米中首脳会談で、習近平中国国家主席は、「台湾問題を巡り、米中が対応を誤れば衝突に発展する可能性がある」と警告した。米中軍事力は、対等という強気発言である。だが、米軍が示したベネズエラとイランへの電子戦は、とうてい中国軍の及ばないところ。習氏は、「大見得」を切って威嚇したのだ。
この威嚇姿勢は、米国だけへ向けられているのではない。周辺国へも同じ対応で、とりわけ日本が標的になっている。福島原発処理水の海洋放出では、科学的に究明されているにも関わらず、日本海産物の輸入禁止措置を取るなど威嚇していた。中国は、こういう経緯があった上での高市発言(25年11月の台湾有事発言)を捉え急激な対立へ持ち込んだ。
『朝鮮日報』(5月14日付)は、「高市首相の『台湾有事』発言がなかったら日中関係は変わっていたか」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の柳井(リュ・ジョン)東京特派員である。
高市早苗首相の「台湾有事」発言がなかったら、日本と中国の関係は変わっていただろうか? 最近日本のベテラン記者(キャリア30年)とこうした会話を交わした。彼は「変わらなかっただろう」と語った。発言の好機(慶州APECでの習近平国家主席との挨拶直後)を逸したとはいえ、内容は新しくなく、現在の両国対立は構造変化の過程で予見されていたことだという。
(1)「中国が西太平洋に空母を派遣し、年間数回にわたって大規模な台湾上陸訓練を行う状況下で「もはや米国だけに依存するな」という米国の態度変化は、日本の自主防衛を後押ししている。こうした環境では対立の発生は避けられない。実際、北朝鮮のみならず中国の脅威に対抗する日本の安全保障戦略は、安倍政権期から継続してきたものだ」
日本だけが、中国の軍事力を警戒するのではない。ASEAN(東南アジア諸国連合)へも広く及んでいる。身勝手で強圧的な中国に対して、警戒観を持たない方が異常であろう。
(2)「異なる点があるとすれば、高市首相はより迅速かつ果敢であるという点だ。日本は長距離ミサイルやドローンなど先端兵器確保に乗り出す一方、インド太平洋諸国を「同志国」として取り込んでいる。中国が軍事的な挑発を行えないよう抑止することが目的だ。同志国の核心はオーストラリアとフィリピンで、両国とはすでに準同盟国関係となっている。相互に軍隊がビザなしで入国できるため、合同軍事訓練が容易になった。自衛隊の護衛艦も輸出し、共同海上作戦を容易に行う予定だ」
高市首相は、歴代首相の中でも安全保障政策に敏感であることは事実だ。いわゆる「高市発言」もそういう危機感が言わせたものであろう。日本へ迫る安保危機は、決して見過ごせるレベルの段階でない。
(3)「もともと中国と親しいベトナム・インドネシアのような国々も同じ陣営に引き込んでいる。日本は第二次世界大戦時、多くの東南アジア諸国を軍事占領した国だ。それにもかかわらず、東南アジアの知識人たちは、毎年「最も信頼できる国」を問う調査で、EU・米国・中国を抑えて日本を挙げている。「助けてやったのだから『言うことを聞け』」と強圧的な中国とは異なり、「法と自由」を原則に掲げ、年20兆ウォン(約2兆円)規模に上るODA(政府開発援助)の8割をアジアに集中させた結果といえる」
日本のODAは、低利(1%以下)・超長雑言期融資(40~50年)という極めて好条件で事実上、「無償」のようなものである。このODAは、あくまでも相手国の立場で事業を推進している。日本のODA資金を利用した国は、これだけでも「親日国」になってきた。唯一、累積2兆円の巨額ODAを受けた中国だけは、反日の旗を振って悪口雑言を言い募っている。このことからみても、中国の反日はある意図を持っているのであろう。
(4)「中国の軍事戦略は、ますます大胆になっている。米軍の東アジアへの接近を遠くから遮断するという目標の下、南シナ海(第1島嶼線)を越えて西太平洋であるフィリピン海(第2島嶼線)に艦隊を派遣している。昨年からは中国空母「山東」「遼寧」に続き、最先端の「福建」も頻繁に現れ、西太平洋をあたかも自国裏庭のごとく扱っている。西海(黄海)にも昨年だけで8回も進入してきた。中国は、「米国が日本を委託拠点としてアジアの覇権を維持しようとしている」という認識を持っている。対応のレベルを上げていくだろう」
中国は、米国からも多くの支援を受けてきた。それにもかかわらず、米中首脳会談では、「台湾問題を巡り、米中が対応を誤れば衝突に発展する可能性がある」とまで威嚇している。凄い振る舞いと言うほかない。日本への威嚇もこの延長線にある。
(5)「韓半島を取り巻く安保環境が、これほど急変しているにもかかわらず、肝心の当事者である韓国の積極的な関与はなかなか見られない。米国の東アジアにおける軍事的空白への懸念が強まる状況下で、日本が主導した連携に後になって便乗するだけでは、我々が望む実質的な安保効果を得ることは難しい。近々、高市首相が韓日シャトル外交の一環として慶尚北道・安東を訪問するという。今回の韓日首脳会談は、ひたすら国益のみを見据え、韓日の安保協力を強化する場とならなければならない」
韓国は、中国に対して「怯えた」姿を見せている。これが、一段と韓国へ強圧的な振る舞いを誘発するのであろう。毅然とすべき局面で、引き下がってはならないのだ。


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