中国は、人型ロボットへ邁進している。「跳ねて踊って走って」と人間の仕草をなぞっている。これが、人間ロボットのあるべき姿とみているからだ。この結果、人型ロボットの「形態特許」を大量に取得しているという。形態特許とは、「人間そっくりの外形・骨格・関節構造」そのもの特許である。顔や頭の形、腕・脚の比率、関節の位置、骨格フレーム、手指の形状、人間に似せたシルエットなど、「筐体の形」に関する特許である。
この形態特許は、果たして有効だろうか。日本で目下、開発中の「分散型フィジカルAI」の人型ロボットが実用化されれば、「形態特許」なるものはオモチャ扱いになる。ロボットとしての「実力」がないからだ。こういう見た目だけの人型ロボットは、サービス業務しか使われ先がないであろう。
『レコードチャイナ』(8月4日付)は、「中国は人型ロボット関連特許の大部分を保有、米企業はライセンス供与を強いられる―米メディア」と題する記事を掲載した。
中国メディア『観察者網』によると、米フォーブスはこのほど、「中国は人型ロボットに関する特許の大部分を保有しており、米企業はライセンス供与を強いられる可能性も」とする記事を掲載した。
(1)「記事によると、米解析会社レクシスネクシスは過去6年間のロボット関連特許について分析した最新の報告書で、中国は人型ロボット関連の特許、特に「形態(本体そのもの)」に関する特許を圧倒的多数保有しており、これは同国の戦略的な産業政策と合致しているとした一方、米国の特許は個々の質や強さの面で優れており、形態に関する特許ポートフォリオの価値では件数こそ少ないものの2位につけていると述べた」
人型ロボットの本領は、「見た目」が人間そっくりであることではない。人間に代って労働し、協業することである。それは、日本が開発中の分散型「フィジカルAI」によってだけなし得ることだ。人間に似せた「整形」の競争ではない。「分散型フィジカルAI」は、ロボット単体で完結せず、ネットワークで協調して動く世界である。
具体的には、1体の人型ロボットが万能である必要がない。複数のロボット・機械・インフラが連携して作業することである。形態(外形)ではなく、素材・精錬・モーター・センサー・AI制御・通信が価値の中心になるであろう。筐体の形は、人型ロボットの中心ではなくなる。
(2)「分析では、歩行し作業を行う人型ロボットに不可欠な3つの技術である、インタラクションシステム、形態、制御・計画システムに関連する2万6000件超の特許ファミリーについて調査した。人型ロボットの形態に関する特許において、中国の世界シェアは現在73%に達しており、他国を大きく引き離している。2位は韓国で11%、3位は日本で7%、米国はわずか5%で4位にとどまっている。特許の価値を考慮に入れると数値は多少変動し、中国のシェアは63%となる一方、米国は11%、日本は10%となる」
人間らしく見せる特許が、どれだけ積み重なっても生産性向上に寄与しない。そういう人型ロボットは、単なる「見世物」でしかないであろう。
(3)「過去10年間で、中国の特許出願件数は、インタラクションシステム分野で約2倍、形態分野で約2.5倍、制御・計画アーキテクチャ分野では約5倍へと急増した。特に形態分野での出願は2023年から急増しており、こうした一連の動きは中国政府の産業政策と見事に合致している。中国はロボット工学を戦略的分野に位置付け、人型ロボットに不可欠な要素技術の開発を優先的に進めてきた」
分散型「フィジカルAI」による人型ロボットの価値は、「素材・精錬・制御」に移る。ロボットの本質は筐体でなく、Nd・Dy磁石(モーター)、高純度材料、センサー、半導体、AI制御、通信ネットワークである。これらは、日本の独壇場である。形態特許は「外形」なので、素材・精錬・制御が覇権を握る世界では、価値が大きく落ちるであろう。「整形美人ロボット」よりも「高能率ロボット」が選ばれるはずだ。
(4)「米国は中国製ロボット、ひいてはあらゆる外国製ロボットを事実上、米国市場から締め出そうとしている。この動きは、35年までに人型ロボット市場が約380億ドル(約5兆9660億円)規模になるというゴールドマン・サックスの予測を塗り替える可能性がある。しかし、特許権は国ごとに成立するものであり、輸入規制の影響を受けない。人型ロボットの形態に関連する特許において中国が73%ものシェアを占めていることは、米国のメーカーが中国の知的財産を回避する設計を強いられたり、ライセンス契約を結んだりすることになることを意味している」
要するに、人間に似せた「マネキン・ロボット」特許が有効であるのは、サービス分野だけであろう。だが、逆にそれが嫌われる分野もある。人間は人間で、人型ロボットとは異質であるからだ。人間っぽく見せることが、どれだけの価値があるのか。人それぞれであろう。


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