勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 経済ニュース時評

    テイカカズラ
       

    8日に自民党の圧勝で終わった日本の衆院選直後、高市早苗首相と米国のトランプ大統領が交流サイト(SNS)を通じてメッセージをやりとりした。「きょうとても重要な選挙で圧勝を収めた高市早苗首相と連立与党にお祝い申し上げる」(トランプ大統領)、「今春にホワイトハウスを訪問し、日米同盟の更なる強化に向けて、共に更なる取組を進めることができることを心待ちにしています」(高市首相)という内容だ。

     

    現在の米韓関係は冷え切っている。米国が、対韓関税25%を15%へ引き下げる条件として、韓国が米国へ3500億ドルの対外投資をすることになっていた。米国は、昨年11月に早めに関税を引下げたのに、韓国は対米投資案件を国会で議決せず遅延させてきた。これにトランプ氏が激怒。関税を再び25%に戻すと揉めている。こういう米韓関係だけに、日米の蜜月ぶりが気になっているのだ。

     

    『中央日報』(2月9日付)は、「新たな米日蜜月を予告…高市首相『温かい言葉に感謝』、トランプ大統領『圧勝を祝う』」と題する記事を掲載した。

     

    衆院選3日前の5日、トランプ大統領が「高市支持」を公開的に明らかにして後押ししたことに高市首相が「温かいお言葉に心から感謝いたします」として謝意を示し米日同盟強化の意志を明らかにした。トランプ大統領が、「あなたとあなたの連立政権を支持できたことを光栄に思う」としたのである。トランプ大統領は、高市首相について「非常に尊敬されとても人気のあるリーダー」と称し、「選挙実施を求めるという大胆かつ賢明な決断は大きな成果をもたらした」と述べた。

     

    (1)「両首脳のやりとりは、単純な外交的修辞を超え「トランプ・安倍」に続く「トランプ・高市」の新蜜月構図を象徴的に見せるという評価が出ている。「強い日本」を掲げた高市首相の「普通の国」(戦争をできる国への転換)戦略と、同盟の安全保障分担拡大を要求してきたトランプ大統領の利害関係がかみ合わさってだ。ベッセント米財務長官はこの日、フォックスニュースとのインタビューで高市首相について、「立派な同盟だ。(トランプ)大統領と立派な関係にある」と評し、「日本が強ければアジアで米国も強くなる」と話したのも同じ脈絡だ」

     

    高市氏が、安倍元首相の「衣鉢」を継いでいることは間違いない。安倍氏のやり残した課題に取組むであろう。新しい所では、「減税付き給付金」実現だ。これによって、日本の社会保障体制は、ぐっと中身が濃くなろう。期待の政策である。

     

    (2)「軍事安全保障だけでなく、先端技術や供給網など経済安全保障を包括する同盟関係を日本とともに牽引していくという意志の表現と分析される。両国の密着が米国のインド太平洋戦略で核心軸になる可能性が大きくなった。トランプ大統領と高市首相の連帯関係強化は、選挙前から予想されていた。「女版安倍」と呼ばれる高市首相は、安倍晋三元首相がトランプ政権初期に見せた「早期密着戦略」をそのまま再現していると評価される」

     

    日米が、共同で先端技術や供給網など経済安全保障網の充実を図ることは極めて重要だ。高市氏が9日、南鳥島のレアアース採掘で米国の協力を求めた。これは、中国軍の妨害工作を防ぐ意図によるのであろう。現実に、中国軍の妨害工作が予見される以上、米国が参加する「共同事業」であれば、中国も手を出せないからだ。

     

    (3)「トランプ政権と高市政府の最大の共通分母は、対中関係に集約される。双方は、中国を戦略的競合者と規定し、軍事・経済全般で対応を強化すべきということで認識をともにする。今回の圧勝で高市首相は、宿願である憲法改正と防衛費増額にスピードを出す見通しだ。トランプ政権が昨年12月と1月にそれぞれ公開した国家安全保障戦略(NSS)と国家防衛戦略(NDS)を通じ、同盟国の防衛費分担拡大を要求してきただけに、日本の防衛力増強は米国の計算にも合致する選択だ」

     

    NSSとNDSは、米国がインド太平洋戦略の重視を明らかにしている。「早とちり」筋は、米国が西半球だけを重視と誤解している。米国は、中国勢力を西半球やインド太平洋から排除する意思を明確にしている。ベネズエラ急襲は、その一環だ。

     

    (4)「保守指向の高市首相が、描く改憲を通じた日本の「普通の国」への歩みに、トランプ政権がどんな立場を見せるかが関心事だ。トランプ大統領がこの日、SNSへの投稿で「あなた(高市首相)の保守的な『力による平和』政策の実現を心から祈ります」としたのは、高市首相の平和憲法改正の意志に最小限反対しないという考えを示したものと解釈できる。日本は、すでに先月ワシントンDCで開かれた米日国防相会談で、米国が要求する防衛費増額と第1列島線防衛共助の意志を再確認した。今後、米日間にはミサイル防衛、宇宙・サイバー安全保障など、より広範囲な分野で具体的な役割分担議論が加速すると予想される。トランプ大統領が、予告した3月19日のホワイトハウスでの米日首脳会談で、貿易と安全保障を含む全方向の同盟強化案が話し合われる可能性が大きい」

     

    安全保障は、国家自衛権の基本である。 思想における右も左も関係なく、極めて重要な事項である。 弱肉強食のこの世界で、いかに相手国から侮りを受けないか。 それに備えることは、当然の権利であり義務である。

     

    (6)「米日同盟が、堅固になるほど韓国は対中関係でより「明確な決断」を迫られることになりかねない。米日が、安全保障と経済供給網で「ワンチーム」で動く構図から、韓国が疎外されないようにするには韓米日3ヶ国の安全保障協力の枠組みの中で、韓国の戦略的価値を持続的に刻みつけなければならないという指摘も出る」

     

    韓国は、すでに米国から疎外され始めている。 中国への接近が根強いことが警戒されている理由だ。  韓国は、 米国主導の「重要鉱物特恵市場」構想からも排除された。 「経済は中国、安保は米国」という二足のわらじ政策が嫌われている。米国の対韓姿勢は、急激に変ってきており冷淡さを見せ始めているのだ。 

     

     

     

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    中国は2020~2024年、世界で4番目の武器輸出国である。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、トップは米国(43%)である。以下、フランス(9.6%)、ロシア(7.8%)、中国(5.9%)の順序である。特に地域紛争などで安保状況が悪化した西アフリカでは、最近5年間の中国武器輸入量が直前期間の2倍に増えている。

     

    価格が安く、西側と違って武器輸出に制限を設けていないため、中国産が好まれている。しかし、昨年のタイ-カンボジア国境紛争で、タイが中国から輸入したVT4戦車は、射撃中に砲身が爆発するなど、品質問題がクローズアップされている。中国武器の品質劣化は、これまでも燻っていた。攻撃中に砲身が爆発するとは、「品質管理」に問題がある証拠だ。

     

    『中央日報』(2月9日付)は、「敵を攻撃中に戦車の砲身が爆発…『中国産武器』輸入国の悲鳴」と題する記事を掲載した。

     

    英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の副研究員サム・クレニ・エバンス氏は、英国防衛産業ニュースおよび分析メディア『カリブレディフェンス』への寄稿「中国防衛産業輸出:残酷な話」で、中国防衛産業の問題点を指摘した。エバンス氏は、中国製武器体系が持続的な技術的欠陥とアフターサービス問題で購買国の軍事能力を阻害する事例が繰り返されていると明らかにした。


    (1)「著者は、中国武器体系の代表的な問題として信頼度と品質管理を挙げた。陸上装備では中国がタイに輸出したVT4戦車が最近のカンボジアと戦闘で砲身が爆発するなど複数の欠陥が報告された。航空装備分野では、ミャンマーに輸出されたパキスタンとの共同開発のJF-17戦闘機が、2022年末に亀裂とレーダー誤作動などでほとんど運用が中断している点が挙げられた」

     

    問題は、戦車の砲身爆発だけでない。JF-17戦闘機が、2022年末に亀裂とレーダー誤作動などでほとんど運用が中断されている。いずれも、実験を十分に行わず製品化した失敗だ。

     

    (2)「バングラデシュが、導入したFT-7とK-8W訓練機もさまざまな問題で運用に困難が生じた。ヨルダンとイラクの導入したCH-4無人航空機も導入後にいくつか不満が提起された。海軍艦艇分野では、パキスタンに輸出されたF-22P護衛艦にミサイル射撃統制システム、レーダー・推進システムで持続的な問題があったという報道がされた」

     

    このように軒並み、中国製武器が問題を起こしているのは、品質管理の問題であろう。中国軍へ納品された武器も、こうした脆弱性を抱えているに違いない。「オモチャの武器」になりかねない話だ。

     

    (3)「中国武器の輸出に関し最も多く言及されるもう一つの問題は、事後支援と部品供給の不在だ。購買国が武器導入後に必須部品を確保したり整備支援を受けたりすることができず、運営が中断する事例がいくつか報告された。これは中国防衛産業企業が契約後に持続的な技術支援を提供しないからだ。輸出装備の初期の価格競争力はあっても、実質的な運営・維持費用とリスク負担はむしろ高まるという評価が出る理由だ」

     

    武器取引では、安定したアフターサービスと部品供給が前提である。それが守られていないとは、ビジネス原則に反している。契約違反である。

     

    (4)「こうした問題は、単純な機械的欠陥以上の意味を持つ。国際的な軍事協力と防衛力量の相互運用性を考慮すると、中国製武器の欠陥は購買国の戦略的信頼にも影響を及ぼす。実際、一部の国はこうした不信感のために中国産武器の導入を見直したり、西側との協力を拡大したりするなど代案を模索している。また、技術的欠陥と支援不足は中国防衛産業の基礎の構造的弱点を見せているという分析もある。品質管理、生産過程の一貫性、そして購買国の要求に合う持続的な支援体系などが中国防衛産業企業にはまだ十分でないということだ。著者は「中国武器の競争力は低価格で始まるが、運用・持続性・支援サービスの側面で信頼性が低いという認識は長期的なパートナーシップ構築に負担を与える」という結論を出した」

     

    中国製武器は、恒常的な技術的欠陥と支援不足という難題を抱えている。これは、中国防衛産業の基礎が、構造的弱点を持っている証拠だ。中国は、信頼性がこれほど低い武器で、台湾侵攻をやろうとしている。米国製武器とは比較にならないであろう。



     

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    中国の主要メディアが、今回の日本の選挙に強い関心を示していたことは、開票結果の速報に現れている。中国は、日本への旅行を止めるべく「治安が不安定」と嘘情報を流すなど、常識では考えられない工作をして高市政権を揺さぶる策に出た。選挙の結果は、中国が願った結果と全く逆の事態となった。日本世論が、自民党候補者へ投票して、中国の「威圧」を払いのけた形になったのである。

     

    『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月9日付)は、「高市自民圧勝、中国の威圧は裏目」と題する社説を掲載した。

     

    自由主義諸国の政治指導者は、皆不人気だと誰が決めたのだろうか。日本の高市早苗首相は8日、自民党を衆院選での圧勝に導き、その固定観念を覆した。開票結果によると、自民党は単独で安定多数を確保する見込み(訳注=自民単独で絶対安定多数に到達)で、これは圧勝を意味する。自民党は最近の複数の選挙で支持を失い、政権を組むために連立パートナーが必要だった。高市氏は新たな連立パートナーと共に3分の2議席を獲得(訳注=自民単独で3分の2を獲得)し、より権限が弱い参院の反対を覆せるようになる。

     

    (1)「この結果には、日本初の女性首相である64歳の高市氏の個人的な勝利という部分もある。67%という同氏の支持率が党全体を押し上げた形だ。野党が弱いのは事実だが、最近の自民党の前任者たちは、高市氏ほどそれを生かせていなかった。それはまた、中国政府のおかげでもある。高市氏は公の場で、中国による台湾侵攻は日本の安全保障を脅かすと述べた。同氏が真実を語ったことを受け、中国政府は輸出規制と渡航自粛で日本を罰しようとしてきた。

     

    自民党大勝は、高市人気と中国の経済的威圧への反発である。中国は、自己過信から日本へ圧力を掛けて「火傷」した感じだ。

     

    (2)「中国の威圧はまたしても裏目に出た。中国が台湾やオーストラリアを威圧した時も同様だった。高市氏は自民党の保守・親米派に属する。同氏は防衛費の増額を支持しており、中国の大規模な軍備拡張を踏まえれば、これは喫緊の課題だ。これまでのところ、高市氏はドナルド・トランプ米大統領の予測不能な言動に誰よりもうまく対処してきた。高市氏は通商関係の安定化を図るとみられる。トランプ氏は日本をゼロサムゲームの貿易上の敵対国として扱うのではなく、安定化の実現に動くのが賢明だろう」

     

    独裁国家が、民主主義国へ威圧を掛ければ、必ず今回のような結果になる。民主主義国の世論は、独裁国を嫌悪しているからだ。中国は、自らの政治体制が時代遅れであることを認識すべきであろう。

     

    (3)「より不確かなのは、高市氏の政策がインフレに対する日本国民の不満を解消するかどうかだ。同氏は食料品にかかる8%の消費税を2年間ゼロにするよう提案している。しかし、日本のインフレの根本原因は金融政策にあり、日銀が長年のマイナス金利を経て政策の正常化を図っていることが背景にある。高市氏はまた、財政支出の新たな拡大を公約に掲げた。これは、日本がこれまで何度も失敗してきたケインズ主義的な景気対策の手法だ。世界的に政府債務が高水準にある現状では、非防衛分野の支出拡大はリスクを高めるものでもある。日本の債務は拡大し続けており、その資金の出し手である投資家がより高い利回りを求める可能性がある」

     

    高市経済政策には、インフレ助長というリスクを孕んでいる。予算を膨らませてインフレをもたらしたのでは、あぶはち取らずになる。需要強化のケインズ理論より、イノベーション推進のシュンペーター理論へ大きくシフトすべきだ。

     

    (4)「日本経済の問題は需要不足ではない。アニマルスピリット(企業などの強い意欲)や国内競争が不足しているという、供給側の問題だ。高市氏が師と仰ぐ故安倍晋三氏は、幾つかの規制緩和を推進し経済成長につなげた。これは、政策の方向性として高市首相が追求し得る最善のものだ。最も良いニュースは、自民党の議席が過半数を優に上回ったことで、高市氏に、国民の信任の下で政権運営を行う余裕が生まれることだ。米国をはじめとする自由主義諸国は、中国共産党の帝国主義的野心に対抗する同盟・友好国として、強く自信に満ちた日本を必要としている」

     

    日本経済は、アニマルスピリット(企業などの強い意欲)をかき立てるべきだと主張している。これが、シュンペーター理論だ。日本は今や、西側諸国の技術革新の核になった。その日本が政治的に強化されたことで、西側にとって「グッド・ニュース」と歓迎している。日本は、米国と共に西側諸国を牽引する重大な役割を与えられているのだ。

     

     

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    目的は習氏の権威護持

    軍最高幹部追放の意味

    中国軍の根本的弱みは

    情報戦で敗北する宿命

     

    中国とは、どのような性格の国家であるか。その本質は、権威主義である。具体的には、歴史の教科書に出てくるあの専制国家だ。専制主義が、現在の中国を支配しているのである。こういう視点から現代中国を眺めると、そこに多くの欠陥が現れていることに気付くであろう。

     

    専制国家という表現は、もはや時効になっている。今様に言えば、権威主義である。この権威主義という軸によって中国を分析すれば、中国の見えない部分が明瞭に浮かび上がってくる。なぜ、過剰生産を続けているのか。経済の実態が悪化しているにもかかわらず「5%成長」に拘っているのか。人民解放軍の最高幹部二名が同時に粛清された理由は何か。すべての根源は、権威主義に行き着くであろう。それは、中国国家主席習近平氏の「胸三寸」ですべてが決定されるシステムの欠陥の現れである。

     

    中国が、自らを決して権威主義国家と呼ぶことはない。社会主義国と称するが、貧富の格差を放置している社会主義など存在しえないのだ。相続税も固定資産税も存在しない中国は、「富める者がますます富み、貧しき者はますます貧する」格差国家である。この根本的な矛盾は、共産党革命を行った古参幹部子弟を庇うことから始まった。これが、富裕階級をより豊かにする要因として貧富を拡大している。社会主義下における貧富の格差拡大など、原理的にも不可解な事象である。中国は、紛れもない権威主義国家である。

     

    権威主義国家は、「家産国家」とも呼べるであろう。家産制では、国家の支配者が土地や社会的地位を自身の家産のように扱い、家父長制的な支配を行う。ドイツの社会学者マックス・ヴェーバーによって、「近代国家」との比較論で広く認識された概念だ。現代中国を分析するには、この概念が極めて有益な手法となる。

     

    民主主義国家は、近代国家と呼ばれる。中国は、家産国家で帝王が率いる国家である。家産国家の官僚は、近代国家の官僚(「近代官僚制」)と違い「家産官僚制」と呼ばれる。習氏への忠誠が基本となっているのだ。人民解放軍が、習氏に忠誠を誓うのは家産官僚制の特色である。要するに、習氏が帝王で、官僚はその「補佐役」に過ぎない。これが、学術的にみた中国の実態である。

     

    目的は習氏の権威護持

    権威主義国家中国の極み付けは、5%経済成長固執と軍部の粛清に要約されている。いずれも、習氏の権威維持優先の下で行われている。「何が何でも5%経済成長」は、共産党の権威=習近平氏の権威を守る上で不可欠になった。軍部粛清は、習近平氏への絶対的忠誠に反した結果、二人の最高幹部が追放されたと理解すべきであろう。

     

    以上二つの硬直的な決定は、習氏の強さの証明ではない。逆に、弱さの証明となっている。自らの地位が安泰でないことを自覚した習氏が、地位を守るべき行った「権力発動」である。こうして、中国の実態は国家として弱体化に向って進んでいる。すでに、衰退全過程の6~7割が進んでおり、傾き掛けた国家になっているとみるべきだろう。

     

    まず、経済からみていきたい。中国は、23~25年にかけて「5%前後」という経済成長目標を掲げて実現させた。これは、習氏が2035年目標で掲げた21年比のGDP規模を2倍、国民一人当たり名目GDPでも2倍目標(平均4.7~5%成長)を掲げたことに縛られている。この「2035年亡霊」が中国の経済政策を硬直化させている。

     

    5%成長を実現するには、インフラ投資と設備投資が不可欠である。25年は、ともに前年比でマイナスである。26年の5%成長目標が、どれだけ不合理であるか明白である。それでも目標維持は、権威主義国家の宿命である。習氏の威厳を傷付けないためには、これが不可欠であるからだ。個人の威厳=権威を守るべく、無理な目標を達成することは、中国の経済体質を損ねることになる。誰も、それに異を唱えられないのは、家産官僚制の当然の結果だ。有り体に言えば、官僚は習氏に「隷属」している。

     

    中国は現在、確実に潜在的成長率が低下し続けている。原因は、過剰投資→過剰生産→価格暴落である。中国の成長躍進産業であったEV(電気自動車)は従来、自動車生産と自動車購入の両面で政府補助金付きであったが、財政ひっ迫を理由に取り止めの方向である。補助金がなくなれば、中国EVは長期的に利益が出るか疑問なほど、収益構造が悪化している。これでは、EVが中国経済の成長に何らの貢献をしないことになる。太陽光パネルも同じ状況にある。

     

    中国の経済成長率は、国民の福祉を満たすことよりも、習氏の個人的な威厳を保つことが目標という、本末転倒の状態になっている。不動産バブル崩壊後遺症は、政府の責任でないとして事実上、「手つかず」である。銀行と不動産開発企業の責任で、過剰債務を処理せよという立場だ。これが、地価下落を長引かせて、さらなる地価下落を招いている。地方政府の土地販売収益が減る結果、地方政府の行政を麻痺させつつある。まさに、悪循環に陥っており、最終的には習氏の権力基盤にヒビ割れを起こすであろう。

     

    軍最高幹部追放の意味

    中国経済は、少子高齢化によってますます潜在的成長率が低下して縮小過程へ進んでいる。これが、中国軍部の「粛清」事件を引き起したとみられる。経済成長率の鈍化が、しだいに武器調達の障害になるからだ。こうした背景の下で、中国人民解放軍制服組トップの張又侠・中央軍事委員会副主席が1月、突然の失脚となった。

     

    理由は、汚職と米国への情報漏洩とされているが、意見の対立によるものとみられる。習氏は、27年までに台湾侵攻準備を終えるように軍へ要求した。一方、制服組トップの張氏は35年まで掛るという意見であった。これは、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(2月2日付)が報じたものだ。この27年と35年をめぐる意見対立が、習氏の逆鱗に触れたのであろう。習氏は、軍部でも「絶対権力」を確立しなければならない。そういうさしせまった焦りが、今回の粛清の裏に隠されている。(つづく)

     

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    韓国産業通商資源省は、重要鉱物サプライチェーンで中国との緊密な協力を模索していると公式に発表した。対象は、レアアース(希土類)など先端技術に不可欠な鉱物で、韓国企業が中国産鉱物を迅速かつ安定的に輸入できる体制を整えるため、ホットライン設置や

    共同委員会の設置 を進めるとしている。

     

    一方、韓国は米国主導の「重要鉱物ブロック」にも参加し、対中依存を減らす努力も並行して進めているという二重戦略である。しかし、韓国は米国の「特恵市場構想(重要鉱物の優先供給・関税優遇などサプライチェーン枠組み)」から外された。米国の特恵市場構想は、「対中依存を減らす国」を優先する枠組みであるからだ。米国が韓国を外した「本当の理由」は、韓国の対中依存が「構造的」であり、短期に変わらないと判断した結果だ。これは、米国からみた韓国が、対中依存が大きいという国で距離を置かれたという意味だ。韓国は、米国の「外様」という位置づけである。

     

    『レコードチャイナ』(2月7日付)は、「韓国、重要鉱物の安定供給確保で中国との協力を模索―シンガポールメディア」と題する記事を掲載した。

     

    シンガポールメディア『聯合早報』(2月6日付)は、重要鉱物のサプライチェーン問題を巡り、韓国政府が中国とのより緊密な協力を模索していると発表したことを報じた。記事は、この発表がトランプ米政権の開いた重要鉱物関連会合の翌日だったことにも言及した。

     

    (1)「記事によると、米ワシントンで4日、重要鉱物のサプライチェーン強化に向けた閣僚級会合が初開催され、韓国からは趙顕(チョ・ヒョン)外相が出席した。一方、韓国産業通商資源部は5日に「中国側とホットラインを設け、共同委員会を設立する」との声明を発表。韓国企業が必要な鉱物を中国からより迅速かつ確実に輸入できるよう支援する旨を明らかにした。声明によると、韓国は世界をリードする半導体電気自動車(EV)用電池、石油化学企業を有するが、国内には完全なレアアース供給網が欠けている。このため、政府は国家安全保障に関わる重要鉱物17種類を指定し、これらの供給状況をさらに監視・分析することで不足に陥るのを防ぐ」

     

    韓国は、今回の重要鉱物のサプライチェーン強化閣僚級会合で議長国になった。その韓国が、中国側とホットラインを設け、共同委員会を設立すると声明を発表した。当然、重要鉱物のサプライチェーンに入るべきだったが、「仮想敵」の中国へ接近した理由は何か。米国が韓国を外した「本当の理由」は、韓国の対中依存が「構造的」であり、短期に変わらないと判断した結果である。韓国は、米国主導の「重要鉱物特恵市場構想」に入れなかったのだ。

     

    (2)「また、調達先の拡大に向けて米国、ベトナム、ラオスを含む他の国々と協力するとともに、2500億ウォン(約270億円)を拠出して韓国企業の海外での鉱物採掘事業を支援するという。一方、記事はワシントンで4日開かれた会合について、「米国の提唱で設立された『資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム』という名の重要鉱物貿易メカニズムの議長国に韓国が選ばれた」と言及。このメカニズムの趣旨に関しては、「多くの国を集め、一致した貿易政策や価格の下限などを設けることで、中国の主導的優位に対応する重要鉱物の貿易グループ形成を目指す」と説明した」

     

    韓国は、2500億ウォン(約270億円)を拠出して韓国企業の海外での鉱物採掘事業を支援するという。本来であれば、「重要鉱物特恵市場」で解決できる問題だ。米国に断られた結果、大急ぎで次善の策を講じたのであろう。

     

    (3)「韓国政府が以前、「中国によるレアアース資源の独占が世界のサプライチェーンの不安定化をエスカレートさせている」と表明したことを取り上げた上で、「米国が新たなサプライチェーンの構築を積極的に模索するのに対し、韓国は中国との外交的調整を通じて重要材料の安定供給を確保しようとしている」と指摘した」

     

    韓国は重要鉱物の黒鉛、レアアース、中間加工品、バッテリー素材の80〜90%を中国に依存している。しかも、これは「一時的」ではなく、産業構造そのものが中国に組み込まれている結果を示している。米国は、こうした見地から「韓国は脱中国を言うが、実際には10年経っても中国依存から抜けられない」と判断。米国が、韓国を特恵市場の「条件を満たす見込みが薄い」国と判断して、特恵市場構想への参加を認めなかったとみられる。韓国は、ピンチである。

     

     

     

     

     

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