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日本政府は、包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)の常設事務局を誘致する方針である。11月の関係閣僚会合をにらんで提起する構えだ。加盟申請が相次ぐ状況で、日本が主導して審査を円滑にし、枠組みの拡大をめざすもの。日本の常設事務局案が力である理由は、次の点にある。

 

CPTPPの「事実上の議長国」は日本である。英国加盟を主導したことや、新規加盟審査の枠組みを設計したのも日本である。こういう事情で、ASEAN諸国からの信頼が厚い結果である。裏で、非加盟国の米国が日本主導を支持していることもある。米同盟国が多数、CPTPPへ加盟しているので、米国はいつか自らも加盟時期が来るという「可能性」を残しておきたいのであろう。

 

『日本経済新聞 電子版』(8月31日付)は、「日本にCPTPP常設事務局、政府提案へ 枠組み拡大の主導狙う」と題する記事を掲載した。

 

CPTPPの加盟12カ国は、11月にベトナムで関係閣僚会合を開く。早ければ常設事務局の設置やその役割を決める可能性がある。事務局の構想は2024年ごろに持ち上がり、25年の閣僚会合で「支援ユニット」を設けることで大筋合意した。

 

(1)「日本は、この時期を捉えて日本への事務局誘致を提起する方針だ。経済産業省や外務省などは27年度予算の概算要求に関連経費を盛り込んだ。同年度からオフィスを借りるといった用途の資金確保を想定している。高市早苗首相は5月、ハノイで講演し「CPTPPの拡充を推進する」と言明した。トランプ米政権が多国間の貿易枠組みに背を向けるものの、日本はCPTPPを通商政策の柱にしている。自由貿易圏の拡大、強靱(きょうじん)なサプライチェーン(供給網)づくりなどの協力を主導する意図がある。常設事務局を国内に誘致できれば意思疎通や人材交流を円滑に進めやすい」

 

日本が事務局を置くことは、「アジア太平洋経済の制度設計者」になるという意味である。

新規加盟審査・ルール改定・紛争処理・基準設定などすべてを日本が握ることになる。つまり、日本がアジアの「ゲートキーパー」であり、日本がアジアの「ルールメーカー」になり、日本がアジア経済の「制度の中心」になることだ。中国が、最も嫌がる構造であるが、制度は一度できると覆せないものだ。こうして、中国はアジア経済において「部外者」の位置に置かれる。

 

(2)「CPTPPの拡充には主に3つの軸があり、日本政府は事務局の機能が重要になるとみる。一つは加盟国の早期拡大だ。加盟申請が相次ぎ、各国・地域の貿易慣行がCPTPPの原則と一致するかといった調整が増える公算が大きい。CPTPPは24年に英国が加わり、12カ国になった。英国との交渉は日本が主導した。5月にはペルー政府がコスタリカの加盟に大筋で合意したと発表した」

 

加盟国数は、間もなくコスタリカが加わって13ヶ国になる。さらに、インドネシア、フィリピン、UAE(アラブ首長国連邦)との交渉が始まる。常設事務局が必要になる背景だ。

 

(3)「足元で6月にインドネシア、フィリピン、アラブ首長国連邦(UAE)と「予備的議論」を始めると決まった。カンボジアやアルゼンチンなど新たに加盟申請する国もあり、韓国の李在明(イ・ジェミョン)政権も関心を示す。加盟をめざす国ごとに交渉の窓口役となる国を決めている。特に新興国が交渉の窓口になる場合、交渉のノウハウや人手の面でサポートが必要との指摘がある。事務局があれば包括的に支援しながら、加盟国内の意見集約もしやすい」

 

加盟希望国との交渉窓口は、そのたびごとに変るので、サポート役として常設事務局の支援が必要となる。事務手続き上の問題解決である。

 

(4)「2つ目の軸には、CPTPP協定の改定を調整する役割がある。25年にオーストラリアで開いた関係閣僚会合で強靱な供給網づくりを改定対象にすると決めた。重要物資の供給が止まるケースなどを想定して協力体制を整える方針だ。加盟国のカナダや豪州、チリなどは重要鉱物やエネルギーの生産国で、協力を進められれば有事に対応しやすい。中国からのレアアース(希土類)の調達などで供給網に不安を抱える日本は早期の協力に期待する。協定改定の対象としては電子商取引(EC)、税関や貿易の円滑化なども視野に入れる」

 

今後は、レアアースや越境EC問題で共同歩調を取る必要性も出てくるだろう。こうした場合、常設事務局があれば意見の集約化がスムーズに進むであろう。


(5)「3つ目はほかの多国間枠組みとの対話だ。CPTPPは25年に欧州連合(EU)や東南アジア諸国連合(ASEAN)と初の対話を開いた。自由貿易の拡大や供給網の構築で米国に依存しない協力を進める」

 

CPTPPは今後、EUやASEANとの定期的協議も必要となろう。常設事務局が、こうした問題に対応可能になる。