今回の米中首脳会談でも、レアアース問題は登場しなかった。米国を初めとする西側諸国が軸になって、重要鉱物特恵市場(8月稼働:55ヶ国参加)するので、レアアースの需給逼迫度がかなり緩和されるからだ。こういう事情も知らないで、中国メディアはEU(欧州連合)を中国の意のままに動かせると「慢心」している。
『レコードチャイナ』(5月14日付)は、「レアアース問題でEUに交渉材料ないと見透かし、自信を見せる中国―中国メディア」と題する記事を掲載した。
中国メディア『観察者網』(5月12日付)は、中国によるレアアースの輸出管理強化が供給網の自立を目指す欧州連合(EU)にとって深刻な脅威になっていると報じた。
(1)「記事は、中国商務部が25年10月にレアアース輸出管理の新規定を公表し、米中間の貿易休戦により一時的に見送られたものの、欧州にとってはいつ降り掛かってくるかわからない「ダモクレスの剣」となっていると紹介。25年4月実施の既存規制によってすでに生産ラインが停止の危機に直面する中で、解決策を模索する欧州側の交渉が行き詰まりを見せているとした」
重要鉱物特恵市場は、レアアースを初めとする重要鉱物を無税で輸入するほか、最低価格を設定して、仮に世界の市況が急落しても一定価格を保証する。これまで、小鉱山で自国精錬が不可能であった国でも、日本の化学的精錬法の採用によって無公害精錬が可能になる。こうして、中国へ鉱石(精鉱)を輸出していた国々が、自国で精錬が可能になることで、重要鉱物特恵市場へレアアースを輸出できる道が開かれるのだ。
しかも、これら鉱山国は、米国市場で事業も可能という特典がつくほど優遇される。重要鉱物特恵市場参加国の具体的国名発表は抑えられている。中国の妨害を防ぐためだ。
(2)「交渉に関わる欧州側の担当官が、「中国はトランプ大統領に譲歩させることに成功した。今の中国は貿易戦争で勝つ方法を知っていると確信しており、その自信は交渉の場で明らかだ」と述べたことを紹介した。中国が世界の永久磁石生産の94%、レアアース精錬能力の90%以上、採掘能力の68%を掌握するという圧倒的な支配力を背景として輸出管理の範囲に「域外適用」を追加し、中国産の成分が含まれていれば第三国で生産された製品に対しても制限を課すことを可能にしたと解説」
今回の米中首脳会談で、米国が台湾問題でも中国の要求を聞き流している背景には、レアアース自給への展望が開かれているからだ。中国は、レアアースを武器にした外交が、もはや不可能になった。
(3)「中国が、欧州のサプライチェーンを封じ込める実質的な能力を手にしたことを意味すると評した。その上で、欧州連合安全保障研究所(EUISS)で経済安全保障と技術研究を担当するヨリス・ティアー分析官が、この輸出管理措置をあらゆる交渉の場に掲げられる「必殺の一撃」だと指摘し、これを利用して欧州に対し中国製電気自動車(EV)への輸入関税を撤回させるよう迫っていると分析したことを伝えた」
フランスでは、日仏合弁によるレアアースの「都市鉱山」(リサイクル回収)が26年末をメドに建設中である。フランスの「カレスター社」と日本の「JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)」による合弁プロジェクトだ。年間2000トンの永久磁石を回収して、ネオジム等の軽希土類を約800トン、重希土類を約600トン生産する計画である。重希土類の分離生産能力は、世界の約15%に相当する。
欧州は、使用済み永久磁石(風力・EV)が大量に存在する。廃棄磁石のリサイクルは、欧州が最も得意な領域だ。日本の化学的精錬法は、リサイクル(二次)と鉱石からの製錬(一次)の両方に使える「二刀流」技術である。
日仏両政府は、官民の共同プロジェクトとして、仏南部にレアアース精製工場を建設している。2026年末に稼働予定で、電気自動車のモーターの永久磁石などに使用される重レアアースを生産する。経済産業省によると、将来の日本の需要の2割に当たる供給を受ける長期契約を結んでいる。日本は、重レアアースの長期安定供給を受ける長期契約を結んでいる。このように、中国のレアアース「独占」は、26年末には破られる見通である。
(4)「記事は、EUが今年初めに「欧州重要原材料センター」の新設を発表し、重要原材料法を可決するなど中国からの依存脱却を掲げているものの、域内生産目標を実現するためのプロジェクトは財務的な持続可能性が保証できず、輸入多角化戦略も実質的な成果を挙げていないと指摘。欧州は超大国間の争いによって自らの工業および軍事計画が深く沈み込んでいくのを傍観するしかない無力感に苛まれているとの見方を示した」
EUは、日本のJOGMECと同じ組織を立ち上げた。重要鉱物の製品在庫や資源開発などに最大30億ユーロ(約5400億円)の資金を充てた。これによる一定の在庫を保有して緊急時に備える。一方では、既述の通り日仏合弁によるレアアース・リサイクルと精錬事業が始まる。さらに、フィリピンでは、米国政府主導で24時間連続操業のレアアース工場が28年末には操業開始である。ここでも、日本の化学的精錬法が採用される。


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