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EV(電気自動車)へ全面シフトしたドイツ自動車業界は、EV停滞にともない工場閉鎖や労働者解雇という大手術を行っている。それでも埋め切れない設備と従業員の遊休化を避けるべく、兵器生産へシフトする。苦肉の策である。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(4月21日付)は、「兵器工場に生まれ変わるドイツ、自動車低迷で」と題する記事を掲載した。

 

輸出モデルの崩壊に直面するドイツは、自動車の生産から大砲の生産へと軸足を移し、製造業の衰退を防衛産業の拡大へと転換しようとしている。 数十年にわたり欧州の製造業をけん引してきたドイツは、中国との競争激化と需要低迷に苦しみ、第2次世界大戦後で最長の停滞期に突入。その対策として打ち出した方針は、産業基盤を西側諸国の兵器庫として作り直すことだ。

 

(1)「従来の構造が崩壊したことは、複数の指標が示している。政府の統計によると、かつて主力産業だった自動車部門を含め、製造業では毎月約1万5000人の雇用が失われている。自動車大手メルセデス・ベンツグループは2025年の利益が49%減少したと発表。世界第2位の同業フォルクスワーゲンも、同年に利益が44%落ち込んだため、2030年までにドイツ国内で5万人の雇用を削減する計画を明らかにしている。ポルシェなどの主力ブランドも営業利益が前年比で98%減少する壊滅的な打撃を受けた。しかも24年はすでに近代史上で最悪の年の一つとなっていた」

 

ベンツもVWも業績は、惨憺たるものだ。25年は、ともに4割もの大幅な減益である。緊急事態だ。この穴を埋めるべく兵器生産へシフトする。

 

(2)「ドイツ経済のけん引役は、経済生産の約70%を占めるサービス部門だが、製造業の割合も依然として20%ある。またサービス部門の最大20%が自動車メーカーなどの工業企業と結びついている。米国による安全の保証が不透明さを増し、欧州が再軍備を急ぐ中、ドイツ政府は欧州大陸の防衛産業の基盤となるべく自らを位置づけている。自動車・産業用部品大手シェフラー・グループのクラウス・ローゼンフェルド最高経営責任者(CEO)は、「自動車産業は世界的な景気後退、地政学的リスク、そして中国との競争激化によって苦境に立たされている」と説明。同社はパワートレインからベアリングまであらゆるものを製造する世界有数の自動車部品サプライヤーで、今は防衛部門にも進出しつつある」

 

自動車部品メーカーも武器生産へ手を広げる。トヨタを除いた日本の自動車企業は、ドイツほどの苦境には立っていない。ただ、日産自動車にも「武器生産」という道もあるのだろうが。

 

(3)「ドイツと欧州連合(EU)における最近の規制変更により、防衛企業の資本市場へのアクセスは改善している。またロシアの対外膨張主義への懸念と、ますます敵対的になる国際環境を背景に、大規模な政府契約や公的融資制度で約1兆ユーロ(約187兆円)の防衛資金が投じられる可能性がある。ローゼンフェルド氏は、「ドイツ経済の大きな流れとして、以前よりもはるかに多く『長年にわたって行われてこなかったこと、すなわち自国を守る能力を取り戻すために、自分たちはどう貢献できるか』と人々が問いかけるようになっている。それがまさに当社がやっていることだ」と語った」

 

ドイツは、ロシア・リスクに立ち向かうべく武器生産が喫緊の課題になった。自動車不振の穴を兵器生産が埋める形だ。

 

(4)「ローゼンフェルド氏が率いるシェフラーは現在、ドローン用エンジン、装甲車両の車載システム、軍用航空機の部品を製造している。同氏は売上高(240億ユーロ)の10%を、昨年設立した防衛部門から生み出すことを目標に掲げている。その生産の多くは、米国の8カ所を含む世界100カ所以上の工場に勤務する10万人超の従業員が担っている。同氏は「ドイツでは不満の声が多いが、常に状況は最悪だと嘆くだけでは何も変わらない。袖をまくり上げなければならない」とした」

 

生きるためには、なりふり構わずという姿勢が滲み出ている。ドイツも苦しんでいるのだ。

 

(5)「フォルクスワーゲンはイスラエル企業と交渉中で、2027年までにイスラエルの対空防衛システム「アイアンドーム」向け部品の生産を開始することを模索。また多くの企業は、ウクライナ向けの兵器・弾薬を大量生産するために三つ目のシフトを追加した。長らく米国製品のみに依存していたパトリオット迎撃ミサイルも、急増する需要に応えるべく、まもなくドイツで製造される予定となっている」

 

VWは、イランのアイアンドームの部品製造を始める。このほか、ウクライナ向けの兵器・弾薬を大量生産するために準備に入っている。米国のパトリオット迎撃ミサイルも生産される予定だ。

 

 

(6)「政府統計によると、欧州の防衛技術分野に対するベンチャーキャピタル(VC)投資の約90%は、ドイツ企業に流入している。ドイツのカテリーナ・ライヒェ経済相は、「欧州は自らを守れなければならない。それはまた、依拠できる強固な安全保障・防衛産業を構築することを意味する」と述べた。ライヒェ氏は防衛相を含む閣僚たちと共に、経営難の製造企業を防衛請負業者へと転換させることを推進。同氏は「他の産業の既存生産拠点を転用することで、国内生産能力の拡大に向けたハードルを下げることができる」としている」

 

欧州の防衛技術分野に対するベンチャーキャピタル(VC)投資は、約90%がドイツ企業に流入している。やはり、精密工業に強いドイツの特色が出ている。