米東部時間9月3日の円相場は、一時1ドル=155円30銭と、8月3日につけた日米協調円買い介入後の高値に迫った。9月1日夜は160円台前半であったので、2日間で5円超上昇した。
人間の相場観で言えば、すでに大半が「円安ピーク説」に同調している。だが、現実の投機筋取引は7割程度が「機械操作」(アルゴリズム)である。人間であれば相場を休むべき局面でも、アルゴリズムでは「売り信号」が出ている限り執拗な円売りになる。現状は、この局面である。人間の相場観と「機械の相場観」が、大きな食い違いを引き起している。9月3日の円相場が、2日間で5円超の円高になったのは、自信の持てない「薄氷相場」の特徴を表わしている。
米商品先物取引委員会(CFTC)による、IMM円ポジションの最新情報(8月28日現在)は、6万3298枚の円売り越しであった。投機筋が、依然として円ショート(売り越し)に大きく傾いていることを示している。これは、次のような機械的判断に基づくものだ。
なぜ、「円安ピーク感」が出ているのにアルゴリズムでは売り続けるのか。
1)ボラティリティが低い
変動しない相場は、アルゴリズムにとって「売りやすい相場」となる。ドル円相場が、長いこと膠着状態(ボラティリティが低い)にあった。機械では、この状態に対してリスクが低いと判断し、ショート(売り)が増える。動かない相場は、アルゴリズムにとって「円売りの好機」になるのだ。
この局面を少し詳しくみておきたい。IMMの最新データは、円ショート(売り)増加と円ロング(買い)減少である。これは、投機筋が「円安はまだ終わらない」と判断していることを示す。この判断は、「人間の相場観」でなく、「アルゴリズムの機械的判断」である。人間は、逆にこれを警戒しなければならない。
2)金利差がある
FRB議長が利上げムードを見せると、アルゴリズムは「金利差=円売り」と機械的に判断する。
3)日銀が動かない
「日銀は永遠に利上げしない」という誤解が、アルゴリズムの円売りを加速させている。日銀は、弾力的金利政策に動かすとしている。これが、アルゴリズムに響かないのだ。
「円安ピーク感」は、人間が感じるものの、アルゴリズムの機械には「ピークを感じない」のだ。この感覚の行き違いが、為替相場で大きな齟齬を生む原因になる。ならば、人間の判断とアルゴリズムの判断のどちらを重視すべきか。「休むも相場」という感覚から言えば、相場の静観であろう。実需筋が手控えているのは、人間の感覚が優先されている結果であろう。
機械売買は、逆方向にも一斉に走るため、円急騰は一瞬で起こるのが「アルゴリズム」の怖さである。アルゴリズムによる為替投機は、人間の感覚である「中庸」という芸術的なものでなく、「機械の群れ」である。人型ロボットが一斉に走り出している姿を思い出せばいいであろう。先の北京で行われた「人型ロボット100メール競争」でゴールに入ったのも分からず「暴走」している姿そのものだ。だからこそ「相場崩壊」も一瞬で決まるという、極めて危うい状況へ踏み込んでいる。
客観的にみて、円安相場にはピーク感がある。しかし、機械売りは止まらない。「休むも相場」は機械に存在しないからだ。こういう客観的な相場観から言えば、円ショート(売越し)は危険水域である。それだけに、ロング(買い越し)が手控えられている。
「円安崩壊」は一瞬で起こる状態であり、円急騰は「機械の逆走」で発生する対照的な局面に向っている。円安は機械が作り、円高は機械が壊す。為替相場から、人間の芸術性が消えた結果、円安市場の崩壊は残酷なものになるであろう。現状は、まだ円高へのトレンドが、確定していない迷走状態にあることを示している。




