ベセント米財務長官は4日、トランプ政権は日本の通貨安定に向けた取り組みを支援するため、「必要なことは何でも行う」と述べた。日米両政府は約40年ぶりの円安・ドル高を食い止めるため、7月31日に外国為替市場で協調介入を実施。ベセント長官はCNBCのインタビューで、「米経済や米納税者に利益をもたらす形での日本支援へ必要なことは何でも行う」と述べた。異常円安は、米国経済へも負の影響を与える状態まで高まっていたのだ。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月4日付)は、「米財務省は円を救えるか」と題する社説を掲載した。
米財務省はここ数日、円相場を安定させるために、日本当局と連携して異例の協調為替介入を実施した。両者は大規模な円買いを行い、その規模は何百億ドルにも相当する可能性が高い。米政府は、日本政府が保有する米国債を担保としてドル資金を貸し出す信用枠も提供する。
(1)「この措置は、日本が米国債を売却する必要なしに外為市場に介入する余地を拡大するのが狙いだ。米国債の売却は本来なら米金利の押し上げ要因となる。日本発の急激な為替変動が世界の金融市場全体の大変動を引き起こすとの懸念は、米財務省が介入に加わる主な理由となっている。この懸念は正当なものだ。週末の介入は、当局が最近の円急落の動きを反転できたという点で「効果があった」。3日の円相場は1ドル=156円近辺と、先週付けた40年ぶり安値の164円から大幅に持ち直した」
石破政権時代は、ここまで円安にならなかった。むしろ円安是正局面に向かっていた。それが、高市政権で「釣瓶落とし」の円安である。問題の発端は、高市氏の為替市場を無視した発言にある。投機筋をまんまと「勝たせて」しまい、円安にともなう国内物価上昇が、国民の懐を直撃している。
(2)「重要なのは、介入の効果が長続きすると思っている者が一人もいないことだ。今回の協調介入による力の誇示は投機筋の動きを当面抑制するだろう。だが、投資家が円を売っていたのには複数の理由があり、それらはいずれも解消されていない。明確な理由の一つは財政政策だ。日本政府の債務残高は国内総生産(GDP)比230%に達している。高市早苗首相は今春、過去最大規模となる122兆3000億円の2026年度予算を成立させた。さらに、中東で戦争が続く中、エネルギー支援に向けた数十億ドル規模の補正予算も組んだ。人口の高齢化や慢性的な経済停滞によって日本政府の債務返済能力には疑問が生じている。この懸念はその他の条件が変わらない場合に、日本の資産の需要を抑え、ひいては円需要の重荷となる」
財政規律には、一定の配慮が必要である。ドイツのような、がんじがらめの「財政規律第一」でなくても、円安に伴う「交易条件悪化」が国民生活を苦しめるというマクロ的視点は不可欠である。高市氏に、この視点が足りなかったのは残念である。これが、日米の為替介入という事態を招いた最大理由である。
(3)「日本銀行の責任も大きい。ここ数年、金融政策の正常化に関する議論が活発化していたにもかかわらず、日本の短期政策金利は1%にとどまっている。インフレ調整後の実質金利はマイナスであり、これは主要中央銀行としては異例だ。日銀がいつ利上げを再開し(投資家は9月の可能性があるとみている)、どのようなペースで、どの水準まで進めるかは不明だ。一方で日銀は月間2兆5000億円の資産買い入れを通じて量的緩和を継続する」
日本銀行は、為替相場は金融政策の目的でないと、あたかも学会発表のような暢気な発言を繰り返してきた。学者出身である日銀総裁の限界である。円安=物価高=金融政策の範疇である。遅まきながら、日銀の「展望」でようやく為替安定を金融政策目標に掲げた。
(4)「異常な低金利が日本経済を圧迫してきたという証拠がここ数十年間積み上がってきたにもかかわらず、日銀当局者および日銀を政治的に批判する勢力(高市氏も含む)は、経済にはまだ金融政策による支援が必要だと考えているようだ。日本政府はまた、国債市場への金融支援を撤回すれば金融パニックが起こりかねないと懸念している。後者の懸念は正しいかもしれない。しかし、当局は為替市場の動揺を引き起こしたことにより、一つのパニックを別のパニックと交換した形だ。当局は債券市場に混乱をもたらす代わりに政治的に有害なインフレをあおり、そのインフレは今春のエネルギーショックで悪化した。変動相場制の下では国内のインフレが「マクロ経済の調整メカニズム」の一つとなることを、誰も日本の有権者に教えなかった」
日本政府は、現在まで「デフレ脱却宣言」しないままだ。これが、政策意識の転換を遅らせている主因であろう。区切りができないから、過去の政策意図を引きずっているのだ。
(5)「より優れた円の救済策には、政府支出の削減と、経済成長促進のための新たな改革が含まれる。それは日本をより魅力的な投資先に変えるためのものだ。日銀が金融政策の正常化に向けてもっと積極的に動くことも必要だろう。朗報は、スコット・ベッセント長官が率いる米財務省が、日本政府と協力して市場の安定を図る決意を示していることだ。こうした国際協力は望ましいが、日本政府自身が問題解決に本気で取り組むことの代わりにはならない。それなくしては、世界のいかなる通貨スワップ協定も円を救済できないだろう」
日本政府は、自らの意思で異常円安を食止められず、投機筋に「エサ」を蒔いてきた事実を反省すべきだ。米国の力を借りなければ、「為替管理」ができなかったことは、政策の失敗として深く肝に銘じるべきであろう。


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