中国外務省は、高市早苗首相に「首相」の呼称を使わず、呼び捨てにした。中国政府が日本の首相に敬称などをつけないのは珍しい。習近平指導部による高市氏への敵視姿勢が際立つ。これは、外交儀礼の逸脱でなく、習近平指導部が対日強硬姿勢を国内外に誇示するための政治的シグナルであろう。
中国は、どれほど対立しても日本の首相を呼び捨てにしたことはほぼない。小泉純一郎氏の靖国参拝6年連続の時ですら、「日本首相」、「小泉首相」と呼んでいた。それを今回は、「高市早苗」と呼び捨てにした。これは偶然ではなく、意図的な格下げである。外交儀礼の破壊は、「相手を国家として認めない」という最も強い敵視の表現である。
中国は、高市首相だけを「個人標的」として敵視している。高市首相は2025年11月、
台湾有事が存立危機事態に該当し得ると明言した。これは中国にとって、自衛隊の武力行使を排除しない、日米共同作戦の可能性、台湾防衛への日本関与の明確化を意味する。習近平政権にとっては最も嫌う「日本の主体的安全保障」宣言である。
中国は長年、日本は衰退、日本は米国の従属国、日本は自ら動かない、という誤った前提で戦略を組んできた。高市首相はこれを完全に覆したのだ。これは、中国の戦略的誤読を露呈させる存在であり、最も危険な相手であることを意味する。
中国国内では、経済低迷、失業、地方財政破綻、社会不安が進行している。こうした時、 外敵を作って国内の不満を外に向けるのは独裁政権の常套手段である。高市首相は、日本の首相で女性、安全保障強硬、台湾有事に言及、米国と連携という要素が重なり、中国国内宣伝にとって「最適な外敵」に位置づけられた。
中国は「日本全体」を敵視していない。岩屋毅前外相とは王毅や何立峰が会談に応じている。中国は、高市首相だけを敵視し、日本国内の「政権と距離を置く勢力」を取り込み対象にしている。経済団体は、中国の利用対象である。こういう分断工作を明確に行っている。これが、中国の典型的な外交手法である。「政権を叩き、政権外勢力を懐柔する」のだ。
『日本経済新聞 電子版』(10月2日付)は、「中国、高市首相を異例の呼び捨て 『日本首相』の呼称使わず敵視鮮明」と題する記事を掲載した。
中国外務省の郭嘉昆副報道局長は、9月30日の記者会見で小泉進次郎防衛相の核兵器や原子力潜水艦の保有に関する発言について問われた際、高市氏を「高市早苗」と呼んだ。従来の「日本首相」や「高市首相」といった呼称は使わなかった。香港紙の『星島日報』は2日付で「外務省は言葉遣いに細心の注意を払う。言い間違いではない」と指摘した。同省の林剣副報道局長も8月17日の記者会見で、全国戦没者追悼式での首相式辞を巡る質疑で高市氏を呼び捨てにしたことがある。
(1)「星島日報によると、2001〜06年に靖国神社を6年連続で参拝した当時の小泉純一郎首相について中国外務省は「日本首相」か「小泉首相」と呼び続けた。郭氏は9月30日の会見で小泉防衛相を「現職の防衛部門責任者」と表現したが、呼び捨てにはしなかった。高市氏は25年11月、国会で台湾有事に関して安全保障法制が定める「存立危機事態」に該当する可能性に言及した。中国は自衛隊による武力行使を排除しない姿勢に反発し、日中両政府間の対話や交流が途絶えた」
呼び捨ては「習近平の余裕喪失」の表れである。外交儀礼を壊すので、大国が最もやってはいけない行為とされている。それをやったということは、経済状況が悪い、国際的孤立が進む、日本の台頭を止められない、台湾有事で不利な状況、などという複合ストレスで、習近平政権が余裕を失っている証拠である。
(2)「習指導部は、高市首相との対立姿勢を鮮明にする一方、政権と距離を置く勢力や経済団体との交流は続ける。9月下旬に訪中した岩屋毅前外相とは王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相や何立峰(ハァ・リーファン)副首相が会談に応じた」
日本が、台湾有事で主体的に動く可能性を示した高市首相は、中国の戦略的誤読を突く存在であり、習政権にとって最も危険な相手である。同時に、中国は日本国内の政権外勢力を懐柔する分断工作を強化している。これは、中国の余裕喪失と対日焦燥の表れだ。


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