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NATO本部(ブリュッセル)に駐在する約30カ国大使が、4月中旬に日本を訪問する方向で調整中である。一度に訪れる人数としては異例の規模だ。参加しないのは議会選を控えるハンガリーのみ(=ほぼ全加盟国)である。日本との連携強化、特にインド太平洋との関係深化が目的とされる。背景には、米欧の足並みの乱れと、日本の役割への期待の高まりがある。また、NATO側は「日本がどうやって米国と良好な関係を維持しているのか知りたい」と語っている。

 

 『テレビ朝日』(4月10日付)は、「約30カ国のNATO大使が4月中旬訪日へ 一度に訪れる人数として異例の規模」と題する記事を掲載した。

 

(1)「NATO(北大西洋条約機構)に加盟する約30カ国の大使が、4月中旬に日本を訪れる方向で調整していることがわかりました。異例の規模での訪問です。政府関係者によりますと、日本を訪れる方向で調整しているのはベルギーの首都ブリュッセルに有るNATO本部に駐在する約30カ国の大使です。加盟国のほとんどが訪問団に参加しています。米国のトランプ大統領がイランでの軍事作戦にNATOが非協力的だとして不満を強め、脱退も示唆するなど関係が悪化しており、政府関係者は「日本がどのように良好な日米関係を築いているのかもテーマになるだろう」と話しています」

 

NATO大使が、集団で日本を訪問することは日本にとって極めて重大な外交イベントである。今年6月、フランスで開催されるG7サミットではフランスが当初、習近平氏の招待を予定していたものの取り止めた裏に、日本の意向が働いていたとされる。こうして、日本の外交姿勢がG7に反映されるようになった。この裏には、日本の技術開発による地位向上という見えない影が働いているであろう。NATOは、こういう日本の実態を認識して、NATOとインド太平洋との結びつき強化を目指すものとみられる。要約すれば、次のように言える。

 

1)NATOが、インド太平洋を第二の主戦場と認識していることである。

NATOは、「ロシア(欧州)+中国(アジア)」という二正面構造で捉えており、日本はそのアジア側の要という認識である。2022年以降、NATOと日本の協力は急速に深化してきた。今回の訪問は、その延長線上にある。

 

2)米欧の足並みが乱れ、日本が「調整役」として浮上していること。

トランプ大統領が、NATOのイラン対応に不満を表明し、同盟内に緊張が走っている。欧州側は、米国の不満を抑えたいだけに、米国と最も安定した関係を持つ日本に注目が集まっている。NATO大使が日本に来る理由の一つは、 「日本はどうやって米国と関係を維持しているのか」を知るためだ。

 

3)日本がNATOの「事実上の準加盟国」に近づいていることだ。

日本は2025年、NATOへの独立代表部を開設して、専任大使も任命した。これまで、事務総長・副事務総長の来日が続くいている。今回の大使団訪問は、「日本をNATOの外側に置かない」という意思表示に近いものであろう。

 

4)中国への「静かな包囲網」である。

NATO大使団が日本に来る目的の一つは、中国の軍事拡張への対抗策を日本と共有することである。NATOは、公式に「対中包囲網」と言わないが、実態としては日本との協力を進めている。情報共有や兵器規格の互換性、共同訓練、防衛産業協力が進んでいる。

 

NATO大使30人の訪日は、日本が「欧州とアジアをつなぐ安全保障のハブ」になりつつある証拠であろう。欧州では,ロシア問題、アジアは中国問題、米国は、同盟の再構築というそれぞれの課題を抱えている。NATOは、こうした諸問題の解決に当たって、日本をその中心に位置づけている。NATOは今、「日本なしではインド太平洋戦略が成立しない」と認識し始めていることは間違いない。

 

NATOが、異例な形で30ヶ国の大使が訪日するのは、日本の技術開発がキラ星のごとく進んでいることへの「畏敬」もあるだろう。むろん、そのような言辞を発するはずはない。だが日本は、産業革命以降の技術革新「第6波」の主要技術の全てを握っていることによって、今後50年間の世界における「技術覇権」を確実にしている。NATOが、この日本と縁を深くしようというのは至極、当然であろう。それが、世界の安全保障において重要な役割を果すからだ。

 

中国はこの動きを極めて深刻に受け止めているであろう。その理由は3つある。

1)「NATOがアジアに来る」こと自体が脅威である。中国の戦略思想では、欧州は遠い、アジアは近いという前提があった。しかし今、NATO大使30人が来日する。NATO代表部が東京に常設される。日欧の軍事演習が増加しているなど、気懸かりなことであろう。

 

2)日本が「欧米の安全保障の中心」になることへの恐怖である。

中国は、これまで日本を「米国の属国」と広言してきたが今回、欧州が日本に学びに来るという変化である。日本は、欧米の橋渡し役になって、技術・外交で主導権を握ることが現実化してきた。中国は、「日本が国際秩序の中心に戻りつつある」として警戒を強めるであろう。

 

3)台湾問題での包囲網が、強まることである。NATOは、公式に台湾問題に言及していないが、実態としては台湾海峡の安定が欧州の利益になること。日本は、台湾有事の最前線にあることから、NATOが日本を通じて台湾情勢を把握しようとしていること。中国は、こうして、「台湾問題が国際化する」ことを最も恐れているのだ。

 

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