欧州は、米国との関係に苦悩している。米国がNATO(北大西洋条約機構)からの脱退を仄めかすからだ。仮に、米国がNATOから脱退したらどうなるか。欧州で、シミュレーションが行われている。当然、日本との関係強化が浮上する。すでに、NATO加盟国大使が5月、大挙して日本の防衛産業を視察した。日欧共同の武器生産問題である。このように、欧州は日本の関係強化に動き出している。
『日本経済新聞 電子版』(7月6日付)は、「日欧同盟はあるか 民主主義国の結束、戦争を防ぐ抑止力」と題する記事を掲載した。
6月のG7首脳会議(サミット)は、欧州の米国不信が拭えず、事務レベルの奔走で辛うじて結束を保った。西側分裂という待ち望んだ敵失をロシアは見逃さない。中国との距離を縮め、過去の失敗を繰り返さないよう用心する。世論工作、サイバー攻撃、スパイ活動――。純粋な武力行使との境が曖昧なハイブリッド戦争を欧州に仕掛ける。
(1)「ウクライナ侵略が長引き、ロシアの疲弊も伝わる。真相はどうか。著名な軍事史研究家でもあるリトアニアのアヌシャウスカス元国防相は警戒心を緩めるべきではないと説く。「いまのロシアの情報機関は冷戦期と変わらない。反対派の暗殺などの手口は同じで、工作員網の一部も引き継いだ」。次の展開はドローンによるインフラや弾薬庫の攻撃かもしれないとみる。むろん全面戦争の恐れも捨てきれない。悲惨な戦争につながる際限のない応酬は起こしてはならない。だからこそ侵略を思いとどまらせる抑止力が必要となる。米国が頼れぬなら、誰と組むのか」
民主主義国にとって、同盟は安全保障の要である。NATOは、欧州の安全保障を束ねる「同盟軍」である。そのNATOが、米国脱退の恐怖に怯えている。中核を失うからだ。中核は、軍事的意味だけではない。経済的は心棒という意味でもあろう。国力のない軍隊では、基盤が弱いからだ。
(2)「仮に米国が北大西洋条約機構(NATO)から抜けるなら、代わりは日本やオーストラリア」。そんな案を漏らす欧州の政策当局者が増えた。米国の後ろ盾を失えば日豪も欧州に近づくはずとの読みもある。欧州は中国も警戒するようになった。経済面でロシアを支える一方、レアアース(希土類)で経済威圧をかける。鉄鋼などの輸出攻勢を受ける欧州では対中貿易赤字も膨らむ」
NATOには、米国の抜けた後のパートナーとして、日本や豪州を「候補国」に上げている向きもあるという。NATOが、直面する最大の敵はロシアである。そのロシアは、中国を後ろ盾にしている。となると、ロシア牽制には中国と対峙する日豪両国が最適というのであろう。NATOに日豪が加わると、中ロにとっては米国という最大の敵に加えて、新たな太平洋布陣が固まり挟み撃ちの状況が生まれることになる。
(3)「欧州連合(EU)は、対中貿易を減らす政策を検討中だ。ドイツのメルツ首相はひそかにライヒェ経済相に電話をかけ、なおも中国ビジネスにこだわる自動車業界などのロビー活動に屈しないよう諭した。「欧州を守るため貿易制限はやむを得ない」。長年にわたって自由貿易を信奉してきた欧州中央銀行(ECB)にすら、そんな考えが浸透してきた。日本のように同じ試練を抱えるインド太平洋の国家とは組めるとの機運が急速に広がる」
経済面では、EU(欧州連合)へTPP(環太平洋経済連携協定)が、「準加盟国」(それが可能かどうか検討必要)として参加することも必要であろう。これは、EUにもTPPの加盟諸国にも、市場の拡大になるというプラスが出てくる。
(4)「ドイツの防衛最大手ラインメタルのパッペルガー最高経営責任者(CEO)は、Nikkei
LIVE「欧州核心トーク」で、「民主主義や自由などの価値を共有する国が協力しなければならない」と訴えた。兵器の共同生産だけでなく、極東有事の際に欧州が支援することも念頭に置く。日欧とも戦後は平和を志し、多元主義と法の支配を社会の礎にした。それを覆すべきではない。目指すのは戦争の準備ではなく、戦争を未然に防ぐ連携だ。西側の分裂を待ち望む人に隙をみせてはならない。高市早苗首相が7日からのNATO首脳会議を欠席するのは機会損失になる」
日欧が、防衛や経済の面でさらに協力関係を深める。現状は、そういう時代環境になっている。日欧が協力関係を深めれば、米国は欧州重視へ立ち戻るであろう。


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