テイカカズラ
   


外貨準備は見かけ倒し

一帯一路が大きな負担

不良債権比率60%へ

中国危機の本質はここ

 

中国が、異常なまでにダンピング輸出している裏で、深刻な「ドル不足」事情を抱えている。貿易黒字の増加が、そのまま外貨準備高増加にならない「疾病」だ。人間に喩えれば、栄養豊富な食事を取っても太れないのは、何らかの疾患を抱えているものとみなされるであろう。

 

中国の25年貿易黒字は、1兆1890億ドルと初めて1兆ドル台に乗った。前年比19.9%増と文字通りの急増である。だが、年末の外貨準備高は3兆3579億ドルで、前年比4.8%増に止まった。貿易黒字で稼いでも外貨準備高増として顕著に貯まらない裏には、前記のような疾患を抱えている結果とみられる。一帯一路関連の不良債権が、重圧になっている。万一の場合、最大限6000億ドルが外貨準備高を直撃する。

 

このほか、台湾侵攻作戦へ踏み切れば、海外からの融資条件で自動的に金融遮断機が下りるシステムになっている。ドルの短期借入金が、返済を迫られて金融破綻へ落込む運命だ。中国の外貨準備高には、短期借入金1兆4000億ドルが含まれている。この8割は、米系金融機関の融資とみられている。無担保融資であるため返済期限は1年である。これまでは借換えの繰返しできた。だが、「戦争行為」という異常事態へ突入すると、中国は1年以内に1兆4000億ドルを返済しなればならず、外貨準備が枯渇する。

 

3兆3500億ドル強の外貨準備と言っても、自由に使える金額は1兆ドル程度とみられている。この金額で1兆4000億ドルを返済できるはずがない。中国は、こうして「戦争禁治産者」になる。つまり、台湾侵攻へ踏み切れば、その段階から外貨繰りが窮迫する。外貨不足で輸入が減れば、国内経済はパニックになる。もはや、戦争どころの話でなくなり、国中が「戦争反対」一色になろう。

 

日本の一般論で言えば、「禁治産者」(2000年の民法改正で成年後見制度)に陥ると、行為能力が制限される。これを国家に敷衍すれば、戦争によって行為能力が制限されるので、中国は欧米金融機関からの融資を受けられなくなるのだ。

 

これまで、中国の台湾侵攻は多くが軍事論で議論されてきた。だが、上述のような国際金融の側面から言えば、「開戦即死論」という全く次元の異なる結論が導かれる。中国は皮肉にも、国際金融上の理由で戦争のできない国になっている。逆説的だが、台湾が独立論を打ちだした場合、中国はすぐに開戦へ踏み切るであろう。これは、国際金融上の契約によって短期融資打切りとなり、中国は返済せねばならず破綻するのだ。なんともあっけない結果に終わるであろう。

 

外貨準備は見かけ倒し

冒頭から、ショッキングな話題になった。中国の外貨準備高が、これほどまでに脆弱構造に陥った理由は、大国としての「見栄」を張りたいという欲望が出発点である。2007年、短期借入金を外貨準備高に組入れると決定したのは、中国特有の「大国病」に始まっている。外貨準備高を膨らませ、発展途上国を畏服させたいというものだった。その後に始まった不動産バブルは、中国の虚栄心をさらに満足させた。

 

この延長において2013年、習近平氏が「一帯一路」(BRI)を発表した。国内の過剰生産物(鉄鋼・セメント・化学製品)の処分という目的もあった。折から始まった不動産バブルによる地方政府の土地売却収入が、この一帯一路を後押して発展途上国への融資を膨らませた。不動産バブルが、国内に膨大な不良債権を生み出したと同じ構図で、一帯一路も不良債権を山積みにした。当初から返済の見込めない国へも貸付けて、インフラ投資を行わせた。これが、「債務の罠」とよばれる悪評の原点である。

 

中国が、貸付けて「債務の罠」とされている国は、スリランカ、ザンビアに続き、パキスタン、ケニア、ラオス、タジキスタンなどが再編候補とされている。いずれも、筆頭債権国は中国である。これら各国が、抱える債務総額と中国の貸出総額をみておきたい(省略)。

 

なぜ、「中国が筆頭債権国」にみえるのか。これには、次のような事情も影響している。

1)二国間債権(政府と政府との融資契約)としては中国が最大 であることだ。ただ、スリランカのように「市場債(ISB)」(発行後に市場で売買される債券)が最大のケースも多い。

 

2)中国債務はインフラ案件に集中し、返済負担が重い こと、これは、 金利が高く、返済期間が短い。詳細は後述。

 

3)透明性が低く、債務の実態が見えにくい こと。「中国債務は不透明」と指摘されている。特に、二国間債権では国会への報告すら禁じるという徹底的な秘密性を約束させる。

 

ここで、中国が「債務の罠」として批判されている「二国間債権の特徴」について説明を加えておきたい。まず、政治的条件が付く(港湾権益・資源権益・外交姿勢など)ことである。これは、一帯一路が何を狙っているかをこれほど明確にしているものはない。港湾権益・資源権益などは、明らかに融資に当たり返済を期待せず、担保を抑えることを狙っている。スリランカでは事実、ハンバントタ港湾の権益確保で99年の租借契約を結ばせた。これがその後、中国の経済的な負担を重くしている。

 

スリランカのハンバントタ港湾は、いわゆる「インドの首飾り」と言われるように、インドを取り囲む基点となっている。パキスタン(グワダル港)→ミャンマー(チャウピュー港)→バングラデシュ(チッタゴン港)だ。これがインドを包囲する形で並んでいる。国境問題で対決するインドを牽制する布陣である。だが、収益的には極めて悪条件下にあり、中国の不良債権を増やす予想外の結末を招いている。(つづく)

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