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高市首相が一番、頭を悩ませているのは、自らの言動によって「リフレ論者」(インフレ容認論者)とレッテル貼りされていることである。これが、ドル円相場を異常円安へ導いている要因だ。一方で、日本国債がリフレ論騒ぎを一蹴するように、先進国の中で最も安定しているという評価が生まれている。「高債務国国債」が、安全評価へ一変している。こうなると、国内の議論が国際標準からみるとかけ離れていることが分かる。一体、どこで議論は食い違ってしまったのか。

 

日本国債市況が堅調な理由は、日本の国債市場が以下の構造で支えられていることだ。国内投資家の厚い需要と日銀の巨大な保有残高(市場の安定化装置)が支えている。アベノミクスによる日銀の国債買い入れである。政治リスクが、欧州のように目立ったものではない。大きな要因は、日本企業の収益力改善である。

 

これが、日本国債の信用を押上げている。収益力が高ければ、税収が増えるという理窟だ。言葉を換えれば、名目GDP成長率が高ければ、税収が増えるという因果論である。海外勢が、「日本は危機の震源にならない」と理解している背景には、以上のようなものがある。日本の為替市場が唱えている「リフレ論」とは、随分と視点が異なる。「分母」になる名目GDP成長率という肝心のデータを無視して、「分子」の国債発行残高ばかり取り上げているからだ。「針小棒大」という議論を大真面目に行っている。国債市場の議論とは、余りにもかけ離れている。

 

『ウォール・ストリート・ジャーナル』(10月3日付)は、「世界的な債券安、政府債務の水準で濃淡」

 

原油価格の上昇が世界各国の債券市場を揺り動かす引き金になっていることは間違いない。だが、各国の債務の水準は債券市場のリスク要因としてどれほど大きな影響を及ぼしているのだろうか? 先進7カ国(G7)の経済を簡単に分析すると、各国の債務水準が債券市場に大きな影響を与えたことが分かる。これは、原油価格の急騰が債券を売却する動きに火をつけた一方で、積み上がった債務が、制御不能になるほど火を燃え広がらせた乾いた燃料の役割を果たしたことを物語っている。

 

(1)「経済協力開発機構(OECD)のデータによると、イタリアはG7の中で債務水準が最も高く、25年には対国内総生産(GDP)比で149%に達した。米国は126%、フランスも117%とそれほど違わない水準にある。フランスについていえば、極右または極左の大統領が誕生した場合に、この数値が膨らみかねないことが懸念されている。それとは対照的に、対GDP債務比率が米国よりも大幅に低いドイツ、英国、カナダの3ヶ国では、政府債利回りの上昇が小幅にとどまっている」

 

国債市況が安定している条件は、対GDP債務比率が低いことである。債務残高の少ない国の国債市況が、堅調であるのは当然であろう。

 

(2)「顕著な例外は日本だ。日本はG7諸国で対GDP債務比率が最も高いばかりか、ネガティブなニュースが相次いだにもかかわらず、7~9月期の10年債利回りの上昇幅は約0.4ポイントと、G7の中で最も小さかった。ここで考慮すべき重要な点がある。日本の対GDP債務比率は200%超と、極めて高い水準にある。しかし、それは政府が保有する外貨準備や他の投資を含む大規模な金融資産を考慮していない数字だ。キャピタル・エコノミクスの推計では、これらを加味すれば、27年の債務比率は対GDP比109%と、金融危機以降で最低の水準となる」

 

債務過多とされている日本が、保有資産を加味した正味の債務残高は、27年で109%と2008年の金融危機以降で最低になるという。

 

(3)「しかも、日本は年間の財政赤字がG7の中で最も低い。OECDによると、7カ国全ての完全なデータがある直近の2024年には、中央政府の財政赤字は対GDP比1.7%で、他のG7諸国の平均である4.7%よりも大幅に低かった。つまり、過去にどんな問題を抱えていたにせよ、日本は今のところG7で最も責任ある行動を取っていることになる。これら全てが投資家にとって何を意味するかといえば、政治をこれまで以上に注視する必要があるということだ。債務管理と財政赤字削減に関する信頼できる計画を市場に示すことができる国は、原油価格がどうなるにせよ、今後数カ月の債券市場の混乱を比較的小さく抑えることができそうだ」

 

日本は2024年、中央政府の財政赤字の対GDP比が1.7%で、他のG7諸国の平均である4.7%よりも大幅に低かった。日本は、財政赤字縮小(財政規律遵守)を行っている。過去の大盤振る舞いを強く反省している結果だ。高市政権もこの枠組を守るほかない。