中国の自動車メーカーの「内巻(過当競争)」は、何も変わっていないという。中国当局は2025年6月、電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)の安売りと、自動車各社のサプライヤーに対する買掛金の長すぎる支払期限を糾弾した。各社から60日以内に支払いするとの声明が相次いだものの、25年12月期決算を見ると、買掛債務の回転日数は高止まりしたままだ。何も改善されていないのだ。
『日本経済新聞 電子版』(4月10日付)は、「変わらぬ中国EV『過当競争』の闇 供給網は持続可能か」と題する記事を掲載した。
車載用鉛バッテリー大手の駱駝集団の劉長来会長は、「有力自動車メーカーが強大な支配的な地位を利用して圧力をかけ、一部のサプライヤーでは売掛金の回収まで9カ月かかっている」と、こう中国メディアに訴えた。3月上旬に開催された全国人民代表大会(全人代)で湖北省代表でもある劉会長は「業界全体の支払期限の厳格な規制」について政策提言した。
(1)「本来であれば、この問題は解決しているはずだ。25年6月に中国国務院(政府)が改正した中小企業への支払保障条例で、大企業による中小企業への60日以内の支払いが義務付けられた。だが25年12月期決算をみると、実際の買掛債務の回転日数はほとんど改善していない。QUICK・ファクトセットによると、BYDの25年12月期の買掛債務の回転日数は111日と24年の119日から若干短縮し、吉利汽車控股は112日と同じく123日から改善しているものの60日を大幅に超えている。中堅はむしろ長期化している。理想汽車は160日と42日も増え、賽力斯集団(セレス・グループ)も104日と25日伸びた」
中小企業への支払保障条例で、大企業による中小企業への60日以内の支払いが義務付けられたが、実際の買掛債務の回転日数はほとんど改善していないことが分かった。
(2)「波紋を呼んだのが、26年2月に中国自動車工業協会が公表した自動車メーカーの中小企業への支払いに関する調査結果だ。主要自動車メーカーの大多数は支払期限を60日以内に短縮しており、平均54日と前年に比べて10日短縮したという。自動車メーカーは条例をきちんと順守しているというわけだ。この差はどこから生まれるのか。一つには自動車メーカーは60日以内に支払手形を振り出せば、規制に該当しないからだ。条例には手形払いの「強制」を禁止しているものの、立場を考えればサプライヤーが断ることは難しいだろう。バランスシート上は買掛金が支払手形に項目が振り替わっている格好だ」
中国自動車工業協会が、公表した自動車メーカーの中小企業への支払いに関する調査結果では、主要自動車メーカーの大多数の支払期限が60日以内に短縮している。平均では、54日と前年に比べて10日も短縮だ。
(3)「中国メディアによると、自動車メーカーがサプライヤーから供給された部品の品質を確認する検収作業などを理由に、納入時期を意図的に先延ばしさせる行為が横行しているようだ。さらに自動車メーカーは自社工場付近にサプライヤーの倉庫を建設させ、まずはそこに部品を納入させた後、実際に使う時点を持って正式な納入とする「寄託制」という商慣行も一般的だという。こうしたバランスシートに反映しない商慣行を加味すれば、自動車メーカーの支払いの実態は買掛債務の回転日数よりもさらに深刻だろう。駱駝集団の劉会長の「9カ月」という指摘も現実味を帯びる」
自動車メーカーは、自社工場付近にサプライヤーの倉庫を建設させている。そこに部品を納入させた後、実際に使う時点を持って正式な納入とする「寄託制」という商慣行を取っている。この寄託制によると、買掛債務の実態は「9ヶ月」になるという。
(4)「みずほ総合研究所の月岡直樹主任エコノミストは、「違法行為の認定が容易ではないうえに、地方政府も地元の看板企業に配慮して厳しい取り締まりを行っていない可能性が高い」と指摘する。このまま、自動車メーカーの勝手が押し通るのだろうか。今年の全人代の李強(リー・チャン)首相が読み上げた所信表明演説に相当する「政府活動報告」では、「内巻は断固是正する」と前年の表現より厳しくなった。「企業の未払い問題の解決に一層の力を入れる」と新たな文言も盛り込まれた」
自動車メーカーは、多くの労働者を雇用していることで「大目」にみられているが、買掛債務の長期化が非難の的になっている。
(5)「3月末には中国の独占禁止政策を担う国家市場監督管理総局が「反不正当競争防止法」の実施をさらに徹底すると通知した。内巻だけでなく、優越的地位の乱用による支払期限問題も摘発の対象になる可能性がある。車が売れば売れるほど利益が減っていく。中国自動車首位のBYDの25年12月期は新車販売が8%増の460万台だったにもかかわらず、純利益は19%減の326億元だった。25年の中国工業企業利益でみても、自動車の利益はほぼ横ばいだった。過当競争は確実に中国自動車メーカーの収益力をむしばんでいる」
自動車メーカーは、値下げ競争で狂奔しており、その分をサプライヤーへしわ寄せしているのだ。この1~2月の自動車メーカーの営業利益率は2.9%である。サプライヤーへこれだけ迷惑を掛けた上での低収益率である。補助金削減で苦境に立たされているのだ。


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