中国の習近平国家主席は10日、台湾最大野党、国民党の鄭麗文主席(党首)と北京で会談した。鄭氏は、国民党トップとして約9年半ぶりに訪中した。中国が、台湾に軍事的圧力を強める中で、緊張緩和を目的とした平和ミッションだとした。習氏は、台湾海峡の両岸の人々はともに中国人であり、両岸関係の未来は中国人の手にあると述べた。
注目すべきは、中国が台湾に対して「10項目の経済交流」を実施するとしたことだ。これは、中国伝統の「朝貢貿易」でもある。朝貢貿易とは、周辺国が中国皇帝に貢ぎ物(朝貢)をささげ、その見返りとして皇帝から多くの返礼品(回賜)や交易の機会を与えられる、政治と貿易が一体となった不平等な国際貿易制度だ。中国が上位、周辺国が臣下という関係を前提に行われた。今回の鄭氏による訪中は、現代版「朝貢貿易」であろう。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月16日付)は、「14秒の握手が意味するもの」と題する記事を掲載した。
先週、習近平国家主席は台湾人の魂を巡ってあからさまなパフォーマンスを行った。これは、中国が太平洋地域を支配するためには戦争を必要としないことを示すためのものだった。必要なのは静かな部屋と長い握手、そして目をそらしている米国だけだ。
(1)「ホワイトハウスが、中東への対応に没頭している間、人民大会堂の東ホールは習氏と鄭麗文氏の14秒間にわたる握手の舞台となった。鄭氏は、親中の台湾最大野党・国民党の主席(党首)だ。中国の軍艦の影が台湾海峡でちらつく中でも、一発の銃弾も発射せずに服従に向けた前進を示すことを意図していた。国民党の指導者が前回習氏と向かい合ったのは2015年のことで、その際の雰囲気は慎重で対等と呼べるものだった。シンガポールのホテルという中立的な場所で開催された対等な者同士の会談だった。当時、習氏と国民党の馬英九氏は、表面的にも対等であることを示すために公式の肩書きではなく、お互い単純に「氏」を敬称として使った」
中国は、米国大統領トランプ氏の訪中前に、台湾と友好を深めているという「実績づくり」を行った。だから、米国は台湾問題へ介入しないでくれというメッセージだ。
(2)「10年後、力関係はその光景と同じくらい変化した。今回の鄭氏の訪中は、まるで帝国の中心への巡礼のようだった。中立的なホテルも対等を演出する外交儀礼もなかった。代わりに、鄭氏は人民大会堂の高い金色の天井の下で迎えられた。2015年には、台湾が相対的な強さ、あるいは少なくとも自律の立場から交渉しているという感覚があった。今回、中国政府がちらつかせた「10項目の贈り物」(優遇策)――観光の再開と貿易禁止の緩和の約束――は、相互合意というよりも、家賃の猶予を提供する家主のように感じられた」
中国が、台湾野党へ10項目の贈物(朝貢貿易)をしても、現実には政府間レベルの話である。「言っただけ」のことに過ぎないのだ。
(3)「元台湾立法委員で現在はハドソン研究所上級研究員のジェイソン・シュー氏が指摘したように、これは台湾を巡る見方を変更しようとする習氏の意図的な試みだ。シュー氏によると、鄭氏を招くことで、中国は米国に対し、台湾は「(中国による)強制に抵抗する統一された民主主義」ではなく、中国本土と話す意思のある代替の声を持つ「分裂した政体」であるとシグナルを送っているのだ」
10項目の贈物は、トランプ氏の目を惑わす狙いかもしれない。中国は、台湾へこれほど融和的であるという宣伝だ。
(4)「分裂した台湾を演出しようとするこの動きは、はるかに大きな交渉の最初の一手だ。トランプ氏の訪中が目前に迫る中、習氏は両岸「対話」のイメージを利用して、米国の台湾政策再編成への基礎を築き始めようとしている。「それは、中国の軍事的圧力が続いている間でさえ、中国側の条件の下での『平和的な』関与のための政治的空間があると示すことで、中国側の交渉姿勢を強化する可能性がある」とシュー氏は語った。実際、習氏と鄭氏が話し合いのために座っている間にも、台湾の国防部は台湾海峡の中間線を越える16機の中国軍機を追跡していた。これは習氏にとって、オリーブの枝(和解)と銃剣は常にセットであることを思い出させるものだった」
中国が、台湾へ贈った平和メッセージには、常に軍事威圧を与えている「合間」に行われたものだ。台湾への「降伏勧告」であろう。
(5)「ここでの問題は、米国政府が鄭氏を台湾の公式の声と間違えるということではなく、この訪問が米国で高まる不安を深めているということだ。国民党主導の台湾立法院が400億ドルの追加防衛支出を巡る審議を停滞させている最中に、その指導者が人民大会堂で習氏と握手する光景は、無視できない複雑なメッセージを送っている。それは、台湾の決意が自らの内部から静かに試されていることを示唆している。さらに、シュー氏は、この訪問は現在国民党自体を引き裂いている危機も露呈させたと指摘した。同党は、生き残るためには米国政府からの信頼が必要であると考えている親米派と、中国と話すことが党としての比較優位であると信じている親中派の間で分かれている」
鄭氏が、孫文墓地前で行った演説に対して、台湾の5割が反発した。支持は3割であった。国民党は一枚岩でないのだ。親米派と親中派に別れている。香港との「一国二制度」を破棄した中国が、台湾へ何を約束しようとも額面通りに受け取られまい。身から出たサビである。


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