中国の石油輸入が急減している。ここ数週間で劇的に鈍り、需要が日量400万〜500万バレルも減少している。過去30日間、船で中国に届いた石油の量は日量750万バレルで、2025年6月の日量約1300万バレルから57%もの大幅減少である。
過去3カ月以上にわたって、イラン戦争によって世界の石油供給の2割が失われた。この結果、在庫が尽きるにつれて、価格が大幅値上がりなると予想されてきた。それにもかかわらず、石油価格は1バレル100ドルを下回っている。その原因が、中国の原油輸入量の減少にあるという見方が出ている。一体、中国で何が起っているのか。
中国は過去にも、価格が高いときは在庫放出。価格が安いときは大量買い付け という「逆張り型」の戦略を取ってきた。今回もその延長線上にあり、
イラン戦争で供給が不安定な中、在庫を使って市場をやり過ごしている という見方もある。だが、今回の原油高騰はイラン戦争という突発的事態による。いつ解決するか不明である。だから、中国は石油製品輸出をストップさせているほどだ。海外顧客へ迷惑をかけてまで、原油輸入量を減らすことは考えられないであろう。原因は、「ドル節約」という中国が最も触れられたくない点へ行き着くのである。
『フィナンシャル・タイムズ』(6月4日付)は、「中国の石油輸入が急減、世界的な価格高騰を抑制する要因に」と題する記事を掲載した。
(1)「中国の石油購入が突然減少した理由は不透明だ。中国政府は国の石油売買戦略について公に考えを示していない。大半のアナリストは、中国が過去1年で石油価格が安かった時に積み増してきた石油の在庫を使い始めることを決めたと考えている。だが、中国の石油備蓄に関するデータは不足している。「中国は誰も明確に把握することができないブラックホールだ」。ベイカー氏は6月2〜3日にロンドンで開催されたS&P中東石油・ガス会議でこう語った。「中国の在庫ははっきり見えない」と指摘」
各国が、競って原油輸入量を増やしている中で、中国は減らしている。戦争という突発要因が起っている状況で減らしているのは、よほどの理由がなければならない。中国には、イラン戦争を止める力がないからだ。
(2)「北京を拠点とするフー氏は、イラン危機への中国の「計算された対応」には、多くの場合はメンテナンスを装いながら製油所に稼働率の引き下げを強制する一方、在庫の積み増しから在庫の放出への転換も指示することが含まれていると話した。S&Pは中国が第3四半期を通して日量約70万〜80万バレルのペースで商業在庫を減らしていくと予想している」
中国にとって、原油は食糧と並んで二大輸入品である。その原油輸入を減らすのは、国家安全保障上、極めて由々しき事態である。
(3)「中国が、航空燃料と軽油の輸出を停止したことも輸入需要の鈍化につながった。S&Pのデータによると、中国の4月の精製済み石油製品輸出はほぼ10年ぶりの低水準となる日量30万バレル相当に落ち込み、前年同月比で約65%減少した。欧州調査会社ライスタッド・エナジーのアジア石油市場アナリストのイエ・リン氏は「イラン戦争に対応する中国のエネルギー戦略全体はたった一言、『安全保障』に尽きる」と述べ、戦争からの「明らかな出口」がまだ存在しないと指摘した」
中国は、航空燃料と軽油の輸出を停止した。これは、原油在庫温存策によるものだ。その一方で、原油輸入を減らしている。全く整合性のとれない矛盾した政策である。この原因は、ドル資金節約という資金繰り問題に到達する。中国は、3兆4000億ドルの外貨準備高を擁する。だが、実際に自由に使えるドルは1兆ドルと見積もられている。短期債務などを抱えているからだ。中国が、最も隠したい「トップ・シークレット」である。
(4)「石油製品の輸出の抑制は、中国に供給を依存している貿易相手国から厳しい批判を招いた。中国政府は今のところ、燃料を輸出し、価格高騰に便乗するのを認めてほしいという国営の製油所からの要請を拒否する一方、一部の貨物を援助として海外へ出荷してきた。明らかな石油外交の一環だ」
石油製品の輸出の抑制による最大被害国は、ASEANである。日本へ緊急支援を求めて来たので、すぐに対応して事なきを得た。日本の製油所は、10年ぶりのマージン上昇になっている。そのうえ、日本の「POWER Asia」100億ドル支援で、ASEAN全体が日本のエネルギー・ルートに入った。中国は、外交的にも大失策である。
(5)「アナリストは、原油輸入の減少と国内需要の間に大きな食い違いがあることも指摘している。中国の石油需要は4〜6月に前年同期比で日量150万バレル程度しか減少しないと見られている。需要の減少が小幅にとどまっている理由の一端は、不動産市場の不振と一貫して弱い消費者・企業信頼感に足を引っ張られた中国の経済成長の鈍化にある。ライスタッドのイエ氏は石油から電力への構造的なシフトがあることも指摘した。電気自動車(EV)や鉄道の電化、再生可能エネルギーによる発電への投資が、中国が石油輸入への依存が示唆するよりも「はるかに小さな苦痛」で危機を乗り越えるのを助ける「戦略的なバッファー」を提供したと同氏は述べた」
中国の石油需要は、4〜6月に前年同期比で日量150万バレル程度しか減少しないと見られている。輸入は、日量400万〜500万バレルも減少した。需要減と輸入量減との間に大きな食い違いがある。この理由は何か。最後は、外貨事情と読めるのだ。


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