トランプ米大統領は4日、米国の独立宣言から250周年の節目を祝う記念式典で演説した。好調な株式市場に触れつつ「米国の黄金時代の幕開けに過ぎない」と宣言した。国内の反対勢力への批判も繰り返した。トランプ氏は2期目の大統領に就任以来、矢継ぎ早に対外政策を打出した。相互関税、対中対決、ベネズエラとイランへの急襲である。
この過程で、トランプ氏が意図したのは、総合的な中国包囲網構築と同盟国の再編成であろう。相互関税を掛けることによって、同盟国の反応を読んだのである。その結果、米国が世界覇権を維持する上での大戦略を策定したはずだ。米国は、中国がすでに「衰退過程」へ入ったと明確に認識している。一方では、油断することなく防備を固めている。中国に、開戦させない抑止力の強化である。こうした、米国の長期戦略とはかけ離れた論評が登場したので取り上げることにした。
『日本経済新聞』(7月7日付)は、「米国、衰えるにはまだ若い」である。筆者は、日経コラムニストの秋田浩之氏である。
(1)「米国の覇権はピークを過ぎ、衰えていくのか。それとも、大国の頂点の座にこれからもとどまるのか。米国が建国250周年を迎えた今、世界はこの命題に向き合わざるを得ない。主な国際会議の現場では、米国覇権の行方に疑問を投げかける声が飛び交う。トランプ米政権がルールに基づく国際秩序に背を向けただけでなく、それを傷つける側に回っていることが一因だ。国連決議を経ないベネズエラやイランへの攻撃は、その象徴である。驚くことに欧州の会議では、米国を「敵対国(adversary)」とみなす議論すら聞かれる。トランプ大統領がグリーンランドを取得するため、強硬策を辞さない姿勢をにじませたことへの警戒感はとても根深い」
欧州で、米国を「敵対国」呼ばわりすることは、余りにも近視眼的過ぎる。トランプ氏の過激な発言に誘発された面はあるとしても、米欧の価値観は揺るぎないものがあるはずだ。短期間に、価値観は変るはずはない。
(2)「米調査会社ギャラップが、4月に公表した国際世論調査では、米国の指導力への支持率は31%と、中国の36%を下回った。米ピュー・リサーチ・センターが今年前半に36カ国で実施した調査では、トランプ氏を「信頼できない」とする割合が76%に達し、ロシアのプーチン大統領の65%を超えた。米国への信頼度の低下は、もはや疑いようがない。しかし、そこから直ちに「米国は衰退期に入った」と結論づけるのは早計だ。国際的な信頼や威信の低下と、国力そのものの衰退は同義ではない。前者が後者を徐々にむしばむことはあり得るが、両者が常に同じ速度で進むわけではない」
こうした一時的「世論調査」が、冷静な判断によるものでなく、感情的な「好き嫌い」の反映である。これを大真面目に取り上げて、「ソフトパワー」後退と論じるのは、短兵急過ぎるであろう。
(3)「中国に急追されているとはいえ、米国の国力は世界でなお群を抜いている。25年の名目GDP(国内総生産)は約31兆ドルに上り、2位の中国の約20兆ドルを大きく上回った。軍事費でも米国は約9540億ドルと、中国の3倍弱だ。東・南シナ海の軍事バランスは中国優位に傾くが、世界レベルでみれば、米国の戦力は中国をしのぐ。つまり、米国は経済や軍事といったハードな国力では、なお最強の超大国といえる。一方でソフトパワーが著しく衰えている状態だ。問題はこの構造が米国覇権の行方をどう左右するのかである」
米中の経済構造を語るには、その背後にある哲学を取り上げなければならない。米国の「プラグマティズム」と中国の「マルクシズム」は、どちらに発展性があるか。すでに、歴史が証明している。プラグマティズムは既成概念にとらわれず、絶えずイノベーションを実行するものだ。マルクシズムは、ドグマであって発展性がないことは世界的な認識である。米中の依拠する哲学から、両国の発展を論じるべきだろう。
(4)「中長期でみると、考えられるシナリオは3つある。
第1は、各国からの信頼度は低いものの、米国が依然として経済や軍事、技術で圧倒的な優位を保つというものだ。各国は通商や安全保障、基軸通貨で米国に頼らざるを得ない。
第2は、米国が経済や軍事、技術の優位を保ちつつ、政治の安定や国際協調の回復によってソフトパワーも持ち直す。
第3は、ソフトパワー、ハードな国力のいずれも弱まり、中国に逆転される流れである。この場合、米国覇権は本当に色あせる」
ここに挙げた3つのシナリオは、米中の背景にある哲学を比較すれば、結論は出るはず。第2のシナリオだ。


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