習近平氏は、巧妙に自らの国家主席4期目を実現させるべく準備を始めています。決め手は、戦争への危機感を煽って準備態勢を整えさせ、権力を掌中に握り続けることです。だが、戦争を始めるわけではありません。開戦すれば、敗北を喫することを認識しています。南米のベネズエラや中東のイランが、米軍の急襲によって中国の提供した防衛網がいとも簡単に突破されたからです。中国の武器では、初期の戦いに弱いのです。
仮に、習氏が台湾侵攻を決意しても、その瞬間から米情報網の一斉探索の網に引っかかります。それは逐一、米軍から公表され事前に潜水艦部隊が監視体制に入るでしょう。ウクライナ侵攻の際、米軍がロシア軍の動向を全て公表した状況の再現です。世界中が、中国封じ込めへ動き出します。こうして、習氏は開戦前から窮地に立たされます。
中国国内でも反対論が出てくるでしょう。台湾は、同じ中華民族です。その同胞へ「銃口」を向けるのですから当然起る問題です。解放軍兵士も「一人っ子」です。多くが、貧困な内陸部の出身者です。家族が、「跡継ぎ」を失う危険性にたじろぎます。米国は、中国が開戦準備を始めた瞬間から「動向把握」が可能とされています。最低限、3ヶ月前に開戦が決意させるとみています。開戦までの間、米軍が徹底的に「情報開示戦」を始めるでしょう。中国国内は浮き足立ちます。こういう経緯から、台湾侵攻は実現に疑問付がつくのです。
習氏は、この米国側動きを頭に入れているでしょう。となれば、「戦わずして権力を握り続ける方法」を編み出すのです。『習近平研究』の著書で知られる大東文化大学の鈴木隆教授は9月2日、ラジオNikkeiのポッドキャスト番組「中国経済の真相」に出演しました。その中で、「習氏が、21世紀型の兵営国家をつくろうとしている」と指摘しました。これは、何を指すのでしょうか。鈴木氏は「軍事安全保障が中心の官僚が統制する国家のあり方」と定義しています。つまり、戦争構えの国家運営をするというのです。だが、戦争はしない。開戦すれば、敗北するからです。
2027年の共産党大会で、習氏は「国家主席4期目」を実現するでしょう。後継者がいないからです。むしろこれによって、中国崩壊への引き金になる公算が強いのです。鈴木教授は、次のように指摘しています。「後継者不在・指導部高齢化・独裁のわな」が表面化することで、体制は強固になるが、政治システムは逆に硬直化するのです。
ここに、「レアアース覇権崩壊」が重なります。西側諸国は8月から、「重要鉱物特恵市場」を稼働させました。鉱山国を含めて、55ヶ国が参加しています。レアアースは製品で売買するだけでなく、中間製品の「精鉱」でも売買が可能です。5~10年の長期契約で採算のとれる最低価格での販売が実現します。これは、中国にとって致命的な市場となります。中国が、輸出するレアアースの94%は西側諸国です。この需要が、重要鉱物特恵市場へ移るのです。中国は、有力輸出先を失います。これで、自動的に「レアアース覇権」を喪失するのです。
これが広く知れ渡った時、中国の誇りとしてきた有力な外交覇権を失います。中国は、レアアースを武器に、日米へ外交圧力を加えて「溜飲」を下げてきました。それが、2030年以降に完全消失して、中国はレアアースの大口供給国の一つに格下げになります。この段階で、西側諸国から重要鉱物の「ESG基準」が宣言されます。重要鉱物特恵市場で取引される重要鉱物以外は、西側諸国の流通を禁じると決定します。
これは、中国製重要鉱物を使用した製品全てを流通から排除するという決定になります。中国製EV(電気自動車)や蓄電池、太陽光パネルなど、日本発の化学的精錬法以外による精錬の鉱物とそれを組込んだ製品が西側諸国で流通できないことになります。その準備が進んでいます。中国製品は、完全に「干される」のです。この状況が、習氏の国家主席4期目中に起ります。中国は、もはや対抗手段もありません。この決定に従うほかないのです。中国は、21世紀型の兵営国家、つまり「籠城国家」となって大きく後退する羽目に陥ります。これでも、習氏の権力基盤に揺るぎはないのでしょうか。


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