習近平氏は、米中首脳会談冒頭で「米中が戦う事態になったら共倒れ」と威嚇した。それから4日後に、この威嚇発言が恥ずかしくなる4月の経済データが発表された。小売売上高は、前年同月比0.2%増と実質はマイナスへ落込んだ。固定資産投資は、1~4月の累計でマイナス1.6%減となった。「消費も投資もマイナス」という異常な事態だ。
とりわけ注目すべきは、小売売上高の急減速である。この背景には、一般的な要因として、補助金効果の剥落、雇用・所得不安、若年層の消費回避、不動産不況の長期化が重なった結果で、構造的な弱さが露呈している。小売売上高は事実上、マイナスへ落込んだ。この裏には、サービス動向が鈍い(旅行・外食の伸びが弱い)点が影響した。典型的な
「悪い低成長」 のパターンを示している。この状態で、習氏はトランプ氏へ「喧嘩両成敗」という恫喝をした。今回のデータが、米中首脳会談前に発表されていたら、習氏はあのような発言はできなかったであろう。
『ブルームバーグ』(5月18日付)は、「中国経済が急減速、投資は予想外の減少に転じる-脆弱さ浮き彫り」と題する記事を掲載した。
中国経済は4月、全般的に減速した。投資が再び減少に転じたほか、小売売上高や工業生産の伸びも市場予想を下回った。世界的なエネルギー危機に直面する中で、中国経済の脆弱さが浮き彫りとなった。
(1)「国家統計局が18日発表した4月の小売売上高は前年同月比0.2%増加。4月の工業生産は前年同月比4.1%増と、伸び率としては約3年ぶりの低水準。1~4月の固定資産投資は前年同期比1.6%減少となった。小売売上高の伸びは、中国が新型コロナウイルス禍から経済活動の再開に踏み切り、大規模感染が広がった2022年12月にマイナスとなって以来の低水準だった。ブルームバーグ調査では、工業生産、小売売上高、固定資産投資について、これほど弱い数字を予想していたエコノミストは1人もいなかった」
小売売上高の0.2%の伸びは、大規模感染が広がった2022年12月にマイナスとなって以来の低水準である。消費者マインドがいかに萎縮しているかを物語っている。消費の悪化は、内需停滞を象徴している。サービス価格の鈍化と総合してみると、スタグフレーション(不況下の物価高)入り口にあることを示唆している。5月の関連統計が4月と変わらなければ、スタグフレーションという地雷源へ踏み込んでいることになる。
(2)「国家統計局は発表文で、「中国経済は安定し改善を続けている」とした一方、「外部環境は複雑かつ変化しており、供給の強さと需要の弱さという問題はなお顕著だ。一部企業は経営上の困難に直面している」と指摘した。4月の低調な経済指標は、世界的な人工知能(AI)投資ブームを背景とした貿易拡大によって、中国政府が掲げる4.5~5%の成長率目標の達成が視野に入る状況だっただけに、失望感を強めるものとなった」
中国経済が、安定し改善を続けているという政府の見方は明らかに「欺瞞」である。実態は逆である。中国経済の構造分析(不動産バブルの崩壊後遺症)をしっかり行えば、「失望感」を強めることもなく、「来るべきものが来た」という認識になるだろう。
(3)「輸出の好調は、中国経済をイラン戦争の影響から一定程度守ってきた。しかし、原油高による悪影響は製造現場に及び始めており、メーカーは原材料価格の急騰への対応を迫られている。ピンポイント・アセット・マネジメントの張智威チーフエコノミストは、「4月の経済活動は市場予想より弱かった」と指摘。「好調な輸出企業が内需低迷をある程度相殺したが、完全には補えなかった」と述べた」
輸出好調は、ダンピングの結果であろう。過剰生産と内需不振の反映である。
(4)「中国の輸出は、1-4月に前年同期比15%増となった後も堅調を維持すると見込まれている。トランプ米大統領の北京訪問で強化された米中貿易関係の安定化も、先行きを下支えしている。しかし、国内消費の回復の兆しは見えていない。家計向け新規融資が先月振るわず、消費者信頼感にも改善の兆候がほとんど見られない。若年層の失業率は2年超ぶりの高水準に上昇し、AIによる雇用への影響を巡る懸念も強まっている」
若年層の失業率は、2年超ぶりの高水準に上昇している。都市部失業率(特に25〜29歳)も注目すべきである。これが、消費へ大きな影響を与えるからだ。
(5)「中国当局は、輸出主導と内需低迷という二極化した成長の状況に対し、様子見姿勢を取っているように見える。政府は3月に財政支出を縮小した。一方、中国人民銀行(中央銀行)は市場流動性が潤沢で資金需要も弱い中、追加緩和を示唆することすら避けている」
このパラグラフは、重要なことを示唆している。財政支出縮小と利下げ回避は、人民元相場の防衛に向けた操作であった。中国は今、
景気対策より人民元防衛を優先する危険な政策に入っている。これが、スタグフレーションの前兆になる。人民元防衛を優先すると、次の3つが起こるであろう。景気はさらに悪化(財政も金融も使えないため)する。若年失業率が上昇(すでに高水準)する。サービス価格が上がらず、デフレ化が進む。結局、人民元を守るために景気を犠牲にすることで、最終的に人民元は売られるのだ。これは、人民
元防衛が限界に近づくことを示唆している。中国は今、危ない橋を渡っている。
4月の景気指標が悪化した裏には、人民元防衛という切羽詰まった事態が起こっていたのだ。アジア通貨は、今回のイラン戦争による原油高で軒並み下落した。その中で唯一、人民元相場だけが現状維持であった。中国政府は、人民元下落によるドル建て債務返済増を恐れている。戦々恐々とした日々を送っているのだ。


コメント
コメントする