テイカカズラ

   

(4)「実際にこの戦争において米国は、一貫した戦略目標や精緻な出口戦略が示せず、混乱が続いている。総司令官であるトランプ大統領のメッセージは、彼の精神の健康が疑われるほど混乱している。彼の誤った判断により、米国はイラン打倒を狙うイスラエルの「傭兵(ようへい)」になっているとさえ分析されている」

 

確かに、トランプ氏の発言は揺れている。大仰な発言内容である。ただ米国が、訪中前にベネズエラとイランという中国の友好国を攻撃した意図を考えたことがあるだろうか。これは米国が、中国に絶対譲歩しないという示唆を与えているとみるべきだ。現に、中国は米国批判を封印している。トランプ訪中によって、中国は内外に中国の位置づけをアッピールしたいのであろう。中国が、ここまで押されていることに気付くべきだ。

 

(5)「中国は今回の事態を、短期的な世論や特定の利益団体のロビー活動に過度に影響される米国式民主主義システムの根深い限界が改めて露呈したものとみている。50年、100年単位の長期計画を立てることに慣れている中国は、2年周期の選挙と否定的な世論が大統領の決断を制約する米国の構造を、攻略するのにちょうどよい「弱点」と認識するだろう」

 

このパラグラフの議論は、左派系論者が好んで使う台詞である。米国には選挙がある。中国はないから50年、100年単位の長期計画を立てられると。この論法は、独裁政権に固有の「制度疲労」という視点を完全に忘れている。民主主義には選挙があるから政策を修正できるのだ。独裁政権は、政策修正の機会がないので、旧ソ連崩壊という行き詰まりで「自然崩壊」が待っていた。米国の強みは、プラグマティズム(実証主義)という哲学に立脚していることだ。現実と理想が、絶えず対比されて現実を修正する思考様式である。独裁主義=権威主義とは対極の位置にある哲学である。

 

(6)「中国が最も関心を寄せているのは、何よりも今回の戦争による米国の国力の消耗とグローバルリーダーシップの衰退だ。米国は今回の戦争で強大なハードウェアを示したが、それをきちんと制御するソフトウェアが示せていない。かつての米国とははっきりと異なる。韓国、欧州、日本などの同盟国に対する無理な参戦要求や戦略資産の一方的な動員により、米国主導の安全保障ブロックに亀裂が生じていることも、敏感に注視している。米国が中東で右往左往している間に、中国は自らが提示する「代替的秩序」の安定性を強調しつつ、グローバルサウスはもちろん欧州や東アジアへも手を伸ばしている」

 

今回の戦争は、武器弾薬の消耗だけで済んでいるので、ドロ沼状態にある訳でない。戦争しなければ、それに越したことはなかったが、イランの核開発阻止という大義になると、単純に「良い悪い」を言えなくなるところが悩ましい面だ。NATO(北大西洋条約機構)は、4月中旬に30ヶ国の大使を訪日させて日本との協力関係を模索している。中国へ接近しているのでなく「離脱」意思を固めている。ロシアとの一体化を警戒しているのだ。

 

(7)「米国についての中国の判断の変化は、朝鮮半島にも変化をもたらしうる。米国の戦略資産が中東から動けなくなったり、同盟に緩みが生じたりすることで北東アジア内の抑止力が弱まれば、中国は西海や台湾海峡、南シナ海などで軍事行動のレベルをいっそう高めるだろう。韓国に対して韓米日協力体制からの離脱を強要したり、経済的依存度を武器として政治的譲歩を迫ってきたりする可能性もある。韓米同盟が、もはや韓国の安全を守る「一つの指輪」ではないことが確認された今、平和と国益を守り抜くための冷徹かつ立体的な生存戦略を策定しなければならない」

 

日本が、武器弾薬の輸出解禁したことで、西側諸国の「兵站部門」を担うことが明らかになった。世界一の電子工業・化学工業・精密機械工業を擁する日本が、今後の自由世界を支える。日本の新た世界平和への貢献である。