日本経済の「失われた30年」で最大の被害者は、年収500万円以下の勤労者層である。社会保険料を差し引かれると、手取り(可処分所得)はぐっと少なくなる。この所得層を救済しない限り、日本経済は実質的に「失われた30年」のままである。そこで、与野党は早急に給付金付き税額控除制の採用で意見が一致しそうだ。
すでに25年の確定申告では、基礎控除額を8段階に区分けしている。基礎控除額は従来、2400万円以下が48万円で一本であった。25年は、課税所得を2500万円以下、8段階に分けて基礎控除額が決められている。これだけ、きめ細かく分けているのは、給付付き税額控除制度への準備である。基礎控除額を小刻みに分類して、年収300~500万円の層へ徴税でなく、給付金を支給するという画期的税制への準備とみてよい。
財務省は、すでに給付金付き税額控除制の施行を想定している。国会で法案が通れば、26年確定申告から始められるほど、準備が整っているはずだ。私がメルマガ(26年3月9日発行)の原稿で試算した所では、次のような結果が出ている。
給付額は、基礎控除の“給付化”をベースにする。ただし、基礎控除95万円をそのまま給付にするのは財政的に不可能である。給付額は、10〜30万円程度が予想される。そのモデルを参考までに上げておく。金額は概算である。
年収 給付額 所得税 可処分所得増加
200万円 30万円 ほぼゼロ 15%増
300万円 25万円 ほぼゼロ 10%増
400万円 15万円 数万円 5%増
500万円 5万円 1~2%増
600万円 0円
財源は4〜7兆円である。国債発行でなくとも十分に既存の税源調整で賄える。高所得層の控除縮小で1〜2兆円、社会保険料の上限調整で1〜2兆円、給付の統合(非効率給付の整理)で0.5〜1兆円、それに自然増収(名目成長率上昇)が2〜3兆円加わる。消費税率の食品0%よりも、はるかに効率的で即効性がある
『日本経済新聞 電子版』(4月6日付)は、「給付付き税額控除「簡易型」先行案、公金口座を活用 一定の所得以下に」と題する記事を掲載した
高市早苗政権が検討する給付付き税額控除に関し、段階的に導入する案が浮上してきた。資産や所得を正確に把握し、支援の対象を絞りこむのに時間がかかるためだ。勤労所得に応じて給付するなど「簡易型」を先行して議論する見通しだ。超党派の「社会保障国民会議」は6日、国会内で与野党の実務者会議を開いた。簡素な制度から段階的に広げていく案について話し合った。今後、給付付き税額控除の具体的な制度設計に向けて本格的な議論に入る。夏前の中間とりまとめを想定する。
(1)「与野党からは給付付き税額控除の早期導入を優先し簡易型を求める意見が相次ぐ。制度設計に関わる自民党議員は「最初からすべてやろうとすると、これまでの制度との整理も複雑だ」と説明する。「『またできなかった』と言われるくらいなら簡易版だけでもまずやった方がいい」と話す。中道改革連合の落合貴之政調会長代行は6日、国会内で記者団に「一気に完璧なものは入れられない」と述べた。「どういった形で着地させるのか、導入する制度だけで終わりにしないことも重要だ」と強調した」
財務省は、すでに給付付き税額控除の早期導入を予測しており、準備は終わっている。後は、国会が法案を通すだけである。
(2)「給付金付き税額控除の制度設計で主な論点は3つある。①支援の対象②所得や資産の把握範囲③具体的な支援策――が課題になる。個人や世帯のあらゆる所得や資産を正確に把握するのが理想だ。「本当に困っている人」に対象を絞って支援しやすくなる。代わりに所得や資産を詳しく把握するほど時間を要す。勤労所得や金融所得、保有資産にくわえ、各種給付も調べる必要がある。税や社会保険料の負担も確認しないといけない。現状は低所得世帯を中心に所得や資産を正確に捕捉できない」
給付金付き税額控除の対象者は、「本当に困っている人」に対象を絞って支援しやすくすることだ。私のメルマガ記事で概略が分かるであろう。
(3)「自民党内で簡易型として「プッシュ型給付」が候補に挙がる。勤労所得が一定以下の人を対象に現金を配る。給与所得者は年末調整、自営業者らは確定申告でそれぞれ所得を把握する案を想定する。日本維新の会の猪瀬直樹氏も6日の実務者会議で、精緻な制度までのつなぎ目として「簡素な給付も考える必要がある」と発言した。維新の梅村聡税調会長が会議後、記者団に明かした。給付金や所得税の還付金などを国に登録した銀行の預貯金口座で受け取れる「公金受取口座」の活用を見込む」
給与所得者は年末調整、自営業者らは確定申告でそれぞれ所得を把握する案が想定されているという。メルマガ記事の通である。
(4)「英国や韓国は、給付付き税額控除に似た制度を段階的に導入した。英国は13年、所得補助や児童税額控除などを1つに統合した「ユニバーサルクレジット」を導入した。対象の拡大やデジタル化など徐々に進めてきた。韓国は就労支援を目的とした「勤労所得税額控除」を採用する。08年から10年程度かけて完成させた。対象をサラリーマンから自営業に拡大し、新たな控除の追加や金額の引き上げを進めた。大和総研の是枝俊悟主任研究員は国民会議に出した資料で、英国や韓国が段階的に支援の精度を高めたと分析した」
英国は2013年、所得補助や児童税額控除などを1つに統合した「ユニバーサルクレジット」を導入した。日本もこの案で早急に実行することだ。日本の中間層をテコ入れしなければ、出生率は下がるばかりである。


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