テイカカズラ
   

今回の米中首脳会談は、従来とは異なって何らの成果もなかったと評されている。米国が、米中首脳会談では「定番」になっていた経済改革要求を一つも出さなかったことだ。米国は、常に中国の過剰輸出是正のために内需振興を要求してきたが、今回の会談ではそれすらない「無風状態」であった。

 

昨年は、米国が関税戦争を仕掛けたという「気まずさ」があったとしても、中国の経済運営は常識を超えた輸出依存型である。内需振興が不可欠だが、こういう議論をできない状況は、中国には安堵できたとしても何ら問題解決にはならないのだ。中国が、内需不振という業病に取り憑かれていることは確実で、米国は「サジを投げた」形に見える。つまり、このまま経済改革を要求せず、中国経済の「自然死」を待つという印象すら与えている。

 

『ロイター』(5月17日付)は、「成果乏しい首脳会談、米中関係は『脆弱な休戦』に回帰」と題する記事を掲載した。

 

トランプ米大統領の訪中は、米中首脳会談として成果が限定的だったかも知れない。中国にとっては明らかに利点があった。昨年の激しい貿易戦争を経て、両国がおなじみの経済・戦略的な対立の構図に回帰したということだ。

 

(1)「米国にとっては、米国が見るところ「重商主義的」な中国の貿易政策からインド太平洋における軍事的影響力の拡大まで、米中関係上の最も懸念すべき問題が依然としてほぼ手つかずのまま残った。一方、習氏にとっては、一定の余裕が生まれ、ある程度予測可能な諸課題へと回帰したことを意味する。習氏は、この変化を「建設的な戦略的安定」と呼ぶ両国関係の新たな枠組みとして表現しようとしたようだ」

 

米国は、中国と米中間に横たわる諸課題について、真剣な議論を重ねるという意欲を失ったとみられる。米国が、中国経済は抜本的な改革もできず衰退過程へ落込むという認識を持ち始めたと言えよう。不治の病となった不動産バブルの崩壊後遺症は、過剰債務と若者の高い失業率に象徴されるように、もはや治癒不可能な局面を迎えている。

 

(2)「ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家、スコット・ケネディ氏は、2025年初頭におけるトランプ政権の強硬な通商姿勢からの後退を踏まえれば、中国が優位に立ったと言えると述べた。「145%の関税が課され、米国が中国と世界に対して根本的な変革を迫っていた1年前と比べれば、逆回転が起き、安定に戻った」とケネディ氏は語った。「首脳会談は安定を印象づけたものの、膠着(こうちゃく)状態は解消されなかった」と、米シンクタンク民主主義防衛財団の中国専門家クレイグ・シングルトン氏は述べた。同氏は、会談は「控えめで、対外的に打ち出しやすく、可能な範囲の成果を生んだ。現在の米中関係が耐え得る程度の内容だ」と指摘する」

 

米国が今回、中国へ強い要求を控えたのは、中国経済が1年前と比べれば逆回転が起ったという印象を強めているのであろう。中国の構造問題は、米国が治療する領域ではなく、 放置すれば勝手に悪化する「自己崩壊型の病」である。これが、今回の会談で構造問題を議題にしなかった最大の理由とみられる。