日本は、東南アジア8カ国と「海洋状況把握(MDA)」を共有する構想を進めている。
日本が、「アジア海洋情報を一元化する」という極めて戦略的な動きだ。最大の目的は、「中国の動向把握」 である。中国による日本への威圧を跳ね返す目的もある。
日本が、海洋情報を一元化する目的は2つある。
1)中国の海警・民兵船・潜水艦の動向把握だ。AIS(船舶自動識別装置)を切った船や、民兵船(漁船を装った準軍事船)、海警局の大型船などが、南シナ海・バシー海峡・マラッカ海峡の通過する際の監視が可能になる。
2 )シーレーン(海上交通路)の防衛だ。日本の原油・LNGは、ホルムズ海峡、マラッカ海峡、バシー海峡 を通る。ここが止まれば、日本経済は止まる運命だ。だから日本は、「海の情報を握る=国家の生命線を握る」
という判断へ踏み切った。要するに、中国の不穏な動きをリアルタイムで参加8ヶ国と共有して対処しようというものだ。
『日本経済新聞 電子版』(5月16日付)は、「海の船舶監視、東南アと情報共有 シーレーン防衛へ30年代に8カ国」と題する記事を掲載した。
政府は船舶の監視で東南アジア各国との情報共有に乗り出す。人工衛星などで情報を集める海洋状況把握(MDA)で日本企業のサービスの導入を促す。2030年代前半に8カ国程度に広げ、シーレーン(海上交通路)の安全確保で協力を深める。
(1)「日本成長戦略会議が今夏に策定する「官民投資ロードマップ(行程表)」に海外展開の目標を盛り込む。政府開発援助(ODA)や政府安全保障能力強化支援(OSA)を活用し導入を進める。米国とイランの軍事衝突では、ホルムズ海峡が事実上封鎖され、資源の確保を巡る日本のリスクが浮き彫りになった。中東情勢の混乱を踏まえ、航路の防衛を強化する」
海洋情報は、広域でなければ情報の価値が下がる。8ヶ国には、次のような国々が想定される。フィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシア、シンガポールの5ヶ国が有力視されている。このほか、タイ、カンボジア、ラオスなどASEAN(東南アジア諸国連合)の大半の参加を想定している。これには、日本がASEANの石油製品供給で「POWER Asia」(100億ドル支援)することから、関係を深めて連携を強化するもの。
(2)「MDAサービスは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や国内外の民間企業が打ちあげた人工衛星から得る情報をもとに船舶の位置などをリアルタイムに提供するものだ。国内ではIHIグループのIHIジェットサービス(東京都昭島市)などが手掛ける。日本政府も民間のサービスによる情報を得ている。日本は、ODAやOSAを通じて東南アジアや太平洋島嶼国などの同志国に巡視船や警備艇、警戒監視用の無人航空機(UAV)を送ってきた。25年度はインドネシアに警備艇、マレーシアに潜水作業支援船、24年度はフィリピンに巡視船を供与した。こうした国々が、日本企業のMDAサービスを売り込む候補になる」
日本は、ODAやOSAを通じて東南アジアや太平洋島嶼国などの同志国に巡視船や警備艇、警戒監視用の無人航空機(UAV)を送ってきた。こうした関係性が基盤になる。
(3)「安全保障上の懸念がある他国の船舶の動向をつかむのに役立つ。違法・無報告・無規制(IUU)漁業、海上で積み荷を移し替える「瀬取り」といった不正の監視にも関心が高いとみられる。政府は、各国の需要は異なるとみる。位置情報などを表す船舶自動識別装置(AIS)の信号を切った船舶を含めた海域の状況把握、特定の地点の高精度な衛星画像など各国のニーズを調査しサービスに反映する」
AISの信号を切って通航する不審船の把握には、MDAサービスが不可欠である。ASEANは、南シナ海に面しており不審船による被害を未然に防止する需要が増えている。中国の海警・民兵船・潜水艦の動向把握は、安保上も不可欠な作業になる。
(4)「各国と連携を進めることで、日本のシーレーン防衛の強化にもつなげる。政府は、防衛省や海上保安庁をはじめ政府機関が得たり、日本企業が提供したりする情報を集約した船舶警戒監視システムを持つ。支援する各国が巡視船やレーダーを活用して独自に集めた情報を共有してもらい、精度を高めることを検討する。日本は中東のホルムズ海峡から、東南アジアのマラッカ海峡や台湾とフィリピンの間のバシー海峡を経由するルートで原油などを調達する。その他のルートでも東南アジアのロンボク海峡やスンダ海峡といったチョークポイント(要衝)を通る必要がある」
日本はすでに、船舶警戒監視システムを持っている。これに加えて、各国の情報を加えることでより精緻になって各国が共有できるメリットがある。
(5)「高市早苗首相は2日のベトナムでの演説で、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の重要な要素として「海洋安全保障」を挙げた。政府が、年内に予定する国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定でもシーレーン防衛の強化が焦点の一つになる。情報収集の手段になる海洋無人機(ドローン)では、日本企業が30年ごろに世界市場で3割のシェアを獲得する目標を掲げて投資を促す」
政府は、日本企業が情報収集の手段になる海洋無人機(ドローン)で、30年ごろに世界市場で3割のシェアを獲得する目標を掲げて投資を促すことにしている。海洋安全保障の重要性が高まっているのだ。


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