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低い中国企業の営業利益率

BYD高級EVで欧州進出

EV一本経営の脆弱性顕著

EV低収益構造の根本要因

ドイツが中国封じ込め政策

 

中国EV(電気自動車)は、過剰生産による乱売戦によって低利益率に苦しんでいる。この背景には、新エネルギー車(NEV)市場では、最安値が3.58万元(約84万円)級の価格帯が主戦場になっているからだ。この価格帯での競争では、利益など出るはずがなく、地方政府の補助金で命脈を保っているのが現実である。こうして、中国自動車業界は販売台数だけは「世界一」であるが、質の面で言えば「お粗末」の一語につきる。EVが、電動家具化している。

 

100万円以下EVが、どんな中味であるかは想像に難くない。消費者は、低価格の魅力に惹かれて購入するもののすぐに飽きて買い換えている。中国の電気自動車など新エネルギー乗用車の平均車齢は、2025年末に1.8年だった。中国汽車工業協会が調査会社と分析したものだ。車齢は、新車登録後の経過年数を示す。この「1.8年」こそ、低価格が魅力で購入したものの「呆れて」買い換えたものであろう。数字上では、これが「ダブルカウント」になる。品質の悪さが、皮肉にも中国EVの販売台数を押し上げているのだ。

 

こういう実態を知らない中国メディアは、「中国EV世界一論」の妄想をまき散らしている。中国ニュースサイト『観察者網』は7月、「日本車はあとどれだけ持ちこたえられるのか」と題する論評記事を掲載した。これによると、日本大手3社の2025年上半期の中国販売台数は、トヨタが前年同期比17.1%減、日産が同15.0%減、ホンダが同34.7%減と紹介し、「中国市場での苦戦が鮮明になった」としている。

 

100万円以下のEV販売台数を基準して、日本メーカーとの台数比較自体、意味をなさなくなっている。中国車1台の販売は、付加価値的に言えば日本車がその3~4倍になるであろう。こういう、質の面を全く無視した議論が横行している。『観察者網』はさらに、2030年に日本車全体の世界販売が2000万台を下回ると大胆予測。減少分の大部分は、中国メーカーが獲得するとみている。世界の自動車産業における勢力図は、こうして大きく変化すると豪語するのだ。

 

低い中国企業の営業利益率

世界の自動車業界は、販売台数と並んで営業利益率が重要な指標になっている。自動車業界は、営業利益率5%がレッドラインである。これを切れば、満足な新車開発費も計上できないとされている。

 

中国は、BYD3〜5%、吉利3〜4%、長安汽車2〜3%、上海汽車1〜2%である。平均すると、補助金込みで2〜4%程度であり、補助金が削られれば、1〜2%に落ち込むか赤字化する企業が多数である。日本は、次の通である。トヨタは10〜12%(世界トップ級)、不調になる前のホンダは6〜8%。スズキ8〜10%、マツダ4〜6%で、平均が6〜10%(世界でも異例の高収益)である。日本車は、中国車の23倍の営業利益率である。

 

数字ばかり並んで恐縮である。データは、百万遍の言葉を費やすよりも事実を明快に伝えてくれる特性がある。中国EV産業が、補助金で成立していることは間違いない。補助金がなければ存続できない脆弱性を抱え込んでいる。中国EVトップのBYDが、25年に全上場企業を通じて2位の補助金受給企業である。1位は同業の長城汽車だ。24年は、BYD3位、長城汽車4位であった。25年に補助金ランキングでみると、EV2社は明らかに優遇されている。

 

煩雑にならぬように、BYDの補助金だけに絞って議論を進めたい。BYDは、補助金の営業利益に占める比率が、次のようになっている。25年が9%であり、24年は12%だ。これだけの補助金を受け取りながら、営業利益率は3~5%と低いのは、もともと低収益体質ということだ。この背景には、過剰投資問題が横たわっている。詳細は後で取り上げるが、フリーキャッシュフローの赤字問題と深く関わっている。

 

国内需要を超えた過剰投資は、最初から他国へ輸出することを前提にしている。これが、輸出先国の自動車産業を「潰す」という異例事態へ発展して貿易摩擦を招くのだ。これこそ、ダンピング輸出にほかならず、相手国から言えば「取締り対象」となろう。米国が、最初から中国EVを遮断していることは、安全保障以外にも自国雇用を守る意味から正当化できるのだ。中国EV輸出は、補助金を楯にした「経済侵略戦争」と言えるであろう。

 

BYD創業者の王伝福董事長は今年6月、充電技術の急速な進歩と海外販売の急拡大をテコに、5年以内にトヨタから世界首位の座を奪う計画を表明した。BYDの2025年の販売台数は450万台で、トヨタの1050万台を6割も下回っている。BYDは、中国国内の販売台数が低下しているが、ここまで強気の予測を発表するには、それなりの根拠があるはずだ。それが、高級車ブランド「騰勢(DENZA、デンザ)」を欧州市場へ投入する計画である。

 

BYD高級EVで欧州進出

BYDのDENZAは、ドイツ勢が長く君臨してきた欧州の高級車市場で顧客を獲得できるとみている。BYDは7月上旬、デンザの新型電動スーパーカー「Z」を発表した。英国では14万2900ポンド(約3100万円)から販売し、独ポルシェの「911」などに対抗するという。李氏は、BYDの超急速充電技術「フラッシュ充電」を武器に、参入の難しい市場にも足場を築けるとみている。

 

BYDは、27年までに欧州で超急速充電器3000基を展開するため、約20億ユーロ(約3700億円)を投じる。充電時間は5分以内で、70%給電が可能という。これを「売り」にして欧州自動車市場を一挙に攻略できると皮算用を弾いているのだ。ここには、大きな誤算がある。欧州の電力網は、1000Vが限度であることだ。BYDの超急速充電器は1500Vである。欧州が、この規格外れの高圧電力を認める可能性があるかだ。

(つづく)

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