テイカカズラ
   

米国・イラン戦争の停戦交渉は今後、どうなるか。世界が固唾を飲んで見守っている。米国はバンス副大統領が、イランはガリバフ国会議長が双方の交渉責任者となる。米国のバンス氏は、イラン側の要望結果とされている。次期米国大統領選で有力共和党候補とされているだけに、何としても交渉をまとめあげねばという圧力もかかっている。

 

一方、イランのガリバフ氏は、革命防衛隊出身の強硬派とされている。交渉でバンス氏との貴重な「縁」を大事にしておかなければならない面がある。仮に、バンス氏が次期米国大統領になれば、イランとのパイプを生かして米国・イランの「外交的緩和期」が来るかも知れない。こういう思惑を秘めて、両国の交渉が始まる。

 

『日本経済新聞 電子版』(4月11日付)は、「『イラン核開発、資源不足でも意欲高い』 米戦略国際問題研究所(CSIS)のダニエル・バイマン氏」と題する記事を掲載した。

 

米、イラン両国の隔たりは大きく、正式な交渉による合意は実現しない可能性もある。とりわけイランがホルムズ海峡における石油タンカーへの通航料徴収にこだわれば、散発的で限定的な攻撃が続く可能性は否定できない。ただ双方ともに戦争を再開しないことに強い意欲を示している。イランは甚大な打撃を受け、国家の指導者層は混乱状態にある。米国も経済的損失を被っており、湾岸諸国への打撃はさらに深刻だ。

 

(1)「米国は、同盟国への事前の協議や調整もなく攻撃を開始しながら、軍事行動に参加しなかった国を公然と批判した。同盟国の国民・政府の双方から米国に対する信頼が著しく損なわれているのが現状だ。トランプ米政権は、イランの軍事力やミサイル戦力に与えた打撃を「米国の勝利」の証拠として強調している。ただ、対イラン軍事行動は当初から米国民に不評で、戦闘が長引くにつれてさらに支持を失っていった。ガソリン価格の高騰と政権の主張の一貫性の欠如が重なり、国内の世論を悪化させた」

 

米国は、11月の中間選挙を控えている。これ以上の物価上昇を抑制しなければならない立場である。となると、戦乱拡大には歯止めを掛けざるを得なくなる。

 

(2)「一方で、イランは経済・軍事の両面で国力は著しく低下しているものの、米国とイスラエルを相手に持ちこたえたとして「勝利した」との認識を持っている。イランの核開発計画は2025年の攻撃で被った痛手に重ねて、今回の攻撃でさらなる打撃を受けた。経済は機能不全に陥っており、核開発への大規模な資源投入は困難な状況にある」

 

イラン経済は、機能不全に陥っている。この結果、イランは復興財源として海峡管理権を握ろうとしている。これに対して、米国が絶対に譲れないのは、イランに海峡管理権を握られることだ。自由航行は、維持しなければならない。しかし、イランの面子を立てるためには、「イラン軍との調整」という曖昧な文言を残すほか、「安全確保のための協力」という表現によって、米国主導の掃海・護衛を行うことを主張するのでなかろうか。つまり、海峡はフリーだが、イランは「名目上の役割」を得るという痛み分けが考えられる。

 

トランプ米大統領は11日、米軍がホルムズ海峡の掃海作業を開始したとSNSで書き込んだ。イランの機雷敷設艦が、全て沈没した結果としている。『ロイター』(11日付)が報じた。

 

(3)「同時に、イランが核兵器開発を目指す意欲はかつてなく高まっている。指導者層は核兵器こそが自国を守る唯一の手段と判断し得る状況にあるためだ。不確実性は依然として高い。イランではイスラム革命防衛隊とつながりがある強硬派が権力基盤を固めつつあるもようだ」

 

イランのガリバフ国会議長は、革命防衛隊出身である。それだけに、核開発意欲は強い。米国がイランと戦争に入る直前、両国代表が核で合意していた事項は、次のようなものである。

 

イランが戦争前に提示した案とは、60%濃縮を停止して20%以下へ引き下げる。一部のIAEA査察を受け入れ、遠心分離機の増設を凍結するというものだった。これは、核兵器までの距離を「遠く」するが、「能力は残す」という案であった。イランの国内向け説明余地を残した形だ。米国はこれを受け入れ可能とし、イランも「核を放棄していない」と国内向けに言える「曖昧」路線とした。今回の停戦交渉では、この案が再びテーブルに乗ることであろう。

 

米国は、核問題ではこの案を受入れて監視体制を強化する一方で、海峡問題でイランの実質的介入を阻止する形にするのだろうか。米国・イランの双方が「勝利宣言」するには、次のような形が想定される。

 

1)イランの勝利宣言

米国副大統領を交渉の場へ引き出した。海峡で「調整権」を得た。核能力は残った。経済制裁が一部緩和された、などを高らかに宣言するのであろうか。

 

2)米国の勝利宣言

海峡はフリー通航になった。通航料徴収を阻止した。核兵器開発は遠のいた。中東の緊張を抑えることができた、などであろう。

 

ここで、交渉が決裂した場合はどうなるか。イランの親密国である中国の原油輸入が困難になって最大の被害を受けるほか、当のイラン経済が破綻することだ。結局、イランは「妥協するしかない」であろう。その理由は3つある

 

1)経済が限界(制裁+海峡封鎖)であることだ。イラン経済の疲弊の極にある。

2)軍事的にこれ以上の消耗は不可能な状態だ。革命防衛隊も大きな損害を受けている。

3)国内の不満が再燃しつつある。これ以上の長期戦は、政権の存続に関わる。

 

結局、イランは面子を保ちながら「実質的に後退」する以外に道がなくなっている。停戦交渉では、紆余曲折があるとしても両国共に妥結しなければならない局面にあるのだ。