中国ではSNS上で時ならぬ、「対日貿易勝利論」で盛り上がっているという。2000年から現在に至るまで、日本の貿易全体に占める対中貿易割合が、10%から20%へ上昇して日本が中国依存度を深めているとしている。基準年の2000年は、中国がWTO(世界貿易機関)へ加盟した年だ。このゼロ同然の年を尺度に使っている。日本の対中貿易依存度が高まるのはごく自然なことだ。
一方、この間の中国における対日貿易依存度は、17.5%から現在では5%に低下している。この結果、中国は日本への依存度が下がったので、日本が危険な状態だと結論づけ、ネット民は大喝采しているのだ。これは、中国が、国内で代替生産して結果である。それでも、5%は日本から輸入しなければならい製品である。例えば、半導体の素材である。日本が供給ストップすれば、中国の半導体生産が止るのだ。高速鉄道車両のベアリングも不可欠である。5%は、中国の「死命」を制する物ばかりだ。
日本が、中国から輸入している物は、国内で生産するより「安価」であるからだ。レアアースも中国からの輸入から他国へ切替えたり、国内のリサイクルや精錬でカバーしている。仮に、日中が「真剣勝負」に出て日本が対中輸出をすべて止めたら、中国半導体は「即死状態」になる。貿易の問題は、量でなく質が勝負なのだ。ネット民は、こういう理窟が分からないのであろう。
中国ネット民は、日中貿易構造など知る由もない。だから、ブロガーによって簡単に扇動されている。この状態は、ちょうど100年前、魯迅が書いた小説である『阿Q正伝』を彷彿とさせる。事情を知らない阿Qが、「精神的勝利」を唱えるのと寸分違わない状況である。中国の若者は、こういう「阿Q二世」と大学(短大を含む)卒で知識を治めた層の二つに分かれている。後者の人達が、リピーターになって日本を頻繁に訪れているグループである。
『レコードチャイナ』(9月1日付)は、「日中貿易データから『日本は危険な状況』と指摘=中国ネット『日本の製造業が崩壊すれば…』」と題する記事を掲載した。
(1)「SNS『微博』(ウェイボー)で120万超のフォロワーを持つブロガーは8月30日、「日本側から見ると、2000年から現在に至るまで、貿易全体に占める対中貿易の割合は10%から上昇を続けて20%にまで達している。日中関係はあまり良くないものの、日本の対外貿易において中国は存在感を高め続けており、日本にとって最大の貿易相手国となっている」と指摘した。一方で、「中国側から見ると、日本との貿易額が中国の貿易全体に占める割合は(2000年の)17.5%から低下を続けて(現在では)5%にまで落ち込んでいる。また、ASEANの貿易に占める日本の割合も下落している」とし、「これだけを見ても、日本が現在どれほど危険な状況に置かれているのかが分かる」と論じた」
ASEANは、日本企業が現地生産に切替えているから、日本からの輸出はそれだけ減少している。ただ、それだけの話だ。
(2)「この投稿に、中国のネットユーザーからは「これは先日訪中した日本の超党派議員団のメンバーも言っていた。『今は日本にとって中国は重要だが、中国にとって日本はそれほど重要ではない』ってね」「さらに恐ろしいのは、この傾向には止まる兆しが見られないこと。日本人は本当に自分をだますのが得意だとしか言いようがない」「以前は苦しかった。中国の貿易が拡大すればするほど、日本のサプライヤーから購入する部品も増えていた。しかし今は国産代替が進んでいる」といった声が上がった」
日本の対中輸出が減ったのは、中国が強引に日本企業へ技術開示させて「内製化」して面も大きい。改革開放後、日本技術が移植されたことを忘れているのだ。
(3)「また、「日中関係は悪いが日本企業はなお、中国市場に投資をしている」「円が暴落し、ホルムズ海峡の封鎖によってエネルギー危機が生じ、貿易や輸出も全面的に低迷・縮小。こうした重圧が日本を息もできないほど苦しめている。ただ、私は喜んでそれを見ているけどね」「日本の製造業が崩壊すれば、残るのは木材の販売とサービス業くらい。しかし、少子化がこれほど深刻な状況では、将来的にはサービス業も東南アジアに負けるだろう」といったコメントも寄せられた」だ。
100年前の阿Qが言いそうな発言が、オンパレードである。いわゆる、「精神的勝利法」という中国人独特の振る舞いだ。これが、中国大衆の素顔である。
(4)「このほか、「中国のさまざまな産業チェーンが高度化するにつれ、世界のその他の工業国は中国企業との直接的な競争に直面している」「日本の貿易の主要相手国はすでに米国に変わりつつある。企業の利益も完全に米国頼み」「日本が没落すればASEANのシェアもわれわれが食える」「問題は(量ではなく)中国が日本から買っているものの代替が可能なのかということ」といった意見も見られた」
中国は現在、深刻な外貨事情の悪化に悩んでいる。中国企業が、輸入に当たって開設する「信用状」(LC)は、海外の金融機関から引き受けを忌避されている。これは、表面的な外貨準備高でなく、中国が自由に使える「実質外貨」が、対名目GDP比で5%を割っているからだ。この事態は、24年末か25年初めに陥っておりその後、改善されないままである。最近、中国の原油輸入量が急減した理由は、海外金融機関からLC開設が認められなかった結果である。こういう重大事態を知らずに、ネット民ははしゃいでいる。「火口のダンス」に等しい振る舞いである。「阿Q二世」は、今も後を絶たないのだ。


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