日本製の積層セラミックコンデンサー(MLCC)が、中国で急騰しているという。中国は、AIサーバー産業のボトルネックとして、MLCCが日本に握られていることへの危機感を表明している。中国は、レアアースなど資源の取り込みに熱心だが、肝心の加工技術で日本に及ばないことを痛感している様子だ。昨今の中国「自画自賛」の報道からみると、珍しく謙虚な記事が登場した。
『レコードチャイナ』(8月2日付)は、「半導体の『特効薬』を日本が握る、中国はどう突破するのか?―中国メディア」と題する記事を掲載した。
AI(人工知能)サーバー向け部品需要の拡大を背景に、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の価格が急騰していると説明。中国・深センの華強北(電気街)や上海の電子市場では、年初と比べて価格が3~5倍となり、「1日ごと、時には1時間ごとに価格が変わる」とも言われる状況だという。
(1)「MLCCは極めて小さい電子部品だが、スマートフォン、自動車、サーバー、産業機器など、電子回路を備えた製品には欠かせない。特にAIサーバーでは、GPUやCPU、高帯域幅メモリ(HBM)の高性能化に伴い、大量のMLCCが必要となる。例えば、エヌビディアのGB200では1枚の基板に約6500個のMLCCが使われ、次世代のRubinでは約1万2000個に増える可能性があるという」
中国は、半導体装置で米国に封じられ、 チップ設計で台湾・米国に遅れ、材料でも日本に依存している。その構造的弱点をどう埋めるかという議論が、この記事の狙いである。
(2)「記事は、「MLCCの原理自体は単純だが、小型化、高容量化、高い信頼性を同時に実現することは容易ではない」と指摘。「この分野では日本企業が長年にわたり世界市場を主導してきた」とし、「2024年の世界シェアでは村田製作所が約32%、太陽誘電が約11%、TDKと京セラがそれぞれ約6%を占め、日本企業全体では約55%に達した。AIサーバー向けの高容量品では、日本企業が約70%のシェアを持つとされている」と説明した」
MLCCの世界シェアは、日本が55%(2024年)と過半を占める。AIサーバー向けの高容量品では、日本企業が約70%の圧倒的なシェアである。高技術を裏付けている。
(3)「日本企業が、優位を維持してきた理由として3点を挙げた。1点目は材料技術で、「MLCCの性能はチタン酸バリウムを中心とするセラミック材料の配合や粒子の大きさ、不純物管理、焼結条件などに左右される。日本企業は数十年にわたり用途に応じた材料技術を蓄積してきた」と解説した。2点目は精密な製造技術で、「MLCCは層を重ねることで容量を高めるが、層数が増え、厚みが薄くなるほど製造難度は上がる。TDKは約1000層の製品を実現している一方、中国メーカーの高容量品は約500層が中心だ」と説明した。3点目は顧客との長期的な関係で、「AIサーバーや自動車では数千個のMLCCが使用されるため、一部に不具合があれば製品全体に影響する。そのため、顧客は価格よりも品質や安定性を重視し、認証や実績のあるメーカーとの取引を継続する傾向が強い」とした」
日本企業の優位性を3点に整理している。
1)材料技術(チタン酸バリウムの粒度・不純物管理・焼結条件)
2)精密製造(層数1000層vs中国500層)
3)顧客との長期関係(品質・信頼性)
これらは単なる「技術差」ではなく、産業として積み上げた複合的な強みであり、短期では追いつけないという認識を示している。
(4)「記事は一方で、中国企業にも成長の機会はあるとし、「AIサーバーや新エネルギー車、衛星インターネット、低空経済など新たな需要の多くが中国市場で生まれている。電気自動車(EV)では1台当たり約1万8000個のMLCCが使われ、ガソリン車の約6倍に達する。現在、中国メーカーは世界市場で約5~10%のシェアを持ち、さらなる高性能品の開発を進めている」と強調した」
中国メーカーは、世界のMLCC市場で約5~10%のシェアを持っている。高性能製品ではない。
(5)「また、「中国は世界の希土類生産の約70%、精製では90%以上を占め、高性能MLCCに用いられる材料面で優位性を持つ」としつつも、「資源だけでは競争力にはならず、材料開発、製造技術、歩留まり向上、顧客認証など産業全体の強化が必要だ」と論じた」
資源だけでは競争力にはならず、産業全体の強化が必要だ としている。これは、中国が自国産業の弱点を率直に認めている部分で、中国メディアとしてはかなり踏み込んだ表現である。日本のMLCC支配は、偶然でなく構造的で長期的なもの、という中国側の認識を示している。


コメント
コメントする