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訪中した岩屋毅前外相は1日、電子メールでロイターの取材に応じ、会談した王毅外相や何立峰副首相らが、高市早苗首相に対し「極めて厳しい姿勢」を見せていたと説明した。日中の対話再開を要請したところ、王氏は駐日大使に任せてあると語ったという。岩屋氏は、日本側の譲歩を求める姿勢を明らかにしており、話題を呼びそうだ。

 

岩屋氏は、「原因は日本側にある」という言い方をしている。「原因を作ったのはこちらなのだから、こちらから積極的に動くべきだ」、「中国側は高市氏の軌道修正を不十分だと考えている」、「不信感は相当に強い」など、日本政府の公式立場とは明確にトーンが違う。中国の不満を「そのまま日本側に伝える」立ち位置になっている。

 

『ロイター』(10月2日付)は、「中国、高市首相に『極めて厳しい姿勢』と岩屋氏 対話再開は駐日大使に一任」と題する記事を掲載した。

 

民間経済団体の日本国際貿易促進協会(国貿促)会長として訪中した岩屋氏は、9月28日に王氏と、翌29日に何氏とそれぞれ北京で会談した。岩屋氏によると、王氏は会談の中で、日中関係について「改善が必要だ」との認識を示した。岩屋氏が「政府間の対話の窓口を開けて欲しい」と要請すると、王氏は「呉江浩(駐日)大使に任せてある」と説明したという。

 

(1)「日中関係は昨年11月、高市首相が台湾有事について「存立危機事態になり得る」と国会で答弁したこと⁠をきっかけに悪化した。その後に高市氏は「日本政府のこれまでの立場は変わらない」と軌道修正とも取れる発言をしたが、岩屋氏は「中国側はこの点について不十分だと考えているようだ。不信感は相当に強い」と、今回の訪中で受けた印象を語った。また、1972年の日中共同声明に言及し、「原点を再確認することが必要だと自分は思う」とも述べた」

 

中国が、岩屋氏を通して日本の政界に送る「シグナル」と言える内容である。中国はなぜ、岩屋氏を使うのか。その理由は、現職閣僚には弱さを見せたくない。しかし、日本との対話は再開したい。技術ストックへのアクセスも必要である。日米同盟強化で、中国の選択肢が狭まっているだけに、手を打たなければならないという焦りであろう。中国は、「元閣僚・民間肩書き・親中ネットワーク」を使うという典型的な手法を使った。

 

(2)「岩屋氏は、「中国側が対話の窓口を閉ざしていることもあるが、こちら(日本)からのアプローチも十分ではないように思う」と指摘。「原因を作ったのはこちらなのだから、こちらから積極的に動くべきだろう。政府の一層の努力を⁠求めたい」と期待した。何副首相との会談では、レアアースの対日輸出管理の適正化を要請した。何氏は「民生用であれば問題ない」と発言したという。岩屋氏は取材に、中国からの輸入が「現場ではかなり滞っている」との見方を示した上で、「中国商務省にも寄って同じ要請をしているので、個別具体的に交渉することが必要だと思う」と語った」

 

中国が、今回の岩屋訪中で本当に欲しているものは何か。表面的には、「対話再開」「高市発言への不満表明」だが、構造的には次の点であろう。

 

1)日本側の「空気の変化」の確認

高市発言後、日本国内で対中警戒がどこまで強まっているか。自民党内で「対中強硬」がどれくらい支持されているかを、元外相クラスから肌感覚で取りに来ている。

2)対話ルートの再構築(ただし格を落として)

現職閣僚との対話は避けつつ、元閣僚・与党議員・シンクタンク経由で「安全保障・技術・経済の情報と雰囲気」を継続的に取りたい。

 

(3)「高市氏の「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」を掲げる外交姿勢につ⁠いて、岩屋氏は「日本は大国ぶる必要はない。我が国はミドルパワーだ」とし、「日米同盟を基軸としながらも、中国と安定的な関係を構築することが日本外交の要諦であり、​それを近隣諸国も望んでいる」と強調した。「結び目」としての役割を果たしていくことが大切だとの考⁠えも示した。「花は咲き誇ったりはしない。自然体でありのままに咲いているから美しい」と指摘した」

 

日本は、「ミドルパワー」として振る舞うべきだが、その定義を中国に委ねてはならない。日本自身が、ミドルパワーの内容を設計し、米国・欧州・アジアを接続する「三極結節点」として振る舞うことだ。岩屋氏の言う「ミドルパワー」は、中国が日本に望む「自己規制」の色が濃い。日本が採用すべきミドルパワー論は、それとは全く別物だ。

 

日本の取るべきミドルパワー論は、「弱さ」でなく「構造的優位」の再定義である。日本のミドルパワーとは本来、軍事では米国と同盟、経済ではEUと規範を共有し、地政学ではアジアの中心に位置する立体的なものである。中国の期待するような弱々しいものではない。中国が期待するミドルパワー像は、「大国ぶるな」「米国と距離を取れ」「共同声明に戻れ」という自己制限型である。こういう中国の「ご都合主義」とは無縁のものだ。