a0070_000030_m
   

中国からの訪日客は、個人客が主体である。中国政府の「反日発言」にも関わらず、日本を訪ねてくれる中国人は、相当の「教養人」であろう。普通の市民は、政府の宣伝に乗せられるが、それを押して「敢行」するのは、一般大衆レベルと異なるに違いない。こういう層こそ、日本理解の軸として大切にすべき人達である。この人達の象徴的な話が、日本の「香り」だという。日本社会が、商品でも良い香りを求めていることに、「先進国の空気」を感じ取るのであろう。

 

「香り」は、文化レベルの高さを示す「最終段階の美意識」の一つとされている。衣食住が整った社会が、次に求めるのが「香り・空気・気配」といった「環境の質」である。中国人旅行者が、日本で「良い香り」に感心するのは、単なる嗜好ではなく、文化の成熟度の違いを直感的に感じ取っているからに違いない。

 

『レコードチャイナ』(7月7日付)は、「『日本はもうこんなレベルに達した』と感嘆、中国ネットで反響」と題する記事を掲載した。

 

中国のSNS『小紅書』(RED)に4日、「日本はもうこんなレベルに達した」との投稿があり、反響を呼んだ。

 

(1)「投稿者は、「(中国では)国内のたくさんの臭い人に頭を悩ませている時、日本はもう『良い香りの濃淡』を気にするレベルにまで達している」と感嘆した様子でつづり、日本で見かけたポスターの写真をアップ。ポスターには「知ってください!その香り、困っている人もいます」と書かれており、柔軟剤などの香りによって体調不良になったり、気分が悪くなったりする人もいるとして、香り付きの製品を使用する場合は周囲の人に配慮するよう呼び掛ける内容になっている」

 

日本の香り文化は、「無香の美学」が基本である。中国人が驚くのは、「強い香り」ではなく ほのかな清潔感である。日本の香り文化は、香水で主張するのではなく、石鹸、洗濯、木の香り、畳、お茶、湯気 など、生活そのものが香りになる構造である。これは、世界的に見ても珍しい存在とされる。

 

香りは、「社会の清潔度」の指標でもある。日本の街はゴミが少ない、トイレが清潔である。これらは、公共空間が整っている結果であり、空気そのものが匂わない構造になっている。中国人旅行者が最も驚く点で、「日本は空気がきれい」、「街が匂わない」という感想が非常に多く寄せられている。香りは、文化+衛生+秩序の総合結果と言えそうだ。

 

(2)「投稿者は、「(これを見て)数日前に見たSNSの書き込みを思い出した。それは『日本に来てからとても良い香りの洗剤を買ったけど、その香りをかいでいたら頭がくらくらしてきた』というもの。でも、少なくとも臭くはないでしょ!」とし、「ほかのことはさておき、潔癖な人にとって日本は(訪れる先として)最も優れた選択肢であるとしか言えない」とつづっている」

 

人間社会は、衣食住の次は香りを求めるようだ。これは、文化史的にも理屈が通っている。 衣食住は、生存にかかわる。そこが、清潔であることが衛生上も良いという結論だ。香りは、美意識の問題に発展する。そこで、 空気・気配が穏やかであることが、精神文化にも好影響を及ぼすことになる。その意味で、日本は美意識の最終段階に近い。

 

中国は今、衣食住が向上し、清潔さは都市部で改善している。香り文化は、発展途上という段階であろう。だからこそ、日本で「香り」に感心する基盤が生まれているのだ。なぜ、中国人は日本の香りに敏感なのか。理由は3つ考えられる。

 

1)都市の匂いの違い(衛生・排気・湿度)

中国の都市は人口密度が高く、匂いが混在しやすい。 日本は都市でも匂いが少ない。

2)日本人の「匂いに対する配慮」が極端に高い

体臭ケア、洗濯、消臭、靴のケア、部屋の換気 。これらが日常的に行われている。

 

3)香りが、「他者への礼儀」とされる文化

日本では 「匂いで他人を不快にさせない」という価値観が強い。これは中国文化にはあまりないことだ。

 

総括すれば、香りが文化の成熟度を示す「最後の美意識」と言えよう。 香りは、「余裕」がないと成立しない文化要素である。衣食住は、生存のための文化。 香りは、生存の後に来る「余剰の美学」である。空間を整える、清潔を保つ、人に不快を与えない、季節や場に合わせる。こうした行為は、社会の秩序・衛生・美意識が揃って初めて成立することだ。日本は、これが極めて高いレベルに達したということであろう。

 

(3)「これに、他のユーザーからは「良いことだね。社会が発展している証拠」「これ私もそう。ある香りをかぐと吐き気をもよおす」「このポスターすごく良いと思う。においに敏感な人にとっては本当に気持ち悪くなって、頭痛がしてくる」「日本で出掛けた時、外国人が多い場所では(香りが)すごくにおう。片頭痛持ちはそのままあの世行き」といった声が上がった。また、「なぜ柔軟剤がやり玉に?香水の方が問題だろう」「香水のにおいなら分かるけど、柔軟剤のにおいで頭痛や吐き気って。それはもう病院に行った方がいいと思う」との意見も見られた」

 

ここには、いろいろの反応が聞かれて興味深い。香りに対する反応は、いろいろあろうが、さわやかない香りは、健康そのものである。