまでで最も明確なシグナルだ」
不動産バブル崩壊の後遺症に悩む中国は、米国との友好関係維持による輸出増にすべてを賭けている。米国の機嫌を損ねてはならない窮地に立たされているのだ。この鬱積した気持ちが、日本非難となって現れているのだろう。
(2)「中国は、中東情勢の激化に対し脆弱だ。中東での生産や輸送の混乱がエネルギー価格を急騰させている。また、海上輸送による中国の原油輸入の約13%を占めていたイランが不安定化すれば、供給源の多角化を進める中国の取り組みに打撃となる。王氏は停戦を求め、イランを巡る紛争は「決して起きてはならなかった」と論じた。一方、31日~4月1日に予定されるトランプ氏の訪中に合わせ、習近平国家主席が開く首脳会談の計画に、この紛争が影響することはないとの見方を示唆した」
中国は、イラン問題よりも自国経済の立直しが重要な状況へ追い込まれている。
(3)「北京を拠点とする独立系シンクタンク、ホライズン・インサイツ・センターのエグゼクティブディレクター、チュー・チュンウェイ氏によると、米中関係の安定と改善の重要性は強調してもし過ぎることはない。イランや中東全体で何が起きても、米中関係が不安定化したり首脳会談が中止されたりする可能性は低いとの見方を示した」
中国は、自国経済が立ち行くかどうかという切羽詰まった状況にある。少しでも、米国へ輸出できる保証を得たいのだ。
(4)「王氏の記者会見前から、米中が首脳による発表を想定した潜在的な合意の準備を進めている兆しがあった。そこには大規模な商業取引が含まれる見通しだ。ベッセント米財務長官とグリア米通商代表部(USTR)代表が来週末、中国の何立峰副首相とパリで会合を開き、地ならしを行うとみられている」
米国は、中国へ米国産石油の購入を要求する構えだ。中国は、ベネズエラやイランから割安な原油を輸入してきただけに、割高な米国産輸入には抵抗があろう。
(5)「王氏のイランに関するスタンスに見られる自制は、世界一の経済大国である米国との関係安定が最優先との計算に基づくものだ。中国は国内での成長鈍化と、自国の輸出に対する世界的な反発の高まりに直面。首脳会談が成功すれば、関税対立の棚上げ延長や貿易を巡る対外環境の安定化につながる可能性がある。ユーラシア・グループのシニアアナリストで元米外交官のジェレミー・チャン氏は、中国はイランやベネズエラを守ることよりも、米国とのデタント(緊張緩和)維持により大きな関心を持っていると指摘した」
中国の本音は、イランやベネズエラを守ることよりも、米国とのデタント維持により大きな利益機会を見出そうとしている。これまでの「反米チャンピオン」が、ここまでへりくだっているのだ。
(6)「こうした計算には、中国の信頼性を損ねるリスクも伴う。中国は、自らが提唱する「グローバル・セキュリティー・イニシアチブ(GSI)」を、弱肉強食の論理や米国の介入主義的アプローチより優れた枠組みと位置付けてきた。友好国への実質的な支援が乏しければ、中国が米国の力に代わる信頼できる選択肢を提示しているというメッセージ自体が損なわれかねない。チャン氏は、「ウクライナやパレスチナ自治区ガザ、そして今回のイランでの世界を巻き込む紛争は中国の構想の限界を示している」と分析。「パートナー国に準安全保障上の保証を提供したいのであれば、GSIよりも強力な手段を打ち出す必要がある」と述べた」
中国は、「グローバル・セキュリティー・イニシアチブ(GSI)」を足場に、反米勢力の旗頭になってきた。それが、ベネズエラもイランも見捨てて、米国の元へはせ参じる格好だ。貧すれば鈍する、という適例がみられる


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