勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ: 経済ニュース時評

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    中国では、「二線都市」と呼ばれる中堅都市が高級ブランドにとって販売活動の最前線となりつつある。生活コストの低い街に住んで、高い生活水準を維持しようとする中間層の消費者が増え、高級品への出費が顕著に伸びているためだ。南京や長沙など20以上の中堅都市における高級品消費額が、北京や上海といった「一線都市」を上回る状況を受けての結果である。だが、同じ中国で一線都市の消費が不振でも、二線都市が堅調ということはあり得ない。景気循環論の視点で言えば、一線都市の消費不振はタイムラブをおいて、二線都市の不振へつながるであろう。

     

    『ロイター』(2月1日付)は、「中国『二線都市』が高級ブランドの最前線に、北京など上回る」と題する記事を掲載した。

     

    英高級ブランドのバーバリーやルイ・ヴィトンなどを傘下に持つモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)は南京や長沙など中堅都市での販売に力を入れ、中国の高級品市場の回復基調を示す売上を上げている。不動産サービス会社CBREの中国小売り部門責任者ジノ・ヘルムリンガー氏は、「今これらの二線都市が(高級品販売の)トップ10に入っているという事実は、考えてみれば驚くべきことだ」と話す。

     

    (1)「この数カ月前に発表されたデータで、南京にある商業施設の南京徳基広場が、長年トップだった北京の「北京SKP」を抜き、中国で最も業績の良い高級ショッピングセンターとなったことが判明した。江蘇省の省都(人口950万人)にある南京徳基広場の2024年の売り上げは245億元以上だったのに対し、北京SKPは222億元だったと国営メディアが報じた。アナリストによれば、25年も南京徳基が首位を維持した可能性が高いという」

     

    南京にある商業施設の「南京徳基広場」の売上が、24年から北京の「北京SKP」を抜いて中国1位になっているという。

     

    (2)「南京徳基広場には、美術館や最新のフードホールがあるほか、書道・クラシック音楽・サイバーパンクをテーマにした500平方メートルのトイレが設置されている。トイレは豪華な造りがSNSで話題となり、「セルフ・ポートレイト」やエスティローダー傘下の MACコスメティックスなどのブランドがポップアップショップを出店した。南京徳基広場について、チョウ・シヨンさん(24)は「美味しい料理の種類が豊富で、出店している店舗も素晴らしい」と話す。「徳基だけにしかないから、ここに来る」

     

    南京市場が脚光を浴びているのは、北京や上海が不振で目立ってきたという類いの話であろう。これは、消費の波が一線都市から二線都市へ波及するタイムラグの問題とみるべきだ。つまり、すでに一線都市の売上が落ちてきた以上、この余波がいずれ二線都市へ波及するまでの「一時的」現象と読めるのである。

     

    (3)「南京の様な二線都市では、生活費の安さを求めて北京や上海といった一線都市から来た中産階級が増えており、高級ブランドにとって重要度が増している。調査会社MDRiの調査によると、二線都市の高級品購入者は24年、平均25万3800元を消費。前年比22%増で、消費額が4%減の25万200元だった一線都市の消費者を上回った。高級ブランドは、従来の成長市場から流出し始めた消費者を追いかけており、バーバリーの場合、ブランド名の付いたスケートリンクの設置やスキー場でのポップアップショップなど、新たなマーケティング手法を試みている」

     

    二線都市は、生活費が安いといわれている。だが、二線都市だけ生活費が安い理由はなにか。それは、全般的に消費購買力が低くて、人件費が安いという意味であろう。とすれば、一線都市の消費不振の波がいずれ二線都市へ及ぶであろう。

     

    (4)「不動産コンサルティング会社サビルズ中国調査責任者のジェームズ・マクドナルド氏は「最近の(高級ブランドの)収益は緩やかな回復を示している。その要因として、一線都市での旗艦店体験や、中堅都市のトップ商業施設でのより的を絞った販売戦略など積極的な投資戦略がある」と述べた。不動産コングロマリット「徳基グループ」が所有する南京徳基広場は、南京地域で主要高級ブランドを全てそろえる唯一の商業施設であるだけでなく、Z世代の顧客をターゲットにしたより手頃な価格帯のブランドもそろっている。高級ブランドが気まぐれな若年層消費者の嗜好の変化を取り込もうとする中で、Z世代の影響力は増している」

     

    南京徳基広場は、南京地域で主要高級ブランドを全てそろえる唯一の商業施設であるという。こういう立地メリットが、他地域からも集客しているという事情を見逃せないのだ。

     

    (5)「CBREのヘルムリンガー氏は、「徳基は中国で最も高級品の販売密度が高い。超強力なVIP顧客の囲い込み戦略、ブランドとの深い協力関係、頻繁な店舗の入れ替えなど、商業効率において圧倒的だ」と指摘する。「ブランドは数キロ離れた別の商業施設に出店するよりも、むしろここに出店する機会を待つことを選ぶだろう」。ヘルムリンガー氏によれば、長沙国金中心(IFS)や武漢武商、杭州In77など、他の二線都市の商業施設も高級品売上ランキングで順位を上げている」

     

    集客力の強さという面が、売上を押し上げている。二線都市では、店舗数が少なく購買力が集中しやすい特性があるのだ。一線都市は、店舗数が多く分散しがちである。

     

     

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    中国軍部における最高幹部追放事件は、今後の米中の軍事関係に大きな影響が出るという指摘が出ている。人民解放軍の制服組トップである張又俠・中央軍事委員会副主席が失脚したことで、米国は人民解放軍との重要な連絡窓口を失ったと元米政府高官やアナリストらが指摘しているもの。習氏が、張氏を粛清したのは米軍のベネズエラ急襲との関連を疑った点も否定できまい。

     

    米国が、ベネズエラを急襲した際に米軍の作戦行動を支えたものに、「ダイナミックオントロジー」といわれる人工知能(AI)を活用した技術があったという。米軍は、大量の諜報、衛星データからベネズエラ大統領マドゥロ氏と周辺人物の所在や動き、会話をリアルタイムで把握していたとされる。

     

    この背後では、パランティア・テクノロジーズという、米国企業が米中央情報局(CIA)や国防総省、米軍と契約し、解析にあたっていたとされる。この情報システムでは、異なる軍、情報機関のデータと衛星からの音声、画像、動画を統合的に解析し、正確な位置情報や指示を現場に絶え間なく送る。スペイン語や中国語も方言を含めて判別してしまうというから、米国の敵方にされる国は、米軍へ対抗手段を失うほど高度の情報戦である。習氏は、こういう背景を理解せずに、米国通とされる張氏を疑い粛清したのかも知れない。

     

    『ロイター』(1月31日付)は、「中国軍制服組トップ失脚、対米パイプ喪失で高まる誤算リスク」と題する記事を掲載した。

     

    中国人民解放軍の制服組トップである張又俠・中央軍事委員会副主席が失脚したことで、米国は人民解放軍との重要な連絡窓口を失ったと元米政府高官やアナリストらが指摘する。

    習近平国家主席が人民解放軍の汚職取り締まりを進めている中で中国国防省は24日、張氏らが規律と法律の重大な違反の疑いで調査対象になっていると発表した。

     

    (1)「世界最強の軍隊を持つ米中間の衝突を避けるため、歴代の米政権は高官との連絡網構築に努めてきた。それだけに複数の元米政府高官はロイターに対し、張氏の失脚が衝撃だったと打ち明けた。ペロシ前米下院議長の台湾訪問に反発し、中国は人民解放軍と米軍の間の連絡を約1年5カ月間にわたってほぼ全て遮断した。習氏はその後、張氏に対してバイデン前政権下(民主党)の米国と連絡することを許可していた」

      

    張氏は、米中間のパイプ役であったという。習氏は、これを疑って米国へ情報を流していたと邪推したのであろう。最も信頼すべき副官を追放する。何やら、悲劇の幕が開き始めた不吉な感じもする。

     

    (2)「張氏は、中国がベトナムに侵攻したことで勃発した1979年の中越戦争で実戦経験を持つ数少ない軍高官の1人だった。中央軍事委員会を率いる習氏の有能な助言者だというのが米国側の認識だった。第1次トランプ政権で国務次官補(東アジア・太平洋担当)を務めたデービッド・スティルウェル氏は、2012年5月に1週間にわたって米国に派遣された軍事代表団に参加した張氏が中国人将校で唯一、米軍の輸送機オスプレイへの搭乗を希望したと回想。スティルウェル氏は「張氏は他の人民解放軍将校とは大きく異なる。米軍に非常に良く溶け込めただろう」とし、米軍の兵士との対話と兵器を試すことに熱心な姿勢から、政治的ではない職業軍人であるとの印象を受けたとして「張氏がいなくなることで失われるのは理性の声だと思う」と嘆く」

     

    張氏は、米軍の実態を理解しようとしていた。その意味では、軍人には珍しい「リアリスト」である。冷静に米中の軍事力を比較していたから、台湾侵攻へ慎重であったに違いない。習氏は、これが気に入らなかったのだ。

     

    (3)「張氏の失脚を受け、中央軍事委員会に制服組で残るのは張昇民副主席だけとなった。米国防当局者として張氏と関わった経験を持つシンガポールのS・ラジャラトナム国際研究院上級研究員ドリュー・トンプソン氏は「中央軍事委員会の(制服組)メンバーがたった1人しかいない場合、習氏は危機対応時に誰を招集するのか」と疑問を投げかけた上で、「習氏は聞きたいことを言うおべっか使いから誤った助言を受けるリスクがある」と指摘。「それは誤算のリスクを生む」と警鐘を鳴らした」

     

    習氏は、最も危ない状態へ自ら身を置くことになった。あるいは、これを好条件として、台湾侵攻を急ぐのか。前記の「ダイナミックオントロジー」といわれる人工知能(AI)を活用した技術が、習氏の周りにも張り巡らされていることを想定すべきであろう。

     

    (4)「米首都ワシントンに拠点を置く安全保障コンサルティング会社ブルーパスラボの中国軍事専門家、エリック・ハンドマン氏は、習政権下の軍隊間交流は中央軍事委員会のレベルであっても台本通りになる傾向があるとして「人民解放軍は自らの能力をかなりうまく把握しており、準備が整う前に台湾有事へ動くことに関心はない。私の疑問点は、習氏が軍の意見をどこまで聞いているかだ」と話す。その上で「習氏が、もっとたちの悪い助言を受けていないかが心配だ」と打ち明けた」

     

    習氏は、軍事問題についてまともに相談する相手を失った。質の悪い助言を真に受けて、台湾侵攻すれば、大変な事態を招く。自らの政治生命も失う結果になるからだ。

     

    (5)「米政府高官は、トランプ政権(共和党)が中国の「体制内陰謀に関する報道」についてコメントする立場にないとした上で、米国が「(中国の海洋防衛ライン)第一列島線の全域で侵略を阻止できる軍隊を構築している」と解説した」

     

    米軍は、第一列島線内で中国軍を殲滅する態勢を強化している。習氏が、空母3隻の幻想にひきづられると、大変な悲劇を招く。

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    中国国家統計局が、1月31日発表した1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.3だった。前月より0.8ポイント低く、2カ月ぶりに好調・不調の境目である50を下回った。新規受注の不振が響いた。需要不足を露呈した形だ。

     

    『ロイター』(1月31日付)は、「中国1月製造業PMIが50割れ、非製造業は22年12月以来の低水準」と題する記事を掲載した。

     

    中国国家統計局が、31日発表した1月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、49.3に低下し、景況拡大・縮小の分かれ目となる50を割り込んだ。内需低迷が生産活動を下押しした。ロイターがまとめた市場予想(50.0)も下回った。12月は50.1だった。

     

    (1)「PMIを構成する新規受注指数は前月の50.8から49.2に低下し、新規輸出受注指数は49.0から47.8に低下した。サービス業と建設業を含む非製造業PMIは12月の50.2から49.4に低下し、2022年12月以来の低水準となった。国家統計局のHuo Lihui氏は、製造業の一部業種が例年1月に活動が鈍るほか、市場の需要が依然として弱いと述べた」

     

    1月は、受注が振るわなかった。新規受注指数は、前月の50.8から49.2に低下。新規輸出受注指数は、49.0から47.8へ低下。前月比での落ち込みは、新規受注指数が3.2%。新規輸出受注指数は、2.5%となった。受注の落ち込みは、今後の生産を抑制するので尾を引くので要注意である。

     

    サービス業と建設業を含む非製造業PMIは、12月の50.2から49.4に低下し、2022年12月以来の低水準となった。建設業不振は設備投資やインフラ投資が減っているので理解できるが、サービス業不振は気懸かりだ。サービス業は、消費など内需不振が響いたものだ。

     

    若年失業率(1624歳を対象)は、25年12月が16.5%だった。前年同月と比べて0.8ポイント高かった。23年12月分から現役学生を調査対象から外したため、以前のデータとは単純比較ができないが、不動産バブル崩壊前の20年12月は12.%だった。若年雇用の悪化は止まらないのだ。

     

    (2)「中国当局は家計の財の消費を喚起するのに苦戦しており、サービス消費の刺激策に軸足を移しつつある。それでもアナリストは、当局の措置が成長安定化にどれだけ寄与できるかについて懐疑的なままだ。野村のチーフ中国エコノミスト、陸挺氏はリサーチノートで「2026年に国内総生産(GDP)成長率4.5%超を達成するには、政府は今後数カ月でさらに強力な政策を講じる必要がある。容易に実施できる政策手段が枯渇しつつあるため、当局はより包括的な対策の準備に時間を要する可能性がある」と指摘した」

     

    政府はこのほど、消費者が5万元(約110万円)未満の商品や、車など一部の高額商品の購入時に組むローンへの利子補助を26年末まで延長すると発表した。25年の開始当初は26年8月に終了する予定だった。家計の借り入れ需要を刺激して消費を促す狙いだが、新味はなく効果を疑問視する声が多い。こうした新味のない政策では、消費回復が困難である。当局はより包括的な対策の準備に時間を要する可能性があると指摘している。

     

     

    テイカカズラ
       

    韓国の合計特殊出生率は、世界ワーストワンである。それだけ早く、人口減が進むという予測だ。人口統計予測は、数ある統計の中で最も信憑性の高いものとされている。このことから言えば、韓国の人口減が世界で最も早く進むはずである。それにもかかわらず、韓国の地価は日本の3倍という。どうみても、「バブル」である。いずれ暴落すると警戒論が出ている。

     

    『レコードチャイナ』(1月31日付)は、「韓国の地価は日本の3倍? 20年以内に大幅下落の懸念も=韓国ネット『ゾッとした』『対策が必要』」と題する記事を掲載した。

     

    韓国メディア『ノーカットニュース』(1月28日付)は、韓国の土地価格が日本と比べて極めて高水準にあり、今後20年以内に不動産価格が大きく下落する可能性があるとの分析が示されたと報じた。

     

    (1)「記事によると、与党「共に民主党」の韓貞愛(ハン・ジョンエ)政策委員長が自身のフェイスブックアカウントで公開した韓国の土地資産価格水準と日本の統計資料を分析した資料で、韓国全体の土地の単位面積当たりの価格が日本の3倍を超えたという。資料では、国土面積が約37万平方キロメートルの日本の全国の土地価格総額は、約1京5000兆ウォン(為替レートを1ウォン=01円で換算、約1500兆円)と推計されている。一方、国土面積が約10万平方キロメートルの韓国では、全国の土地価格総額がすでに1京2000兆ウォン(約1200兆円)を超えているという。これにより、単位面積当たりの土地価格は韓国が日本の3倍となる。また、生産資産価格に対する土地価格の比率は、日本が約60%であるのに対し韓国は約120%と日本の2倍近い水準になっているという」

     

    地価は、GDP成長率と密接に絡んでいる。韓国の潜在的成長率は今後、急激に落ちていくと見られているだけに予断はできない。

     

    (2)「韓政策委員長は、「今後20年間の急速な高齢化の進行を考慮すると、韓国の全国平均の土地価格や住宅価格が大幅に下落する可能性を示している」と指摘。「その場合、家計や金融市場に及ぼす影響は非常に大きく、容易に見通すことはできない」との懸念を示したほか、「不動産に過度に偏った資産形成構造を生産的な資本へと移行させるため、制度改善や政策立案を継続していく」と述べたという」

     

    20年を待たずに地価調整が起るであろう。すでに、実質GDP成長率では、日韓の差がなくなるほど、韓国の成長率減速が目立っている。

     

    (3)「記事は、「韓国社会が抱える不動産依存型の資産構造が、人口構造の変化とともに大きな転換点を迎える可能性がある」とし、今後の政策対応が注目されると伝えている。これについて、韓国のネットユーザーからは、「日本の3倍という数字を見てゾッとした」「ここまで高いのは正常とは言えない」「若者が家を買えない理由がはっきりしている」「不動産に資金が集中する構造を放置してきた政治の責任だ」「金融や年金を含めた総合的な対策が必要だ」「急落した場合、家計より先に金融機関が危ない」といった声が上がった」

     

    韓国は、慢性的な不動産投機に襲われている。少しでも金融緩和すると、すぐに土地の値上がりに直面している。地方から首都圏へ一方的に人口が流入している結果だ。


    (4)「一方で、「人口が減って高齢化が進めば下がるのは当然だ」「20年後の話を今から断定するのは早いのではないか」「ソウルと地方を同じ尺度で語るのは無理がある」「日本と韓国では土地制度や都市構造が違う」「下がると言われ続けて、結局上がってきたのが現実だ」などの声もあった」

     

    韓国の名目GDP成長率が1%を割れば、確実に地価は値下がりする。いまは、不動産投機に酔っている時代で、過去の値上がりの夢から覚めないだけだろう。

     

     

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    習近平中国国家主席は、人民解放軍中央軍事委員会副主席張又侠氏ら2名を粛清した。この唐突な事態は、深刻な経済停滞と台湾侵攻作戦遅延で、習氏が焦っていたことを示している。習氏が、人民解放軍へ深い猜疑心を持っていることを裏付けた。こういう局面で、高市首相の「台湾発言」が飛び出したのである。習氏が、これに本能的に反応して激烈な日本批判を始めた。こういう、新たな見方が出ている。

     

    『ニューズウィーク日本語版オンライン』(1月30日付)は、「高市首相の発言は正しかった...『対中圧力』と『揺れるアメリカ』に向き合う『日本の戦略』とは?」と題する記事を掲載した。筆者は、元CIA工作員グレン・カール氏である。

     

    中国政府が台湾に武力を行使すれば、それは日本にとって自衛隊の出動を正当化する「存立危機事態」になり得る──高市早苗首相が昨年11月の国会答弁で述べたこの言葉は、日本政府の長年にわたる立場を再確認したものにすぎない。だから無視してもよさそうなのに、中国側の反応は不自然なほどに過剰だった。

     

    (1)「中国軍が昨年12月下旬、台湾を包囲する実弾演習を実施して民間機の発着を阻害し、10万人以上の旅客に影響を与えた。それは米国のナンシー・ペロシ下院議長(当時)が台湾を訪問した2022年以来の大規模な軍事演習だった。日本の指導者が台湾について発言することには必ずリスクが伴う。現に中国は今回も怒ってみせた。しかし私は、この激烈な反応も実は米国と台湾に向けた、さらには国内に向けた戦略的な動きではないかとみている。そして高市首相の周辺も同様な見方をしていると思う」

     

    中国が、昨年11月の高市「台湾発言」以来、過激な言動と中国軍の台湾包囲の大演習を行い日本への不満を表わした。だが、本当の狙いは、米国と台湾に向けた牽制であるという。

     

    (2)「だが横暴で身勝手な大国の常として、中国は高市首相の政策を自国の覇権に対する脅威と見なす(実際は中国の脅威に対する反応なのだが)。だから生意気な高市には、その無礼な言動への代償を払わせねばならないということになる。中国は高市の「存立危機事態」発言に不快感を示す一方で、台湾周辺での大規模な軍事演習によって米国をも挑発したのだ」

     

    高市発言は、米軍の台湾防衛出動を前提にしている。中国としては、日本牽制が米国と台湾へ向けた警告でもあろう。

     

    (3)「昨年12月17日、トランプは急に気が変わったのか、台湾の主権に対する中国の脅威に対抗する形で台湾に111億ドル相当の武器を売却すると発表した。単一の武器取引としては米・台湾間で史上最大の規模だ。この支援は台湾の主権を守るという米国政府の長年にわたる約束に沿うものだが、「米国ファースト」の範囲を超えた国外への軍事的関与を嫌うトランプ流の孤立主義とは矛盾していた。その12日後、中国は台湾周辺で威嚇的な軍事演習を実施し、日本から台湾への空路・海路を実質的に遮断することで怒りを表明した」

     

    米国トランプ氏は、日中の対立に何ら発言しなかったが、台湾へ111億ドル相当の武器を売却すると発表。米国は、中国の牽制に対して「武器売却」で回答した。間接的な高市発言支持である。

     

    (4)「中国は、米中間で「大いなる取引」というアメを見せておいてムチを振るう一方、日本に対しては罰を与え、日本が果たそうとする自立した戦略的役割を無力化する試みだった。中国は台湾や日本の領海に対する侵犯の頻度も上げており、国際的に公海と認知されている海域での主権主張も繰り返している。高市発言を含め、台湾や南シナ海における主権の主張に反対するいかなる発言も許さず、それを自らの行動規範を押し付ける機会として利用するのが中国流だ」

     

    中国は、強い米国へは「微笑」を送る一方で、日本へは「罰」を与えるという傲慢な振舞をしている。かつて日本が、ODAで3兆円も支援したことを忘れた顔である。こうして中国は、対外的に強気姿勢である。だが、問題は国内で発生している。


    (5)「高市発言への過剰な反応の背景には、中国の国内事情や軍・政府部内の腐敗もありそうだ。その攻撃的な姿勢は見せかけにすぎず、中国軍が依然として台湾を占領する能力を持たず、腐敗や効率の悪さに苦しんでいる事実を隠したいだけだという解釈も成り立つ。現に習は汚職その他の不正行為を口実に、何十人もの高級将校を解任または更迭している。こうした動きや高市発言に対する過剰反応から透けて見えるのは、中国が自らの能力に対して抱く不安感であり、いかに習政権の国内基盤が盤石でも、国際社会では思いどおりにいかないことへの焦りではないか」

     

    習氏が、「一日千秋」の思いで過ごしている台湾侵攻作戦は、中国軍内部から「無理」という声が出ている。習氏は、これに対して粛清というムチを振るっている。絶対に許さないという姿勢だ。習氏は、軍事教育を受けた経験がない。こうした「軍事の素人」が、国家のトップに座って「勝利」を夢見るという最悪な状態にある。犠牲は軍隊、果実は習近平という構図である。

     

    (6)「皮肉なもので、中国共産党は国内の抗争や腐敗で支配の正統性が脅かされるたびにナショナリズムを鼓舞してきた。反日感情と「反植民地主義」に代表されるナショナリズムと台湾の併合、そして経済成長こそが、辛うじてその正統性を支えてきた。気が付けば中国の共産主義は習の個人崇拝に変質し、個人の権利は国家の優越に従属させられ、治安と安保が最優先の国になっている。だからこそ中国側は高市発言に食い付き、日本を悪者にすることで国民の不満のガス抜きを図った。つまり、高市首相の発言も日本の政策も正しいが、国内外の複雑な力関係が錯綜するなかで条件反射的な反発を招いたと言える」

     

    高市発言は、習氏が焦っている最中に飛び出した。習氏は、これを絶好の機会と捉えてナショナリズムを煽っているにすぎない。問題の本質は、中国国内にある。

     

     

     

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