テイカカズラ
   


中国が拘った台湾問題

台湾で中国の寿命短縮

一帯一路が経済負担増

ASEANが脱中国へ

 

5月14~15日開催の米中首脳会談は、中国がもはやレアアース(希土類)を外交武器に使えず、米国の思惑通りに進んだ。習近平氏は14日、冒頭挨拶で中国と米国はいわゆる「トゥキディデスの罠」を回避できるのかという威嚇的な発言をした。この「先制攻撃」こそ、中国の弱さを証明するものだ。トゥキディデスの罠とは、古代ギリシャの歴史家トゥキディデスに由来する「世界覇権争い」に関わる話である。

 

トゥキディデスの主張は、新興勢力が既存勢力に挑戦する際には、紛争が避けられないというもので、新興勢力が勝利するという示唆だ。つまり、米中が戦えば中国の勝利という「際どい」内容で、米中首脳会談の冒頭で米国を威嚇した。こういう血なまぐさい話をした目的は、中国国内向けであろう。中国は、米国と対等という強硬姿勢をみせたのだ。トランプ氏は、これに対して「習氏は優れた指導者」であると持ち上げ、それで終わった。習氏の狙いは、台湾問題の提示だけに、トランプ氏はこれを無視したのだ。

 

習氏が、トランプ氏へ「先制パンチ」を見舞ったのはこれだけである。二日間の両者の交渉の中で明らかにされたのは、中国側の譲歩であった。ボーイングの航空機200機などの大型商談を行ったが、米国からの目立った譲歩はなかた。中国が要求した目玉政策は、米国がこれまで行ってきた台湾独立に対し「支持しない」を「反対する」に踏み出させることだけにあった。この大目標が、完全な空振りに終わった。世界のメディアは、習氏の先制パンチに対してトランプ氏が黙殺したことを理由に、「習氏判定勝ち」と報じている。

 

中国が拘った台湾問題

米国が、台湾独立を「支持しない」から「反対する」へと変わることで、中国にとってそれほど大きなメリットを得られるのか。実は、米国が反対すると明言することで、中国には大きなメリットが転がり込むという計算がある。それは、習近平氏個人のメリットと中国経済の軍事費負担軽減が実現できるからだ。習氏は、米中関係を「建設的戦略的安定」と表現する新たな用語を提唱した。中国の真意は、米国と対抗することに「疲れた」ので、しばし時間が欲しいという意味であろう。

 

1)中国は、台湾が独立すると宣言すれば、直ぐに軍事行動を起こせる準備をしている。肝心の台湾世論は、中国へ帰属しないが独立もせず現状を維持するという立場である。ただ、現在の台湾頼政権は、「独立」という発言をしないまでも、それに近い行動や発言をして、中国に屈しない強い姿勢をみせている。習近平氏は、これが気に入らないのだ。だから、ことさら台湾を軍事威嚇している。国防費も増やしている。これが、中国経済を圧迫しているのだ。

 

2)中国の国防費予算の伸び率は毎年、コンスタントに7%台を維持している。35年には世界一流の軍隊の域に達するとしている。だが、これからの中国経済停滞予想から言えば、明らかに財政に大きな負担になっている。超高齢社会の重圧が、ひしひしと迫っている中で、国防費にかけられる余裕を失ってきた。年金財政は、早ければ28年から赤字に転落する。年金は地方政府の分担である。その地方政府は、不動産バブルの崩壊で土地売却収入が減っており、職員の給与も満足に払えず、カットや未払いが発生している。

 

地方政府の財政は、「融資平台」という別働隊が抱える膨大な債務で四苦八苦している。中国は、中央政府が財政均衡を維持するように務め、実際の財政赤字は地方政府に押しつけるシステムだ。地方政府は、融資平台へ財政赤字を貯め込んでいる。つまり、中央政府→地方政府→融資平台という連鎖で財政赤字を押しつけきた。こうした一連の赤字たらい回しによって、公的債務は対GDP比320%(IMF予測)と、日本の240%を上回る最悪事態である。とても、国防費の伸び率7%を維持できる環境でなくなっている。

 

3)米国が、台湾独立に反対と明言すれば、台湾は米国の庇護がなくなり、独立はあり得ない。習氏は、これを理由にして国防費を減らすことが可能だ。国防費削減分は、国内経済立直しへ回せるゆとりができる。習氏には、これが政治的勝利になるので、国家主席4選への道が開かされる。習氏が、米国から「独立反対」の言質を取れれば、大きな外交勝利になる。米国は、習氏に一方的な外交勝利のチャンスを与えられない。中国経済に復活の機会が生まれ、それだけ米国が不利になるからだ。米中関係の本質はここにある。

 

4)問題は、米国が国内法である「台湾関係法」で、台湾を中国領として認めていないことである。米国と台湾を法的に位置づける台湾関係法は、台湾の防衛力維持を米国の義務とする。また、台湾の将来は「平和的手段でのみ」決められる。武力による統一は、 米国法が禁止している。中国が武力統一を選べば、米国は法的にも介入する義務があるのだ。

 

トランプ氏が、台湾についていかなる発言をしても、最終的には台湾関係法に縛られる。中国が武力統一を選べば、米国は法的に介入せざるを得いのだ。中国は、この分かりきったことに対して、無駄な「挑戦」をしていることに気づくべきであろう。今回の米中首脳会談で習氏が、「トゥキディデスの罠」を持ち出して、米国を脅しても問題解決に何ら役立たないのである。習氏のスタンドプレーに終わった。

 

台湾で中国の寿命短縮

あえて極論を言えば、中国が台湾を領土とするには、二つの方法しかない。一つは、平和的統一が台湾基本法の原則である以上、中国が民主化しなければ台湾は統一を受入れないであろう。この場合、中国共産党の存在が障害になる。もう一つは、中国共産党の存続を前提とすれば、米国と戦争して勝利を収めなければならない。これは、世界戦争を覚悟しなければならない暴挙になる。(つづく)

 

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