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米国とイランが2週間の停戦合意にこぎ着けたことを受け、市場では株価上昇と原油価格下落が一気に進んだ。原油供給の混乱収束に向けた動きを歓迎した形だが、各国が期待するホルムズ海峡の正常化につながるかは見通せない。イランと米国は、ホルムズ海峡通航を巡る方針が180度の違いだ。イランが「通航管理」を主張し、米国は「完全自由」である。公海の通航で通航料を課すとは「追い剥ぎ」行為である。問題は、中国がこの悪例を真似て台湾海峡へ適用することである。類は友を呼ぶという。懸念の種は消えないのだ。

 

『ロイター』(4月8日付)は、「イランはホルムズ海峡封鎖解除せずと米情報機関 威力は『核兵器以上』」と題する記事を掲載した。

 

米情報機関は、最近の報告書でイランがホルムズ海峡を近いうちに開放する可能性は低いと警告した。世界一重要な石油の動脈を掌握していることは、イランにとって米国に対する唯一の実質的な交渉材料だからだ。3人の関係者が明らかにした。つまりイランは、ホルムズ海峡の通航を制限することで、トランプ米大統領に圧力をかけ続ける可能性がある。

 

(1)「報告書は、イランの軍事力根絶を目的としたこの戦争によって、イランが主要な航路を脅かす能力が示され、皮肉にもイランの地域的な影響力が高まる可能性を示している。トランプ氏は、世界の石油貿易の5分の1が通過するホルムズ海峡再開の難しさを過小にみせようと努めてきた。同氏は3日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「もう少しすれば、ホルムズ海峡を簡単に開放し、石油を手に入れ、大もうけすることができる」と投稿し、米軍に海峡再開を命じる可能性を示した」

 

トランプ大統領は、ホルムズ海峡再開の難しさを過小にみせようと努めている。実態は、かなり困難な問題である。

 

(2)「アナリストらは以前から、海峡の片側を支配するイランに対して武力を行使しようとすれば、多大な犠牲を伴い、米国は長期の地上戦に引き擦り込まれると警告してきた。紛争予防団体である「国際クライシス・グループ」のイラン・プロジェクト・ディレクター、アリ・バエズ氏は、「米国はイランによる大量破壊兵器の開発を阻止しようとして、『大量妨害兵器』を手渡してしまった」と言い切った。バエズ氏によればイランは、海峡の要衝を握ることで世界のエネルギー市場を左右する自国の能力が「核兵器よりもはるかに強力である」ことを理解している」

 

米国は、イランによる大量破壊兵器の開発を阻止しようとして、逆にホルムズ海峡で「大量妨害兵器」を手渡してしまったとで批判が出てきた。

 

(3)「海峡再開への米国の関与の可能性について、トランプ氏の姿勢は揺れている。イランによる封鎖解除を停戦の前提条件とする一方で、湾岸産油国や北大西洋条約機構(NATO)同盟国に対し、先頭に立って再開に努力するよう求めた。ホワイトハウス高官は、トランプ氏は「海峡は非常に近いうちに開放されると確信している」とし、終戦後はイランが海峡の運航を規制することは許されないと明言していると述べた。しかし同高官によると、トランプ氏は、米国よりも他国の方が「この事態(封鎖)を防ぐことに、より大きな利害関係を持っている」とも述べている」

 

トランプ氏は、ホルムズ海峡を利用する国がイランの妨害を排除すべきという立場にも立っている。これは、停戦交渉でホルムズ海峡通航問題が、二の次にされるリスクを抱えていることになる。

 

(4)「米国とイスラエルが、イランに対する戦争を始めた2月28日以来、イランは民間船への攻撃や機雷の敷設、通航料の要求などを通じ、ホルムズ海峡の通航を事実上遮断した。これにより世界の石油価格は数年来の高値まで急騰し、湾岸の石油・ガスに依存する国々で燃料不足を引き起こしている。エネルギーコストの上昇は米国内のインフレを助長するリスクがあり、トランプ氏の支持率は低下。11月の議会中間選挙を控え、同氏の政治責任が問われている」

 

米国内のガソリン価格上昇で、米国民も苦しみ始めている。11月の中間選挙に影響を与えることは不可避となっている。

 

(5)「情報機関の報告書は、イランがホルムズ海峡封鎖という「レバレッジ(てこ)」をすぐに手放す可能性は低いと警告している。関係者の1人は、「海峡に対する自国の力とレバレッジを実感した以上、すぐに手放さないのは確かだ」と語った。多くの専門家は、航路を再開するための軍事作戦には相当なリスクが伴うと指摘している。たとえ米軍がイラン南部の沿岸や島々を占拠したとしても、イラン革命防衛隊は国内深部から発射するドローンやミサイルで攻撃を続け、水域の支配を維持することができると専門家は言う。バエズ氏は「交通を混乱させ、船舶の通航を思いとどまらせるには、ドローンが1機か2機あれば十分だ」と述べた」

 

イランは、ドローン1機か2機で大型船舶の通航を妨害できる「大きなテコ」を手に入れた。この「成功体験」が、中国による台湾海峡管理策に使われるリスクも考えなければならない。イラン・中国・ロシアの「枢軸」は、同じ手口を使う点で警戒が必要であろう。

 

(6)「一部の専門家は、終戦後でさえ、イランが海峡の通航規制能力を放棄する可能性は低いとみている。復興には資金が必要で、商船から通航料を徴収することが復興資金調達の手段となるからだ。米中央情報局(CIA)元長官のビル・バーンズ氏は2日、雑誌『フォーリン・アフェアーズ』のポッドキャストで、イランは「レバレッジを維持しようとするだろう」と語った。同氏によれば、イランは海峡の通航制限能力を、米国とのいかなる和平合意においても「長期的な抑止力と安全の保証」を獲得するため、また戦後復興のための通航料徴収など「直接的な物質的利益」を得るために利用しようとする見通しだ。「それゆえに、今まさに交渉が非常に困難になっている」という」

 

イランは、ドローンを飛ばせば通航料を獲得できるという「甘い汁」を知ってしまった。それだけに、休戦交渉でこの難問を解決できるか疑わしいのだ。