中国では、多くの人が「消費に対して慎重」な状況になっている。4月には、社会消費財小売総額の前年同月比の伸びが0.2%だった。米国では、消費がGDPの70%に近いが、中国ではわずか40%。中国での消費の弱さは、ダンピング輸出となって他国を脅かしている。
『レコードチャイナ』(6月9日付)は、「『物を買わない中国人』に世界が困惑、『社会を信用できない』ことが根底に―仏メディア」と題する記事を掲載した。
フランスメディアの『RFI』はこのほど、同じくフランスメディアである『ル・モンド』の記事を引用して、中国で消費が伸び悩んでいる状況やその原因を分析する記事を掲載した。同記事によると、問題の根底には、さまざまな背景により「社会を信用できない」ことがあるという。
(1)「中国での消費低迷の原因としてはまず、2020年に始まった不動産危機を挙げることができる。中国ではそれまでの20年間、急速な都市化に伴い、住宅価格が上昇し続けた。人々は不動産が最も安全な投資先と信じ、家庭の富の約70%を不動産に投入した。中国当局は20年、不動産バブルを防ぐことを目的として、デベロッパーの負債規模の制限を開始した。このことで、恒大などの大型不動産企業が相次いで危機に陥った。その後、北京、上海、深センなどの大都市の住宅価格は累計で4割近く下落し、大量の家庭で資産額が減少した」
家計資産の70%が、不動産(自宅)である。不動産は,バブル崩壊で大幅に値下がりしていることで、消費者は資産目減りに敏感になっている。これが、消費を抑制する大きな背景である。
(2)「富の縮小は、住民の消費心理をはっきりと変えた。多くの人が旅行、会食、および不必要な支出を減らし始め、より多くの収入を銀行に預けるようになった。工業の生産能力過剰も中国人の消費低迷の一つの原因と考えられる。中国の多くの業界では供給が需要をはるかに超え、激しい価格競争が発生した。企業の利益が圧迫されたことで、賃金の上昇は停滞し、さらには下落するようになった。同時に、若者の失業率が高止まりしたことが、若い世代の消費にブレーキをかけた。親の世代は子に経済的支援を提供することになり、出費を控えるようになった」
先行き不安で、多くの人が収入を貯蓄に回している。これが、消費不振の大きな理由である。不安解消は、政府の責任である。
(3)「中国人が消費に慎重になった背景には、中国の社会保障制度の相対的な脆弱性があるとの指摘もある。中国は世界をリードする高速鉄道網をはじめとする整備された公共交通、高いレベルの教育と医療施設を獲得するに至ったが、失業保険、医療保障、年金などの面では「整備途上国」だ。人々は将来のことを考えれば、消費生活を安心して楽しめる状況ではない」
中国は、失業保険、医療保障、年金などの面が「整備途上国」である。国防費は毎年、コンスタントに伸びているが、社会保障費ほぼ横ばいである。超高齢社会へ向っている現在、対策が遅れている。
(4)「中国では、中間層も消費を削減している。EU系の粉ミルクメーカーで管理職を務めている、ある46歳女性によると、人工知能(AI)の発展が40歳以上の従業員の雇用を脅かすことが心配なので、給与の約40%を投資や消費ではなく、預金に回している。女性はぜいたく品や輸入商品の購入をやめて、価格が手頃で品質が悪くない国産ブランドを選ぶようになった。女性は、「最も大切なことは安心感になりました。見栄を張る消費ではありません」と説明した」
中高年に入る40代では、給与の約40%を貯蓄へ回して未来への備えにしている。これでは、消費が増えるはずもない。
(5)「ル・モンドは、「中国政府は改革を試みている」と指摘した。最近打ち出された措置には、出稼ぎ労働者が就労地で公共サービスを享受する権利の拡大、デリバリー配達員などの新たな就業グループの労働環境の改善、さらに旅行消費を刺激するための春や秋の連休延長がある。しかしこれらの政策も、人々の間で定着した「貯蓄志向の考え方」を急速に変えることは難しい。結局のところ、中国の消費不足は経済の問題であるだけでなく、「社会全体の信用の問題」という性格が強い。不動産価格が上昇し続けることがなくなり、雇用の見通しが不確実性に満ち、社会保障が依然として不十分な状況にあって、住民の「事前の備え」を重視する傾向は自然に強まっている」
農民工は、都会での医療サービスや子弟の義務教育サービスを受けられるように改定された。これが、消費を増やすかと期待されている。何とも、侘しい話である。


コメント
コメントする