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米大手投資会社ブラックストーンは6月4日、個人投資家向けのBCRED(総資産13.5兆円) で、 解約請求の一部拒否を発表した。プライベートクレジットは、1年前から問題が指摘されてきただけに、「ついに火がついた」という受け取り方がされている。プライベートクレジット=非公開融資であり、流動性が低いという難点がある。すぐに解約ができないのだ。外部からは、実際の評価額がわからず、「見かけ上は安定しているが、実際には流動性がない」 という構造が露呈した。

 

プライベートクレジットは、高金利で担保が脆弱な借り手で中堅企業 が多い。金利上昇で返済能力が急低下していることから、今回の事態になった。 ファンド側は、評価損を出したくないという強い思いがある。上場債券と違い、 時価評価を遅らせることができるという「暗部」を抱えている。一度、今回のような「解約請求拒否」が起こると連鎖が始まる。投資家心理は、「ブラックストーンで請求拒否が出た。 他のファンドも危ない。 早く解約しないと閉じ込められる」というもので、 銀行取り付けと同じ心理になる。

 

この問題は、中国へ波及する。中国富裕層が多く投資しているだけに、プライベートクレジットに資金が凍結される事態になると、中国の外貨流動性に大きな「穴」が空く事態になる。中国は、すでに新規の海外投資を禁じる手を打っているが、多くの資金は凍結されかねないリスクを抱えている。これは、中国経済にとって「ドル流動性」において大きな支障を来すので、中国経済が「縮小均衡」迫られることになろう。これから中国は、プライベートクレジットで「一喜一憂」させられる。

 

『日本経済新聞』(6月5日付)は、「ブラックストーン解約制限 巨大融資ファンド 日本では3316億円運用」と題する記事を掲載した。

 

米大手投資会社ブラックストーンは4日、プライベートクレジット(ファンドなどによる融資)で運用する個人投資家向けファンド「BCRED」で解約請求の一部を制限したと発表した。

 

(1)「4日付のBCREDの投資家向け書簡で明らかにした。BCREDは四半期ごとに解約請求の機会があり、純資産総額の5%を上限に解約に応じる仕組みを設けている。46月期には純資産総額の約10%相当の解約請求があり、このうち実際に解約に応じて資金を払い出すのは上限の5%のみとした。ブラックストーンは大和証券グループ本社を通じて、日本でもBCREDを提供している。日本証券業協会によると4月末時点で3316億円の運用残高がある。BCREDのように「ビジネス・デベロップメント・カンパニー(BDC)」と呼ばれる投資法人形態の個人投資家向けファンドでは、昨秋から解約請求が徐々に増えていた」

 

2020年代に始まると予測されている金融問題は、プライベートクレジット、プライベートエクイティなどだ。これらは 市場価格が存在しないので、 危機が「静かに」進行する。今回のブラックストーン問題は、 その「静かな危機」が表面化した最初のサインである。金融危機は、長期化の恐れが強まる。

 

(2)「米国の自動車関連企業の相次ぐ破綻や、主要な融資先であるソフトウエア企業の事業モデルが人工知能(AI)普及で揺らいだことなどを受け、個人投資家が解約を通じて投資回収に動いた。BCREDの投融資先の27%はソフトウエア企業向けで、業種別で最も大きい。1~3月期に同業他社が運営するBDCでは上限5%を超える解約請求が寄せられ、次々と解約制限に動いた。BCREDにも13月期に7.%相当の解約請求があった。当時は、ブラックストーン本体と同社従業員がBCREDに合計約4億ドルを新規投資したこともあり解約制限の措置は発動しなかった。今回初めて解約制限に動く」

 

これから起るのは、 銀行の貸し渋りが加速することだ。銀行は、プライベートクレジットの裏側に融資している。 評価損が出れば、銀行の自己資本が圧迫されるからだ。ただ、大手銀行は、対策済みとされる。中小の金融機関が損害を被るリスクが高まるであろう。

 

中国が、「資本流出に急ブレーキ」を踏んだ理由は、プライベートクレジット危機と連動 している。 中国の富裕層・企業は、香港経由で米国のプライベートクレジット商品へ投資し、オフショア口座から米ドル建てへ資金移動している。中国国内の不動産危機から逃げるため、外貨資産へ逃避してきた。その逃避先が、問題を起こしている。

 

今、 プライベートクレジットが、「 解約できない」結果、 資金が海外で凍結される危険性が高まっている。中国政府は、海外送金の規制強化、銀行の外貨購入制限、富裕層の海外投資審査の厳格化 を一気に強めている。これが、逆に外資の中国流入を妨げるので、総合的にみて中国経済に強いマイナス要因となる。

 

中国はこうして事実上、「資本鎖国」状態へ落込む。これが、中国経済へ深刻な事態を生むであろう。海外企業の対中投資や融資は、「回収モード」に入る。外資は、「新規投資」でなく「どうやって資金を回収するか」に頭を使うのだ。この結果、中国向け資金を減らして、他地域(日本・ASEAN・インド)への資金シフトが進むであろう。中国は、素通りとなる。今までなかった事態が起るのだ。

 

日本では、円キャリートレードが「返済方向」に向かうという期待感が強まっている。円キャリーの返済圧力が強まり円高になる。その理由は3つある。

1)プライベートクレジットの解約制限 によって、ドル流動性不足が起る。

2)中国の資本規制強化によって、 アジアのドル流動性が低下する。

3)FRBの利下げが遅れる可能性 である。プライベートクレジット危機は、FRBの利下げを遅らせる方向に働く。

 

プライベートクレジット危機は、「静かな長期危機」であり、 利下げしても解決しないうえ、現在はインフレ再燃リスクがある。こうして、FRBは利下げを遅らせる方向に動く。これは、 キャリーの妙味が低下するので、手仕舞って円高に作用する。このように、プライベートクレジット危機が中国と日本では違った角度へ影響を与えるであろう。