レアアースなどの重要鉱物特恵市場は、8月1日に発足したはずですが、どこを見てもそれらしい情報は出ていません。唯一のニュースは、米国が8月7日、国務省主催のラウンドテーブルでトランプ大統領出席の下で、国務省主催のラウンドテーブルで、①重要鉱物の国内生産・加工能力の拡大、②中国依存の軽減、③同盟国との協力強化を議論するという『ロイター』ニュースだけです。これらの①、②、③を繋げると、米国が重要鉱物特恵市場へどう取組むかを、トランプ氏出席の下で議論するのでしょう。
米国は、レアアースで中国にキリキリ舞をさせられただけに、重要鉱物特恵市場へ大きな期待がかかっています。レアアース問題さへ解決できれば、対中外交における障害は消えます。この重要鉱物特恵市場は、日米合作です。日本が米国へアイデアを持ち込み実現したとされています。事実上、日本が生みの親と言えるでしょう。
日本は2010年、中国からレアアースで輸出規制を最初に受けた国です。以来16年、重要鉱物調達が日本の主要政策の一つになっています。それだけに、日本は「筋金入り」の強靱な政策を行ってきました。リサイクル(都市鉱山)に関わる化学的精錬法の開発で世界をリードするまでになっています。資源商社は、世界中に触手を伸ばしています。さらに、中国の「報復手段」も研究ずみです。こういう日本の「対中ノウハウ」が、重要鉱物特恵市場の仕組みに生かされています。
重要鉱物特恵市場は、完全な「隠密行動」になっています。参加国は54ヶ国と発表されていますが、個別の参加国名は伏せられています。これは、中国が妨害することを回避する目的とされています。「地下」に潜って、需要国と供給国が相対で取引するのです。こういう形にすると、中国はお手上げです。経済制裁を加えたくてできなくなるのです。
重要鉱物特恵市場の実態は 「参加国間の優先取引+最低保証価格の協調」です。価格フロア(最低価格)は公表されますが、取引量・取引相手国は非公表です。これは、参加国リストが非公表であるからです。ただし、内部では情報が共有されています。こうして、外から見ると「価格だけ見える覆面市場」となります。
中国にとっては、不気味な存在になります。これまで、鉱石を全て中国へ売却してきた国が、日本の化学的精錬法を使って自前で精錬を行えば、中国にとってそれだけ「穴」が空きます。この動きが広がれば、中国のシェアは低下していくのです。中国にとっては、確実に影響が出るものの相対取引ですので、実態が掴めません。どの国がどれだけ買ったか、どの鉱山からどれだけ供給されたか、どの国が不足しているか。こういった情報が一切、外部へは出てきません。
これら情報は、日本の資源商社が担うでしょう。双日、豊田通商、三井物産、住友商事などがアンテナ役になって参加国同士をつなげる役になります。つまり、日本が重要鉱物特恵市場の裏方として、貴重な情報を一元的に扱えるメリットを受けられます。これは、日本が資源を持たない「資源大国」という不思議な地位へ押し上げられることになります。
この裏には、日本が世界最大のリサイクル国家という事実もあります。いわゆる、「都市鉱山」と言われるものです。廃家電や不要の機械などから重要鉱物をリサイクルさせる仕組みが出来上がっているのです。金銀銅から始まって、レアアースなどあらゆる鉱物がリサイクル対象になっています。日本国内に眠る金の量は、約6800トンと推計されています。これは、世界の年間金産出量の約2倍で、南アフリカの金鉱山に匹敵の「巨大鉱床」と羨望の的になっているのです。
金だけでも、これだけの量があります。ましてや、レアアースはお手のものです。日本の都市鉱山が今や、隠れたレアアース供給国という役割を果す時代となっています。重要鉱物特恵市場にとって、情報を含めた日本の存在が欠かせない時代へ移っているのです。


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