米国では、60代になっても学生ローンを抱え続ける状況が生じている。大学院時代の授業料や子どもの学費を親が負担するなどのケースだ。彼らが、思い描いていた老後の姿を塗り替えているという。中には、大学院へ進学したことを悔いる人もいるなど、人生模様は色々だ。問題は、「高い学費」に行き着く。米国は、私学が教育実績や評価などで、公立よりもランクが上ということも影響している。若い時は、老後のことなど想像もできないだけに、学費ローン残高は社会の盲点になっている。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(7月7日付)は、「60代になっても学生ローン返済、引退できない米国人」と題する記事を掲載した。
(1)「米教育省のデータによると、62歳以上で連邦学生ローンを抱える人は300万人を超え、2018年の180万人から増加した。高齢者の延滞率も急上昇しており、その背景には年金などの一定収入だけで生活していることや、医療費がかさんだりしていることがある。債務不履行(デフォルト)に陥った場合、公的年金や税金の還付金、賃金が差し押さえられるリスクがある。連邦学生ローンを抱えるベビーブーマー世代の平均債務額は、約4万5000ドルで、24歳以下の平均約1万3800ドルの3倍を超える」
連邦学生ローンを抱える人は現在、62歳以上で300万人を超える。2018年の180万人から66%も増加している。これは、月々の返済で老後生活を圧迫するだろう。
(2)「医療保険会社でエンジニアとして働くクリス・マコーリフさんと妻のキャロリンさんは共に60代だが、当面は引退できそうにない。今も学生ローンの返済を続けており、その残高が50万ドル(約8100万円)に膨れ上がっているからだ。クリスさんは「大学に行ったことを後悔している」と話す。数十年前、2人が大学院の学位を取得した際、夫婦合わせて11万4000ドルの学生ローンを抱えていた。キャロリンさんは看護師として働き、夫妻は安定したキャリアを築いて毎月の返済を滞りなく行ってきた。その後、家を買い、2人の子どもを育てるようになると、家計に余裕がなくなった。そのため学生ローンを一本化し、毎月の支払額を抑えられる返済プランに切り替えた。その結果、ローンの返済期間が延び、その間も利息が複利で積み上がり、ローン残高は増え続けた」
マコーリフ夫妻は現在、学生ローン残高が50万ドル(約8100万円)にも膨れ上がっている。2人が、大学院の学位を取得した際、夫婦合わせて11万4000ドルの学生ローンであった。それがこれだけ増えたのは、子どもの教育費や住宅ローン支払が重なり、学生ローンの支払い組み替えをした結果だ。ローンの返済期間が延び、利息が複利で積み上がり、ローン残高は増えている。
(3)「マコーリフさん夫妻のように、学生ローンを抱える高齢の米国人の多くは、大学院の学位取得のために借り入れた人たちだ。また、子どものために「ペアレント・プラス・ローン(連邦教育ローン)」を利用した人もいる。このローンは金利が高めで、返済方法の選択肢も限られている。毎月きちんと返済していても、利息の積み重なりによって増えることがある。クリスさんによると、7月から夫妻は月額約3000ドルの返済を求められており、これは新型コロナウイルス禍前の3倍の額だという。トランプ米政権の連邦学生ローンの見直し(7月1日に発効)により、多くの人が同じような状況に置かれている。この制度変更には、毎月の返済額が増えるプランや、残債免除までに必要な返済回数を増やすプランなどが含まれている」
老後も学費ローン残高に苦しんでいる人達は、大学院へ進んだ人達や子どもの学費を親も負担する学費ローン制度を利用した人達である。
(4)「ロバート・リーさん(71)と妻のジュディさんは、2人の子どものために借りたローンを抱えていることもあり、メーン州オーバーンにある46歳の息子の家の最上階に住んでいる。ロバートさんは1997年、子どもたちが大学に通っていた際にペアレント・プラス・ローンで6万6000ドルを借りた。現在、息子は弁護士となり、娘は自身で事業を営んでいる。ロバートさんは「子どもたちはよくやっている」と言う。「今も借金を返済し続けているのは私だが」。ロバートさんは、ローンを組んだのは自分の決断だったため、返済は自分の責任だと考えている。現在の毎月の返済額は約300ドルで、これまでに9万1000ドルを返済したと見積もっているが、まだ5万1000ドルの残債を抱えている。2034年には完済できると説明を受けているものの、年金などの一定収入だけで生活しており、予期せぬ医療費が必要になった場合に返済を続けられるか不安だという」
子ども達は立派な社会人となったが、親が子どもの学費ローンを支払っているケースだ。その代わり、息子の住宅に住んでいるという。毎月の返済額は、約300ドル(約4万8000円)である。日本の生活感覚から言えば、相当の高額である。未だ、5万1000ドル(約820万円)の残債があるという。
(5)「ようやく学生ローンを完済しても、老後資金の立て直しに苦労する高齢者もいる。 ワシントン州オーカス島で暮らすスーザン・シャノンさん(69)は、50代で転職を決意した際に学生ローンを組んだ。シャノンさんは郵便局で働いていたが、腕のけがで郵便配達が困難になった。そこで、同じように転身した友人に触発されてチャプレン(病院や学校などで心のケアを担う聖職者)になることを決意し、2012年に修士号を取得した。 シャノンさんは「学校に戻るのは素晴らしいことだった」と話す。「私は常に生涯学習者だ」。今年2月、シャノンさんは学生ローンの残高が増え続ける状況にうんざりし、貯蓄の半分以上を取り崩して3万7000ドルの残債を一括返済した。借金はなくなったものの、貯蓄を再建するために、より長く働かなければならない。それでもシャノンさんは楽観的だ。「75歳になるまでには、ほとんどを取り戻せるだろう」と言う」
50代で転職するために学生ローンを組んだ。これは、大学入学であろう。さらに、修士号を得るために学生ローンを利用した人もいる。それでも、75歳になるまでには、貯蓄を回復させられる見込みだという。ぜひ、健康で「目的完遂」できるように、応援したいものだ。これも、違った形の「アメリカン・ドリーム」かも知れない。


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