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8年半ぶりとなるトランプ米大統領の訪中は、戦後国際秩序の中でどんな意味を持つのか。米国は経済問題が焦点であるが、中国は台湾問題で米国の譲歩を狙っている。少しでも言質を引出て、台湾を揺さぶり習氏自らの業績にしたいところだ。ルビオ米国務長官は、すでに「台湾問題は従来と変わらず」と言明している。中国は、会談中の小さな「脱線」も針小棒大に扱うだろう。神経戦の訪中になろう。

 

『ロイター』(5月13日付)は、「首脳会談に向けた米中の思惑 『中国の狙いは台湾だけ』=CIGSの峯村氏」と題する記事を掲載した。

 

米中首脳会談が迫る中、日本や台湾を含む東アジアの当事者の間に様々な期待や懸念が広がっている。キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)上席研究員兼中国研究センター長の峯村健司氏は12日まで、米国や台湾を訪れ政府高官らと意見交換を重ねた。トランプ米大統領の訪中は、戦後国際秩序の中でどんな意味を持つのか。習近平国家主席の思惑とは。日本が取るべき対応を含め、峯村氏の分析を聞いた。

 

(1)「2017年、トランプ氏の初訪中では、中国企業による対米投資や米国製品の大量購入などが盛り込まれた総額約2500億ドル規模の商談がまとめられた。トランプ氏は当時とても喜んだが、中国はあまり合意を履行せず、米国内の対中強硬派の意見などもあり、結局貿易戦争が始まってしまったという経緯がある。今回は同じ轍を踏まないよう、米国は中国との間で貿易委員会を立ち上げ、例えば農作物やボーイングの飛行機などを中国が着実に購入するという仕組みを整えることになる。トランプ氏は今回、現在の対中貿易赤字をいかに減らすかということしか考えていない」

 

米国は、対中貿易黒字の縮小を会談の最大目的にしている。中国は、一時的な約束をしても守らないので、貿易委員会を立ち上げてフォローさせる戦術だ。中国を縛り付けるのだ。

 

(2)「非常に危ないことは、米中間の事前協議で台湾のことについて話し合っていないことだ。むしろ台湾についてはあまり持ち出さないようにしようというのが米側の思惑になっている。一方で、中国にとっては、米国から引き出したいもの、狙いは台湾だけと言っていい。習近平国家主席としては、事務方で事前にすり合わせをしていない中で、会談で直接トランプ氏から台湾について譲歩を引き出そうとしている。これは習氏も1期目から周到に準備してきたシナリオであり、成功させることに相当の自信を持っていると言っていい。要するに、台湾をカネで買うということだ。トランプ氏に対して、米国の農作物や製品をたくさん買うから、その代わりに台湾については譲歩しろと」

 

米中は、台湾問題についての予備交渉をしていない。トランプ氏は、台湾への武器輸出については話し合うかも知れないとしている。ルビオ国務長官は、「従来と変わらず」と言明した。米国は、貿易と台湾は別問題という姿勢である。だから、事前の調整項目にならないのであろう。注目点は、中国が過去にルビオ氏の入国禁止令を出していたことだ。今回は、それを不問せざるを得ない「弱点」を露呈した。

 

(3)「台湾側が最も恐れているのは、トランプ氏があまり考えずに台湾について何らかの発言をし、中国側がそれを使って「米国が譲歩した」というキャンペーンをやることだ。もう一つが、台湾議会で可決された米国からの武器輸入について、実際に武器が来ない状態になること。そうなると、台湾は完全に米国に梯子を外された格好になってしまう」

 

中国は、「針小棒大」に宣伝することに長けている。トランプ氏が、台湾絡みの「失言」を誘い出す戦術を取るかもしれない。ここが、警戒点とされている。中国は、台湾に対してこの程度のことしか仕掛けられないとすれば、台湾の主導権は完全に米国側にある。

 

(4)「中国にはもう一つの思惑がある。それは、今回はあまり結果を急がないということだ。今年は今回の会談を含めて最大4回(今回、習氏の訪米、アジア太平洋経済協力会議、主要20カ国・地域首脳会議)、習氏とトランプ氏が会談する機会がある。その4回でじっくりと妥協を引き出せばいいわけで、今回はとにかくトランプ氏を喜ばせるだけ喜ばせるというのが、中国側の策略でもある。だから、最上級のもてなしをするわけだ」

 

今後、トランプ・習の会談は最大4回開かれる機会がある。中国は、この機会を狙って「失言」を誘い出す戦術かも知れない。ただ、「失言期待」とは中国も落ちぶれたという印象を与えよう。正攻法では、勝てないという状況認識であるからだ。

 

(5)「1971年のキッシンジャー訪中以来、台湾は米中の密約の歴史をたどっている。今回もそれが繰り返される可能性があるし、米中双方が表向き発表していることを信用してはならない。仮に今回の会談で台湾について大きな合意がなかったという発表になったとしても、それを信用すると大変な痛い目に遭うということだ。こうした状況で日本がすべきことは、米国に対し「習氏に騙されず、しっかり日米同盟に回帰するべきだ」と強く伝えることだ。「経済的な利益もイランの説得も中国による一時的な目くらましであり、習氏の狙いは戦後の国際秩序をひっくり返すことにある」と。

 

客観的に言えば、中国は経済的に絶望的状況に置かれている。この中で、「台湾奪取」など妄想というほかない。トランプ氏の「失言待ち」とは、なんとか一矢報いたいということであろう。中国が、追い詰められた状態を示している。