米欧の外交関係者の間で、ひそかに話題になっていることがあるという。複数の外国首脳が訪中し、習近平国家主席と向き合った際、似たような場面があったのだ。和やかに進んでいた会談で、習氏がいきなり顔色を変え、日本問題を持ち出す。日本が再軍備に動き、地域の平和と安定を脅かしていると、まくしたてたというのである。一体、習氏に何が起っているのか。国内経済悪化で苦悩している上に、「日本問題」が持ち上がったからだ。習氏は、これで台湾侵攻が一段と困難になったという「怒り」であろう。
『日本経済新聞』(8月3日付)は、「中国の日本たたき、狙いは米国 勢力圏争い『第1列島線』で揺さぶり」と題する記事を掲載した。筆者は、日経コメンテーター秋田浩之氏である。
(1)「(習氏の怒りの)きっかけは昨年11月、台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁だ。中国が台湾に軍事行動を起こし、台湾を守ろうとした米軍にも攻撃が及んだ場合、日本の存立危機事態になり得ると語った。存立危機事態と認定されれば、日本は集団的自衛権を行使でき、自衛隊に防衛出動を命じられる。日本政府は従来の立場を変えるものではないと説明しているが、中国側は日本が武力介入を示唆したとみなし、反発を強めている」
日本が、集団的自衛権を行使することは、法律ができている以上、行使する前提で立法しているはずだ。こんなことは、素人でも分かる「理窟」である。それを「さも一大事、初めて聞く」ごとき振る舞いをしているのは、体裁が悪いことおびただしい。
(2)「それにしても、習氏の言動はかなり異例だ。外国首脳との複数の会談で、日本を名指しし、重ねて批判するのは尋常ではない。さらに中国は日本を標的にした外交宣伝を強めている。防衛力を高める日本を「新型軍国主義」と呼び、各国との会談や中国メディアを通じ、批判を繰り返す。自国民には日本への渡航自粛を呼びかけ、レアアース(希土類)を含むデュアルユース(軍民両用)品の対日輸出も規制した。6月から7月にかけて、中ロの爆撃機や軍艦を日本周辺で活動させるなど、軍事圧力も強めている」
中国が台湾侵攻へ踏み切れば、西側諸国は中国に対して民主主義を冒す「無法国家」として糾弾し、参戦も辞さないであろう。こういう事態は明白だ。「平時」には、和やかに対応しても、「戦時」になれば一変する。
(3)「日本はどう対応するのが有効か。それを知るには、なぜ中国側がここまで日本をたたくのかを解明する必要がある。日本の中国専門家や当局者らの分析をまとめると、3つの要因が考えられる。第一に、習氏による高市発言への反発が、中国共産党・政府の背を押している。習氏に忠誠心を示そうと、側近や各部門がこぞって日本に厳しい態度をとっている構図だ。例えば、こんな事例がある。王毅共産党政治局員兼外相が今春、東南アジアの要人と会食した際のことだ。現地の外交筋によれば、王氏は半分近くの時間を日本に費やした」
王外相は、自己保身で日本批判しているのだ。彼は、日本留学の経験と駐日日本大使を務めている。「日本派」とみられない工作をしているのだ。
(4)「第二は、台湾問題で各国をけん制するため、日本を「見せしめ」にする狙いだ。日本をたたき、台湾問題で中国を逆なですると大変な目に遭うという恐れを、各国にも抱かせる威圧戦術である。見せしめ外交は中国のお家芸だ。2018年、カナダが華為技術(ファーウェイ)副会長を拘束すると、中国はカナダ産の農産品などの輸入を制限した。20年には、新型コロナウイルスの起源調査を求めたオーストラリアに怒り、激しい経済制裁を浴びせた」
日本が、中国の「見せしめ」になるはずがない。そんなちっぽけな存在でないからだ。中国は必ず将来、技術で日本へ頭を下げてくる時期がくる。その時日本は、「恩讐を超えて」とは行かないだろう。追い返さなければならない。因果応報である。
(5)「これだけでは新型軍国主義のレッテルまで貼り、日本を揺さぶる理由としては不十分だ。そこで浮かぶのが、第三に米国との秩序争いをにらんだ長期戦略だ。習政権は米国主導の秩序をあからさまに批判し、それに対抗する目標を掲げてきた。近年、人類運命共同体やグローバル安全保障イニシアチブといった秩序構想を唱え、中国主導の国際システムを広げようとしている。この戦略を進めるうえでまず邪魔になるのが、米国と同盟を強め続ける日本の動きだ。しかも日本は中国が最低防衛ラインとみなす「第1列島線」上にある。日本列島は台湾やフィリピンと弧を描くように連なり、中国の海洋進出を制約する位置にある。習政権からみれば、日本は中国勢力圏の拡大を阻む「壁」にほかならない」
米国はすでに、第一列島線防衛で日本・豪州・フィリピンを結集させている。韓国が、ふらふらしている状態で「はぐれカラス」である。米軍は、韓国から中国本土を攻撃する準備にも入っている。中国は、このように完全な袋小路になっている。日本への怒りは、日本が米国と一体になっていることに向けられている。


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