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米国とイランは11日、パキスタンで長時間の協議を行ったが、戦争終結に向けた合意に至らなかった。バンス米副大統領は12日朝、イランが核兵器を追求しないとの確約を示さなかったため、交渉団は合意を得ずに帰国すると記者団に語った。イラン外務省の報道官は、1回の交渉で相違が解消されないのは普通だとし、追加協議の余地を残す姿勢を示唆した。米国は「物別れ」を強調し、イランは「継続」を主張している。仲介役のパキスタンも「継続」である。米国の物別れ発言は、交渉術の一環とみておくべきだ。

 

イランにとっては、バンス副大統領が出席していることは「願ってもない」チャンスである。これまで、米国との交渉パイプのなかったイランにとって、絶対に手放せない貴重なルートである。イランが、この機会を外したならば二度とめぐり来ないだけに、辛抱強く交渉を続けるであろう。数千人の死者を出し、世界的なエネルギー供給を混乱させている6週間の戦争が、何らの解決策も見いだせないとなれば、米国とイランの双方に「深い傷」を残すだけとなる。

 

『ブルームバーグ』(4月12日付)は、「米国とイラン、戦争終結に向けた合意に至らず-戦争の行方に不透明性」と題する記事を掲載した。

 

ホルムズ海峡は依然として主要な争点の一つだ。2月末に米国とイスラエルが戦争を仕掛けて以来、イランは世界の石油および液化天然ガス(LNG)供給の2割が通過していたホルムズ海峡の往来を事実上停止させ、いまやその支配を主張している。

 

(1)「バンス氏はイスラマバード出発に際し、「合意の不成立は米国にとってよりも、イランにとってはるかに悪い知らせだ」と主張。「われわれは極めてシンプルな提案を置いていく。これが米国の最終的かつ最善の提案だ。イランがこれを受け入れるかどうか、様子を見ることになる」と、バンス氏は続けた。イラン外務省のバガエイ報道官は、双方が様々な問題について理解に達したものの、「23の重要な点」でなお見解の相違が残っていると述べた。「当然、最初から1回の会合で合意に達すると期待すべきでなかった」と同報道官は会談後に国営テレビで語り、「外交に終わりはなく」、イランは「いかなる状況下でも国益を追求し続ける」と付け加えた。

 

米国は、11月の中間選挙を控えている。いつまでも戦争を長引かせられない事情がある。となれば、今回の「物別れ発言」は、駆け引きと読むべきであろう。「米国は決裂を宣言し、イランは継続を強調する」という非対称メッセージは、交渉が完全に終わったことを意味せず、次の局面への布石とみられる

 

1)米国の「決裂」宣言は、圧力カードの再提示である。これは、核問題での「明確なコミットメント」を引き出すための圧力強化であろう。イランが、「譲歩しなければイランが損をする」という構図を国内外に示すことだ。トランプ政権は、「すでに勝利した」と主張し、交渉の主導権を維持する。つまり、米国の「決裂」は交渉を終わらせるためでなく、交渉を有利に進めるための戦術的メッセージであろう

 

2)イランの「継続」宣言は、時間稼ぎと体面維持である。イラン外務省は、「進展はあったが、23の重要事項で隔たりがあった」、「外交は終わらない」と述べている。イランの本音は、即時決裂が国内的に「敗北」となるため避けたい。交渉継続を示すことで、制裁緩和や軍事圧力の低減を期待する。2週間の停戦期間を最大限利用し、軍事・外交の再調整を行うのであろう。イランは「継続」を掲げることで、体面を保ちながら次のラウンドに備える構えと読める。

 

3)次の局面では「再交渉」に向けた水面下調整が予測される。パキスタンは、引き続き仲介に意欲的である。双方とも「完全決裂は望まない」こと。2週間の停戦期間中に、非公開チャネルで妥協点を探るであろう。

 

4)イランが「部分的譲歩」を提示すれば、米国が受け入れる可能性もある。核問題での「曖昧な保証」、ホルムズ海峡の管理を「協調的」と表現する妥協案、米国は「勝利宣言」を維持しつつ、実質的な合意に進むことだ。

 

イランにとっては、仮に不満足な結果になったとしても、米国との直接交渉の機会を生かして今後の成果に結び付ける機会にするであろう。ロシアや中国を相手にした「反米グループ」に止まっても将来の展望が開けないことを熟知しているからだ。言葉は悪いが、イランは米国へ「食らいついて離さない」ほどの執念を持っているとみられる。米国を敵にした結果、イランは経済的にどれだけ辛酸をなめさせられてきたか。経済的に疲弊の極にある現在、今回の戦争を機会に脱出の方向を探っているであろう。

 

(2)「今回の協議を仲介したパキスタンは、「建設的」な話し合いだったとし、双方に停戦維持を呼びかけた上で、今後数日間も仲介を続けると表明した。イスラエルの安全保障内閣のメンバー、ゼエブ・エルキン議員は12日、停戦期間はまだ終了していないとし、「さらなる協議を生み出す試みが行われる可能性がある」と述べた」

 

パキスタンが、引き続き仲介の意欲をみせている。これは、交渉に出席した結果、「合意可能性」を察知したのだろう。

 

(3)「バンス氏は「核兵器を追求せず、迅速な開発を可能にする手段も求めないという明確な確約が必要だ。それが米大統領の中核目標であり、われわれは交渉を通じてその達成を目指してきた」と説明した。米シンクタンク、大西洋評議会で南アジアを専門とする上級フェロー、マイケル・クーゲルマン氏は、交渉への政権幹部の参加は和平合意を見いだそうとする米国の真剣さの表れだと指摘、解決に向け措置が講じられる可能性が高いとの見解を示した。「米国は国内政治的な理由から、戦争から撤退できるような合意を望んでいる」とクーゲルマン氏はXに投稿。「バンス氏はあのように発言したが、これで終わりではないだろう。さらなる交渉はあり得る」としつつ、それがパキスタンなのか他の場所になるのかは不明だと記した」

 

ここで、新しいニュースが入ってきた。米国が、ホルムズ海峡の封鎖宣言をしたこだ。米国が、交渉主導権を握る目的である。これによって、「交渉の主導権は米国にある」、「イランは米国の条件を無視できない」というメッセージを世界に示すためだ。交渉の力関係は、一気に米国側へ傾ける狙いであろう。米国は、交渉を妥結させる強い意志を示した。