トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は14日、9年ぶりに北京で会談した。習氏は、台湾問題について「適切に処理できなければ両国は対立・衝突し、中米関係を極めて危険な境地に追い込むことになる」と警告した。トランプ氏は、台湾問題について「無言」で通し、習氏の空振りに終わった。血気盛んなトランプ氏が、反論せずに聞き流したのだ。
トランプ氏は、なぜ台湾問題に触れなかったのか。米国側の本音は、「台湾問題を議題にすると、習近平に“成果”を与えてしまう」という外交的な配慮とみられる。トランプ政権は、 「台湾独立反対」という言質を絶対に与えたくなかったのであろう。米国は、「沈黙」によってやり過ごしたのだ。
『日本経済新聞 電子版』(5月14日付)は、「米中首脳、台湾巡り協議 習氏『対処誤れば衝突』とトランプ氏に警告」と題する記事を掲載した。
米ホワイトハウス当局者が、会談後に記者団に説明した会談内容には台湾問題は含まれていなかった。トランプ氏によると、両首脳が2025年10月に韓国で会談した際には台湾問題は議題にのぼらなかった。習氏は、自国での会談でトランプ氏に厳しい言葉を投げかけた。習氏は、「台湾問題は中米関係において最も重要だ。これを適切に処理すれば両国関係は全体として安定を保つことができる」と主張した。「台湾独立と台湾海峡の平和は水と火のように相いれない」と強調した」
(1)「会談の冒頭、習氏は既存の大国が新興の大国と衝突する「トゥキディデスのわな」に言及し「中米両国は乗り越えることができるか」と問いかけた。「大国関係の新たなパラダイムを創造できるか」とも話し、米中協力の重要性を唱えた。トランプ氏は、「あなたは偉大な指導者だ」と習氏を持ち上げた。「米中関係はかつてないほどに良くなる」と応じた。同行した米企業のトップらを紹介し「『今回は史上最大のサミットになるかもしれない』という人もいる」と言及した」
習氏は、「トゥキディデスのわな」を持出し、米中が戦えば中国の勝利と虚勢を張った。トランプ氏は、この挑戦に答えず「あなたは偉大な指導者だ」と持ち上げた。意気軒昂なトランプ氏が、よく我慢してやり過ごしたものだ。トランプ氏にも「忍耐力」があることを示した。
(2)「トランプ氏は、11月の米国の中間選挙を前に、経済分野で中国から成果を得たという実績づくりをもくろむ。中国が米国産の農産物や原油の購入を拡大する見返りに、トランプ氏が台湾問題で譲歩するかが焦点となる。ホワイトハウスによると、両首脳は米国企業による中国市場へのアクセス拡大と中国による米国産業への投資拡大を協議した。イラン情勢や貿易振興についても話し合った。会談は、およそ2時間15分で終了した。両首脳は15日にも少人数でのワーキングランチに臨む」
米国は、一貫して台湾問題に触れない姿勢である。米中貿易の不均衡是正には、台湾問題を「エサ」にする必要がないというスタンスをみせている。農産物輸出の代償に台湾問題を「差し出す」訳には行くまい。民主主義を見殺しにする大きな誤りを冒すからだ。この裏には、中国経済の苦悩がある。米国は、その実態を詳細に把握している。中国は、米国の要求を必ず受入れざるを得まいという見通しがあるからだ。
(3)「習氏が、トランプ氏に台湾問題を切り出したのは、台湾統一を実現するうえで今が勝負どころとみるからだ。11月の台湾の統一地方選に向けて、中国との対話路線を掲げる最大野党・国民党を後押ししたいという思惑もある。習氏は、4月に国民党の鄭麗文主席と会談し、台湾独立に反対することで一致した。トランプ氏から、台湾への米国の関与を低下させるという言質を取れば、頼清徳(ライ・チンドォー)政権への逆風となり、国民党が統一地方選を有利に運べるとの計算がある」
台湾の最大野党の国民党は、党員が高齢化しており、今後ますます勢力は低下の運命にある。若者の支持を失っているのだ。国民党の鄭麗文主席は、訪中して日本批判を散々言ってのけた人物である。日本へは、まず来られないであろう。




