テイカカズラ
   


ドイツのメルツ首相とトランプ米大統領の関係が、ぎくしゃくしている。メルツ氏が、イラン情勢をめぐり米国を批判したことで、トランプ氏の反感を買い、在独米軍の削減問題まで発展している。これに驚いたのが、ルッテNATO事務総長である。ルッテ氏は54日、アルメニアで開催された欧州政治共同体(EPC)首脳会議において、「欧州諸国はトランプ米大統領が伝えたメッセージを理解した」と述べた。米軍による自国の軍事基地使用に関する協定が、確実に履行するための対応を現在進めていると明らかにした。

 

日本経済新聞』(5月6日付)は、「独、対米外交つまずく イラン情勢巡りトランプ氏批判」と題する記事を掲載した。

 

メルツ氏は6日で、政権発足から1年を迎えるなか、経済政策への不信などから支持率は4月時点で15%と過去最低を記録した。政権運営は視界不良だ。

 

(1)「米政府は1日、ドイツに駐留する5000人の米軍部隊を撤収する方針を明らかにした。トランプ氏は一層の削減に意欲を示す。メルツ氏が427日、2月末から始まった米軍のイランへの軍事行動について「米国には明らかに戦略がない」などと述べたことがきっかけだった。トランプ氏は4月29日、自身のSNSで在独米軍の削減を検討する方針を表明。応酬が続くなか、メルツ氏は53日に自身の発言と米軍削減は「何の関連性もない」と独公共放送ARDで述べるなど火消しに走った」

 

メルツ首相に逆風が吹いている。トランプ氏との応酬が、駐独米軍兵士の5000人の削減へと発展している。NATO事務総長ルッテ氏は、「米国は確かに失望を示している。しかし、欧州はその声に耳を傾けており、現在すべての二国間駐留協定を確実に履行するための取り組みを進めている」と述べるなど沈静化に務めている。

 

(2)「欧州連合(EU)と米国の関係が冷え込む中、トランプ氏との関係を比較的良好に保ってきたのはメルツ政権の数少ない成果だった。ARDの4月の世論調査では、メルツ政権に「満足している」と回答した人の割合が15%と、3月から10ポイント低下した。40%だった政権発足直後の25年6月から下落基調だ。強みだった対米外交でつまずいたのは支持率低迷に苦しむメルツ政権にとって痛手といえる」

 

4月の世論調査では、メルツ政権に「満足している」と回答割合が15%と、3月から10ポイント低下した。急落である。支持率低下の上に、米国と対立となると苦しい立場である。

 

(3)「足元では、米国とイスラエルによるイラン攻撃でエネルギー価格が高騰している。これが政権批判につながりつつある。4月公表の調査では、経済再生に対する政府の施策を「信頼している」という回答は26%と「信頼していない」の70%を大幅に下回った。自動車など製造業を基幹産業として抱えるドイツにとって、エネルギー価格の上昇は原材料費や物流費に跳ね返り、製品競争力に直結する。関税などの通商政策や価格競争にも翻弄されやすい。日本国際問題研究所の高島亜紗子主任研究員は「産業構造を転換できていないことが最大のボトルネックだ」と指摘する」

 

支持率低下の主因は、イラン攻撃でエネルギー価格が高騰だ。メルツ氏は、支持率低下の主因が米国のイラン攻撃にある以上、つい米国へ愚痴を言いたくなったのであろう。

 

(4)「ドイツは、最大の貿易相手が中国だ。メルツ氏は2月にフォルクスワーゲン(VW)など企業代表団を引き連れて訪中。習近平国家主席と会談した。中国の覇権主義的な動きには警戒しつつも経済では中国市場を意識せざるを得ない。だが、ドイツ企業の競争力は失われつつある。ドイツ連邦統計庁によると、25年の中国への輸出額は812億ユーロ(約15兆円)で3年連続減少した。中国の現地企業が電気自動車(EV)や産業用ロボットで力を高め、ドイツ製品を購入しなくなっているためだ」

 

ドイツ主力企業のVWは、EV(電気自動車)の販売不振も手伝い苦境下にある。VWは、これまで中国市場で稼いできたが、今や中国EVに追われる立場と逆転している。

 

(5)「失業者数は、4月の雇用統計で300万人を超えた。VWグループは、30年までにドイツ国内で5万人の人員を削減する。ドイツ政府は4月22日、春の経済見通しで26年の実質成長率を0.%1月時点の1.%から下方修正した。メルツ政権への批判票を取り込み、着実に勢力を伸ばしているのがポピュリズムの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」だ。独テレビ局の4月28日の政党別支持率調査ではAfDが27%とトップに立ち、政権与党でメルツ氏が党首を務めるキリスト教民主同盟(CDU)と姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU)の連合(2位)に初めて5ポイントの差を付けた」

 

4月の失業率者は、300万人を超えた。今後も増えそうな見通しである。自動車産業の不信が足を引っ張っている。極右政党AfDが、支持率27%と首位を占めた。与党は、5ポイントの差を付けられ2位に甘んじている。

 

(6)「AfDは、3月に開かれた南部バーデン・ビュルテンベルク州議会選挙でも躍進した。9月には東部ザクセン・アンハルト州などでも選挙を控え、同州ではAfDが第1党となる可能性もある。メルツ政権は、不法移民の取り締まり強化などで保守票を取り込もうとするが、「右派ポピュリストの模倣で対抗するのは効果的ではない。経済政策などを明確に伝えることが重要になる」とオルデンブルク大学の政治学者、フィリップ・ケーカー氏は指摘する」

 

与党の支持率回復には、景気が軌道に乗ることが絶対条件であるものの当面、望み難い状況だ。これからも厳しい政権運営を迫られる。