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米中央情報局(CIA)ラトクリフ長官が8月25日、モスクワを電撃訪問。ロシアのプーチン大統領の側近らに対して、最後通告を行った。ウクライナによる長距離ドローン攻撃拡大などにより、ロシアが戦争に勝つのは不可能であり、侵攻をやめてウクライナとの和平交渉に応じるよう求めたからだ。ラトクリフ長官は、プーチン大統領がこれに応じなければ、アメリカはウクライナへの本格的な軍事支援を行うとの通告も行った。

 

『東洋経済オンライン』(8月30日付)は、「『ロシアは勝てない』CIA長官がモスクワ電撃訪問でプーチンに突きつけた〈侵攻停止〉と〈和平交渉開始〉」と題する記事を掲載した。筆者は、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長の吉田成之氏である。

 

トランプ政権が戦局に関して、勝つ見込みがないとの評価をロシアに伝え、侵攻停止と和平交渉開始に応じるよう要求を突き付けたのは初めてである。今後の焦点は、この驚くようなラトクリフ長官の通告に対し、プーチン大統領がどのように対応するか、だ。しかし、ロシア軍はラトクリフ訪ロ直後の8月28日、キーウに対し大規模な攻撃を実施。数十人規模の死者を出すなど、侵攻をエスカレートさせており、現時点で和平に応じるような構えは示していない。

 

(1)「ラトクリフ長官が8月25日にモスクワで会談したのは、情報機関のツートップであるロシア対外情報局(SVR)のナルイシキン長官と、連邦保安局(FSB)のボルトニコフ長官。いずれもプーチン大統領の側近だ。会談は個別に行われた。事情に詳しい関係筋が筆者に明らかにしたところによると、ラトクリフ長官は以下のような趣旨の指摘を両長官に行ったという。「ウクライナのドローンによる長距離攻撃などにより、ロシアは大きなダメージを受けており、もうロシアは勝てない。ゲラシモフ参謀総長はじめ軍部は戦況について、プーチンに正しい情報を伝えていないのだろう。だから、君たちが伝えろ。もしプーチンが戦争終結に応じるなら、和平に向けた協議をしよう。こちらも悪いようにはしない。しかし、もし協議を拒否し、侵攻を続けるなら、トランプはウクライナ側に明確に付いて武器を供与する」と指摘」

 

米国は、ロシアへウクライナ戦争終結への「最後通告」を行った。米国が、ウクライナへ長距離ミサイル供与の可能性を示唆した。これは、ロシアにとって最悪事態になる。クリミア半島が奪回範囲へはいるからだ。

 

(2)「この発言が意味するところは何か。まず、プーチン大統領が侵攻を続ければ、今後トランプ政権は、相互連携を強めているウクライナと欧州の輪に明確に加わるということだ。つまり、ウクライナ・欧州+アメリカに対し、中国、北朝鮮がロシアを支援するとの対峙の構図が明確になる。一方で、和平交渉に応じれば、プーチン大統領に対し、悪いようにはしないとの発言の意味ははっきりしないが、和平実現後も大統領としてのプーチン大統領の立場を尊重する、といった趣旨である可能性もある」

 

ラトクリフ長官が、「(ロシアが)和平交渉に応じれば、(米国は)プーチン大統領に対し、悪いようにはしない」との発言の意味は、停戦後でロシア側の意向も参酌しようということだ。焦点は、クリミア半島の帰属問題であろう。

 

(3)「トランプ大統領にとって、今回の突然の路線変更の背景には、今年11月のアメリカ中間選挙をにらんだ、選挙戦略があることは間違いないだろう。今年2月に始めたイラン戦争がアメリカの思惑どおり運ばず、出口も見えない中、ホワイトハウスとしては、中間選挙前に、ウクライナ侵攻をめぐる停戦を実現し、貴重な外交成果をアピールしたいところだ。一方のウクライナは、今回のラトクリフ長官の訪問結果にもろ手を上げて歓迎した。ゼレンスキー大統領は8月28日、こう述べた。「今後何をすべきか、また何がなされるべきかについて、アメリカは非常に現実に沿った見方を示してくれた」とした」

 

米国は、イランと交戦中の身である。ロシアに停戦させて米国の「平和希求方針」をアッピールするのであろう。

 

(4)「これまで、国力や兵力に勝るロシアがいずれ勝つだろうとの見方を基に、ロシア寄りの仲介工作をしてきたトランプ大統領は今年夏以降、徐々にウクライナ寄りに姿勢を変化させてきた。それがついに、ウクライナの軍事的優位を前提にした和平仲介を行うという、ホワイトハウスの大きな戦略転換へ進展した。今回のデブリーフ(会談に関する正式報告)により、ゼレンスキー大統領はその手応えを明確に感じたのだろう」

 

ウクライナの科学力が、ロシアを追い込んだというのは象徴的である。こうなると、ロシアの武器は、一段と売り先に困難を来すであろう。敗北国家の武器では、買い手がなくなるからだ。ロシアの失ったものは実に大きいものがある。習近平氏は、よくこの辺を学ぶべきであろう。

 

(5)「ウクライナは、年末までの停戦実現という目標を掲げている。今回の米ロ協議でのラトクリフ発言は、その実現に向け、確実に追い風になりそうだ。長距離ドローン攻撃の拡大に加え、秋には完成したばかりの初の弾道ミサイルを実戦配備して、ロシア全土の石油精製施設や軍事関連施設への攻撃をさらに拡大する方針だ。これが狙い通りにいけば、今年末までに、プーチン大統領が音を上げる形で、停戦交渉に応じざるをえなくなる状況を作ることが可能と、ウクライナ側は見ていた。今回のホワイトハウスの戦略転換が、これに大きな弾みを与えると期待しているのは間違いないだろう」

 

明らかに、時間はウクライナに味方している。秋にはウクライナ初の弾道ミサイルが、実戦配備される。これに米国製が加われば、ロシアの劣勢が明らかになる。休戦する潮時が来た。