中国自動車で、最高ブランドは「紅旗」である。紅旗は、単なる自動車ブランドではなく、
中国政府の威信を象徴するブランドだ。習近平主席のパレード車、外国首脳の送迎車、国家行事の公式車という中国における「最高舞台」を演出する上に欠かせない自動車である。その紅旗が、「給電時間5分、1200キロ走行の全固体電池を開発した」と発表したのである。理論的に5分給電で1200キロ走行はあり得ない、と指摘されている。しかも、検証されたものでないことから、単なる理論値とみなされている。
国家ブランドの紅旗がなぜ、こういう不確かな情報を公開した意図が疑われている。中国EV産業が壁にぶつかっている証拠とみられる。中国のEVメーカーは、補助金終了、過剰生産、在庫の山、欧米の制裁強化、中東市場の競争激化という四重苦に直面している。その中で、「世界初」「世界最強」「世界最速」といった「技術覇権アピール」が必要になっているとみられる。紅旗の発表は、その典型であろう。
中国は、過去にも同様な「虚偽発表」をしている。「量子通信衛星」、「量子コンピュータ世界一」、「高速鉄道世界最速」、「月面基地計画」などと同じ構造と言えそうだ。中国の「高速鉄道世界最速」は、事実上誇張であり、実用的な意味では虚偽に近いものだ。実験線での一瞬の速度であり、営業速度は日本の新幹線とほぼ同等である。
『江南タイムズ』(4月7日付)は、「『充電5分、1200km走る』紅旗が証明した全固体電池、EVの三大弱点が消える日」と題する記事を掲載した。
電気自動車(EV)時代の根本的な課題である航続距離の短さ、冬季の性能低下、そして火災への不安を一挙に解決する「次世代バッテリー(夢のバッテリー)」が、ついに研究室を出て実際の道路に登場した。中国のプレミアムブランド「紅旗(ホンチー)」が、全固体電池を搭載したSUV「天宮06」のプロトタイプによる実走行テストを公開し、世界の自動車市場に一石を投じた。
(1)「紅旗の親会社である中国第一汽車集団(FAW)は2025年12月31日、自社開発の全固体電池パックを電動SUV「天宮06」に搭載することに成功したと発表した。この成果は約470日間に及ぶ集中的な研究の結実である。単なる理論検証を超え、実際の走行条件下での安定性と統合制御性能を確認する実戦段階に入ったという点が極めて重要だ。紅旗は今回のテストデータを基に、2027年からフラッグシップセダンおよびSUVラインナップに全固体電池を順次導入する計画を立てている」
この記事では、外部の第三者検証がないことや実験条件も非公開である。充電5分・1200kmは理論値に近いという点で、商用技術としては疑問符がついている。まず、「充電5分で1200km」は現実的に不可能とされている。世界にそんな充電器は存在しないし、車体も電池も配線もこれに耐えられないとしている。物理的に不可能という結論だ。中国企業は、半固体電池を全固体電池と称している例が多いことから、今回も半固体電池である可能性もあろう。
(2)「最大の利点は安全性だ。既存の電池は液体電解質の漏れや熱暴走による火災リスクが課題であったが、全固体電池は不燃性の固体素材を使用するため、火災リスクが極めて低い。また、充電時間も飛躍的に短縮され、5〜10分程度の短時間充電で長距離走行が可能になるなど、利便性は内燃機関車と同等レベルまで向上する見通しだ」
すでに指摘したように、充電時間が5分で1200キロ走行は不可能である。
(3)「市場の主導権を巡るグローバル企業のスピード競争は、まさに「次世代電池戦争」の様相を呈している。トヨタ自動車は2027〜2028年に10分間の充電で1200km走行できるバッテリーの投入を公言しており、海外メーカー各社も2027年以降の商業化を目指してパイロットラインを稼働させている。中国政府も国家レベルで60億元(約1300億円)規模のコンソーシアムを構成し、BYDやCATLらと協力して技術の商業化を全面的に支援する構えだ」
中国が、全固体電池の研究に着手したのは2年前である。大幅に遅れていることから、短期間に最も難しいとされる全固体電池開発が実現するのは困難であろう。全固体電池では、トヨタ自動車が本命で試作でも最先端を走っている。中国は、完全に出遅れた。
(4)「業界では、全固体電池の本格的な普及は2030年以降と予測されている。2027年から始まるフラッグシップモデルでの激突が、今後10年の主導権を決定づけると分析されている。東京〜大阪間の往復をも無充電でこなす距離をわずか数分で充電できるようになれば、現在のEV需要の停滞(キャズム)は一気に解消に向かうとの見方が強い。紅旗「天宮06」の成果は、全固体電池時代の到来が予想以上に近づいていることを示す象徴的な動きといえる」
中国が、全固体電池量産といった物理的に不可能な性能を発表したことは、単なる誇張で済まされることでなく、国家的焦りの表れとみられる。全固体電池は「日本(トヨタ)が本命」と世界が知っている。世界の本命はトヨタであり、10分充電、1000km超、2027〜2028年商用化というロードマップは、国際的に高い信頼を得ていることだ。中国、これに対抗するために「日本より先に成功した」という物語を作る必要があるのだろう。そのための「政治的演出」が、今回の紅旗発表とみられる。気の毒な話だ。


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