イランの次期最高指導者は、死亡したハメネイ師の次男、モジタバ師に決まった。強硬論者であることから、紛争の長期化予想が高まっている。これを反映して、原油価格の高騰という事態だ。国際エネルギー機関(IEA)トップは、G7(主要7ヶ国)財政相会議で「各国の石油備蓄の放出に早急に取り組むべき」と呼びかけなど慌ただしくなっている。こうした事態を前に、米国トランプ大統領は8日(現地時間)、「イランへの攻撃停止を巡り「適切な時期に決断する」と述べた。
『日本経済新聞 電子版』(3月9日付)は、「トランプ氏、原油高騰に焦り イランとの戦闘停止『適切な時期に決断』」と題する記事を掲載した。
トランプ米大統領は8日、イランへの攻撃停止を巡り「適切な時期に決断する」と述べた。イランが反米強硬派の最高指導者を選んで抗戦の意思を示すなかで、攻撃停止に言及した。中東情勢の緊迫化を見込んだ原油価格の高騰に対する焦りが背景にありそうだ。
(1)「トランプ氏は、イスラエルメディア『タイムズ・オブ・イスラエル』のインタビューに語った。攻撃停止の判断はイスラエルのネタニヤフ首相と一緒に検討する考えを示した。「イスラエルを破壊しようとした国を私たちは破壊したのだ」と一連の攻撃の成果を主張した。トランプ氏は6日、イランに無条件降伏を突きつけた。交戦中のイランとの合意条件を引き上げた。イランは9日までに、新たな最高指導者に殺害されたハメネイ師の次男、モジタバ・ハメネイ師を選んだ。反米強硬派として知られる同師の選出を通じて、米国とイスラエルへの抗戦姿勢を鮮明にした形だ」
イランが、最強硬派を次期最高指導者に選んで、少なくも6ヶ月間は抵抗するという軍部の声明もあった。これが、原油高騰へ拍車をかけている。
(2)「トランプ氏は、イラン最高指導者の選出に自ら関与する考えを示し、モジタバ師は「受け入れがたい」と反対していた。現体制の中から米国と協力する穏健派の選出を望んだが、思惑通りにはならなかった。イスラエルメディアにモジタバ師が選出されたことを問われ「どうなるか注視する」とだけ答えた。トランプ氏が攻撃停止に言及したりモジタバ師への批判を控えたりした背景に、原油価格の急騰といった金融市場の混乱がありそうだ」
トランプ氏は、市場の反応に対して敏感に動くという特色がある。国債相場の下落の際も、同様に政策を変更している。
(3)「トランプ氏は8日、SNSに「イランの核の脅威を破壊し終えれば原油価格は急落する」と投稿した。高騰は短期間で収まるとの見方を示し「米国と世界の平和と安全のためならとても小さな代償だ」と言い切った。とはいえ、原油高に伴ってガソリン価格が跳ね上がれば、車社会の米国で有権者の不満が高まりやすい。11月の米中間選挙を控えて、トランプ氏にとって大きな打撃となりかねない。野党・民主党は長引く物価高による生活苦をトランプ政権への攻撃材料にしている。最近は、与党・共和党地盤の地方選挙で民主党が勝利する事態が相次ぐ」
米国のガソリン価格が急騰している。全米自動車協会(AAA)によるとレギュラーガソリンは9日時点で、イラン攻撃開始時より16.8%も値上がりしている。トランプ政権は、11月に中間選挙を控えており、家計の負担増が強い逆風となる。
(4)「トランプ氏の支持層「MAGA」からも不満の声が強まる。MAGAはもともと外国の戦争への関与を嫌う。イランとの長期戦は、中間選挙を前に支持層の分裂まで引き起こす可能性がある。3月末からは、訪中し中国の習近平国家主席と会談する予定だが、対イラン情勢が影響しかねない。イランは対決姿勢を崩していないが、トランプ氏からはすでに「勝利宣言」のような発言も出始めている」
MAGAは、外国との戦争を嫌う面があるので、イランとの長期戦が中間選挙で不利に働く懸念も出ている。
(5)「米ブルームバーグ通信は8日、トランプ氏がイラン攻撃で地上への特殊部隊投入を選択肢として検討していると報じた。イランが保有する高濃縮ウランを押収するためだという。トランプ氏が言う「核の脅威」を取り除いて成果を誇示し、戦争の長期化も避けたいとの思惑が透ける。ただ地上作戦への突入は情勢をさらに混乱させるおそれもある」
米国が、地上作戦へ踏み込めば長期化は避けられない。原油価格の高騰は、こういう諸々の要素を織り込んだものだ。
ライト米エネルギー長官は8日、CBSテレビに出演し、米国とイスラエルのイラン攻撃をきっかけとした原油価格高騰について「長くは続かない」と述べた。イランの攻撃力低下に伴い、原油高を招いている国際原油輸送の要衝ホルムズ海峡の封鎖問題が間もなく緩和するとの見通しを示した。ライト氏は、原油高が「最悪でも数週間で、数カ月とはならない」と指摘。世界の原油供給は十分で、相場も「現在の水準からさほど上昇しない」と予想した。原油高はあくまでも「物流の問題だ」と断じた。


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