あじさいのたまご
   

ロシア経済が、危機に向っている。ロイターが入手した、欧州のある国の情報機関の報告書は、ロシアの金融機関が戦時経済負担の多くを背負っているため、同国は「爆発的な」銀行危機に陥るリスクがあると警告している。ロシアの銀行の状況を欧州当局者に伝えるためにここ数週間で作成されたこの2ページの文書は、西側によるさらなる規制に対するロシアの銀行の脆弱性を概説したものだ。『ロイター』(7月6日付)が、すっぱ抜いた。

 

ロシアの銀行は、ウクライナへの全面侵攻以降に科された制裁をおおむね乗り切ってきた。だが、融資の焦げ付きと家計債務の増加による不良債権が、銀行の「爆発的」な経営リスクを生み出している。政府は、この事態を隠蔽しているが、大規模な銀行危機リスクをいつまで隠し通すことは不可能と判断されている。 ウクライナとの戦争費用が国庫を圧迫する一方、企業は銀行への依存度を高めているので、銀行へ戦時経済リスクの全てがしわ寄せされている。これ以上の不良債権を背負いきれない、ギリギリの段階へ向っている。

 

カナダのカーニー首相は、6月の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の場で受けた米CNNテレビによるインタビューの中で、「我が国とドイツ、英国、フランスはいずれも潮目が変わったとの見方で一致している。(中略)(ロシアの)プーチン大統領は敗北するだろう」と述べた。これは、『フィナンシャル・タイムズ』(7月6日付)が報じている。

 

カーニン氏は、「プーチン氏が黙って敗北を受け入れると見る向きはほとんどない。そのため西側諸国の政策立案者たちは、この夏に戦況がさらに激化する事態を想定し、警戒を強めている」としている。ある関係者は、「我々全員が抱いている疑問は、プーチン氏は次にどう出てくるのかという点だ」と語る。ロシアは、明らかに文字通りの「手負い熊」になっている。

 

欧州情報機関が、ロシア経済を「爆発的危機」と判断するのは、次の構造分析による。

 

1)ロシア銀行の外貨資産が急減

経済制裁により、欧州銀行との取引停止。SWIFT排除(米銀との取引禁止)、外貨建て資産の凍結 が進み、ロシア銀行は外貨流動性を失っている。

 

2)ロシア国内の銀行は「戦時財政」に組み込まれた

ロシア政府は、銀行に対し軍需企業への融資拡大、国債の強制引受を行わせている。これは、銀行の健全性を損なう典型的なパターンである

 

3)不良債権の急増

ロシアGDPは、制裁下でも一見安定しているように見えるが、 実際には軍需・補助金で「見かけ上の成長」を作っているだけで、 民間企業の倒産が増えている。不良債権は統計に出ない形で積み上がっている。

 

4) 地方銀行の破綻が増加

ロシアでは地方銀行の破綻が増えているが、政府が情報を隠蔽している。

 

以上のように、間もなく4年半に及ぶウクライナ戦争で、民間経済が大きな傷口を広げている。それが、金融機関の不良債権となって積み上がっている。

 

ロシア政府が、危機を隠せなくなる「引き金」はなにか。

 

1 )原油価格の急落

ロシア経済は原油依存である。 原油価格が下がると、銀行の外貨収入が一気に減る構造になっている。

 

2)軍事費の過剰負担

ロシアは、GDPの約7%を軍事費に投入しており、 銀行が国債を強制的に買わされている。戦時中の日本が、これと同じであった。

 

3)欧州の追加制裁

欧州は、さらにロシア銀行の「抜け穴」を塞ぐ制裁を検討している。これらが重なると、 ロシア銀行の資金繰りが、一気に逼迫して経営破綻する可能性が強まる。

 

これらを総合すると、 欧州情報機関の「爆発的危機」という表現は、政治的誇張ではなく、構造的に十分起こり得る状況にある。ただし、現時点では 事実が隠されているので公式統計では「危機はまだ表面化していない」。現実は、「危機8合目」と言って差し支えない状況に追い込まれている。欧州情報機関は、「ロシア銀行危機は、戦争継続能力の限界を示す」 と分析している。

 

ロシアが経済破綻に陥った場合、中国はどういう立場に追い込まれるか。米中ロ三角関係に変化が起こる。現在は、 米 vs 中+ロ(ただしロは弱いが「ノイズ」として機能)。ロシア自壊後は、米 vs 中(ロは「問題国家」だが、戦略的重みは低下)となる。中国は。米国の「前線に立たされる」立場になり、 ロシアの影に隠れる余地がなくなる。結果として、米中対立は、「より直接的」になるであろう。中国は、ロシアを盾にできず、自国の経済・軍事・技術の弱点がそのまま米国の「標的」にされる。中国は、米国とアジア周辺諸国(日本・豪州・フィリピン・インド)によって取り囲まれる形になる。こういう、状況下でも日本威圧を繰り返す余力があるだろうか。