外食大手FOOD&LIFE
COMPANIES(F&LC)は、米国で初となる回転ずし「スシロー」をニューヨーク市で10月に開店する。鮮魚の握りなどを中心とした正統派のすしを1皿5ドル(約800円)からと割安に提供する。食材は、三重県の専用養殖場から直輸入する。食材にとっては、行き先がNYタイムズスクエアという、世界で最も「象徴性の高い消費空間」である。最初から輸出前提で設計された養殖が動き始めるという点で、日本水産業が「グローバル一次産業」へと軸足を移す第一歩となる。
『日本経済新聞』(9月2日付)は、「『スシロー』NY、一皿800円 タイムズスクエア 来月、回転ずし出店」と題する記事を掲載した。
観光客が多く訪れるNYマンハッタン中心部タイムズスクエアの繁華街に、3フロアの店舗を開く。店内には回転すしカウンターと個室席を設ける。日本の最新店舗と同様、客席の大型スクリーンから注文するシステムも導入する。
(1)「メニュー構成はサーモンやマグロ、エビ、ホタテなどのベーシックな握りが1皿2貫5ドル。すしは5、6、8、10ドルの4つの価格帯を設け、日本と同様に商品によって皿の色を変えるシステムも導入する。日本の物価感覚では高価だが、チップを不要とすることで米国では一般のすし店に比べ安価だ。F&LCは中国・台湾や東南アジアを中心に海外展開を進めてきた。2026年9月期通期の業績見通しでは、海外売上高比率は前期比5ポイント増の35%に達する」
ネタが、「日本直送」が大きな特色だ。日本で寿司の味を思えた顧客には、NYで「日本の味」がそのまま楽しめるとして人気を集めるであろう。
(2)「米国では24年、日本で「杉玉」として展開する業態のすし店をボストンに開いた。回転ずしではない業態で市場調査を兼ねていた。今回は主力の「スシロー」としての出店で、本格進出と位置づける。米国で和食人気は高まる一方だ。調査会社IBISワールドによると、25年時点の和食店の数は約2万2000店と中華料理店に迫る勢いだ。外食の主要ジャンルとなり、焼き肉やラーメンなど業態も多様化している」
スシローは24年、すし店をボストンで開いて市場感覚を磨いている。米国人の趣向を把握しているのであろう。
(3)「すし業態で米国で先行するのはライバルのくら寿司だ。アジア進出では「スシロー」に後れをとるが、米国内店舗数は8月末時点で95店近く、開業予定を加えると100店を超す。米国子会社がナスダック市場に上場しており、一時時価総額が本体を上回った。店舗面積あたり収益率や店舗数の増加率は、ハンバーガーチェーンのシェイク・シャックなどと並び、米外食業界でもトップクラスだ。トランプ米大統領がくら寿司の米国会社株を保有していることも話題になった」
くら寿司は、米国型チェーンモデルへの完全適応である。店舗数は、95店超(2026年)で、ナスダック上場済みで強い資本調達力を持っている。店舗面積あたり収益率が、米外食トップクラスになっている。トランプ大統領が株を保有したことで話題性も獲得。メニューは、米国人の嗜好に合わせて「ローカライズ」が進んでいる。ロール系、揚げ物、ファミリー層向けの構成だ。「日本のすしチェーン」ではなく、「米国のすしチェーン」に近い。スシローとは、異なる業態になっている。
(4)「F&LCの山本雅啓社長は31日、記者団に出店戦略について「東海岸を中心に出店していく」と語った。目標店舗数については明言しなかったが「それなりの数を狙っていきたい」とも述べた。ニューヨークを出店地に選んだ理由について、人口の多さや都市としての情報発信力を挙げた。まずはブランド認知を広げる戦略だ。メニューでも日本と同様の正統派のすしを「気軽な価格で提供する」姿勢を打ち出す。三重県の専用養殖場から冷蔵輸送したハマチなど、アジア進出で構築したサプライチェーン(供給網)を活用し本格的な海鮮ネタを世界中から集めた」
スシローNYが軌道に乗ると、同じ品質・同じ物流でボストン、ワシントンDC、シカゴなどに展開する可能性が考えられる。それに合わせて、三重(ハマチ)、愛媛(真鯛)、鹿児島(ブリ)、北海道(ホタテ)などが「米国向け専用ライン」を持つようになるであろう。日本の養殖業が、「米国チェーン向けの安定供給源」として認知されるという期待が膨らむ。
(5)「米外食業界に詳しいノースコースト・リサーチのジム・サンダーソン氏は、米国土の広さや、F&LCが東海岸から店舗展開する姿勢を見せていることから「今後3~5年ほどはくら寿司と互いに脅威になることはない」とみている」
スシローとくら寿司では、ビジネスモデルが全く異なる。競合しないのだ。
1) スシローNY進出は、日本の水産業→物流→食文化輸出→米国市場構造という「縦の一本線」をつくる国家的プロジェクトに近い。
2)くら寿司は逆に、米国市場→チェーン化→資本市場→店舗拡大→ローカライズという「横の拡張線」で戦っている。
この「縦の線(スシロー)」と「横の線(くら寿司)」が、米国ですれ違いながら成長する構図である。混じり合うことなく、それぞれの舞台で成長を目指すのであろう。


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