勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > アジア経済ニュース時評

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    中国政府は、大学でマルクス主義を専攻した学生の就職を後押している。企業側も、政府の要望に応えれば後々、便宜を受けられると期待し、採用しているという。一般学生には、超狭き門の就職地獄だが、マルクス・ボーイには「マルクス様々」という御利益を受けられるご時世だ。

     

    英紙『フィナンシャル・タイムズ』(6月29日付)は、「中国でマルクス主義専攻の大卒者に求人殺到」と題する記事を掲載した。

     

    中国の労働市場が近年で最悪の状況にあるなか、同国の大卒者は就職先を見つけるのに苦労している。しかし、マルクス主義の学位を持っていれば話は別だ。

     


    (1)「マルクス主義は、中国の支配的な思想であるにもかかわらず、過去何十年もの間、学生にはなじみが薄い専攻科目だった。しかし、習近平国家主席の下で復活を遂げつつある。今年、異例の3期目を目指す習氏は、中国共産党の幹部に「初心を忘れずに」と説いている。大卒者向け就職情報サイト「応届生」によると、今年は採用のピークである46月にマルクス主義の学位を条件にする求人が前年同期に比べて20%増加した。マルクス主義の専門家は、政府省庁から民間複合企業まで、様々な雇用主から引く手あまただ」

     

    中国は、マルクスの世界だ。150年も昔の学説にしがみつく。何とも不思議な感覚で政権運営している。凡そ、イノベーションと無縁のこの経済理論で、14億人の国民を食わせるというのだ。マルクスの伝道師は、マルクス専攻学生である。去年に比べて、求人は20%も増えている。引く手あまたという。

     


    (2)「アナリストらは、マルクス主義を学んだ大学卒業生に対する人気は習氏が進める思想教育の強化が影響していると説明する。中国は米国への対抗意識を強めており、ロシアのウクライナ侵攻から新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)への対応まで、米中両国は全く異なるアプローチをとっている。米ニューヨーク市立大学の夏明教授(政治学)は「マルクス主義専攻の目的は、国民全体を洗脳する思想警察を養成することだ」と指摘する」

     

    マルクス主義専攻生への求人増加は、習氏が進める思想教育の強化が影響しているという。身近に、「マルクスの先生」がいれば、マルクス主義の浸透に役立つという狙いからだ。

     


    (3)「河南省にある大学でマルクス主義を学ぶ3年間の修士課程のカリキュラムには「思想教育の原理と方法」 という単位が含まれるほか、学生たちは習氏の教育に関する演説について18時間学習する。習氏が2012年後半に政権を取るまでの30年間は1978年に鄧小平氏が打ち出した改革開放の時代で、思想として正しいかどうかよりも経済的な繁栄が重視され、マルクス主義の学科は苦戦を強いられた。しかし、習氏は「共同富裕(ともに豊かになる)」を重視する方針を打ち出して民間複合企業への規制を強化し、世界で最も不平等な社会の一つである中国において貧富の差を縮小し、思想をより厳しく取り締まる「新しい時代」を統治したい考えを表明している」

     

    「共同富裕」は、税制改革で実現できる。習氏は、それを避けてマルクス主義で押し通す計画である。これは、マルクスにとってはなはだ迷惑な話だ。マルクスは平等を説いている。それならば、富める者が税金を多く負担するのが筋である。習氏は、共産党員の負担を避けて、大衆に負担させようというマルクスの教えと逆のことを始めている。

     


    (4)「習政権は、国家資本主義体制下での労働者虐待についてマルクス主義による分析を使って厳しく批判する若者らを弾圧している。一方で、中国の共産主義体制がなぜ欧米より優れているかを一般国民に教育する上で重要な役割を担っている教師らを積極的に求めている。共産党が国家主席の任期を2期までとした制約を撤廃した18年、中国の教育省は各大学に対し、学生350人につき少なくとも1人のマルクス主義の教員を採用することを求める通達を出した。それを受けてまもなく、マルクス主義教員の獲得競争が起こった。大学の「思想と政治」担当教員の数はその後の4年間で3分の2増えた」

     

    習氏の狙うマルクス主義は、空理空論の世界を目指す手段である。習氏の「終身皇帝」への布石でもある。誰も、習氏の国家主席3選に反対できないように細工を施す。それが、マルクス主義の布教であるのだ。各大学に対し、学生350人につき少なくとも1人のマルクス主義の教員を採用することを求めている。中国は、これでますます西側世界と断絶しようとしている。

     


    (5)「マルクス主義の学位は不況に強いようだ。若者の失業率は現在18.4%と歴史的な高水準にあり、他の学科を専攻した大卒者の就職は厳しくなっている。しかし、「応届生」のサイトでマルクス主義の教師の募集要項をみると、給与や手当が従来人気のあった経営学などの専攻に追いついてきている。陝西省では都市労働者の平均年収は5万2000元(約106万円)だ。同省にある西安科技大学では、マルクス主義の博士号習得者には20万元の年俸に加えて2万元の契約金と無料の住居を提供している。「マルクス主義を専攻した学生にとって、今がゴールデンタイムだ 」と同大学のある関係者は語った」

     

    マルクス主義専攻生は、給与も桁違いに良くなる。まさにマルクス主義の伝道師の役割を担うのだ。

     

    (6)「中国の電子商取引(EC)最大手アリババ集団の創業者である馬雲(ジャック・マー)氏や不動産大手中国恒大集団の創業者である許家印氏などテクノロジーや不動産の起業家に対する締め付けを受け、民間企業もマルクス主義を専攻した大卒者を採用し、共産党への忠誠をアピールしようとしている。上海に近い浙江省寧波で工作機械工場を経営するデビッド・トン氏は「党の考えを代弁する人が我が社で働いてくれるのはありがたい。政府からの信頼が高まるからだ」と語った」

     

    時代遅れのマルクス主義を広めて、一党独裁を確固たる制度へ育てる積もりだ。いずれ、中国経済破綻の際に、マルクス主義がヤリ玉に上げられる。それまでは、我が世の春を謳歌するのだろう。

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    中国は、人口増加だけをテコにして経済大国へのし上がった国である。これは、科学技術の発展を置き去りにした「模倣経済」のもたらしたものである。習氏は、国民に向かって根拠もなく「中華の夢」を煽った手前、欧米製のワクチンを導入できず、ゼロコロナ政策しか選択できない苦境に立たされている。

     

    『ブルームバーグ』(6月29日付)は、「習主席、ゼロコロナ政策は中国にとって最も経済的かつ効果的」と題する記事を掲載した。

     

    中国の習近平国家主席は6月28日、新型コロナウイルスを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策は中国にとって最も経済的かつ効果的であり、中国はコロナを根絶する目標を達成することができると表明した。

     

    (1)「国営新華社通信によると、習主席は最初のコロナ禍に見舞われた湖北省武漢市を同日訪れた。今回の発言で、中国がロックダウン(都市封鎖)や大規模検査を軸とするコロナ対応を撤回する計画がないことが明確になった。28日に渡航を巡る制限が予想外に緩和され、中国は慎重ながらも出口戦略に着手しつつあるとの見方もあったが、習氏の発言はこうした期待に水を差すことになりそうだ」

     


    中国本土株の指標CSI300指数は29日、前日比1.5%安で終了した。28日は、渡航を巡る制限が予想外に緩和され、中国は慎重ながらも出口戦略に着手しつつあるとの見方が広がり、前日比1%高で引けたものの帳消しになった。29日の香港市場では、中国のテクノロジー企業から成るハンセンテック指数が3.3%安で引け、悲観ムードに覆われている。中国経済の先行きの不安観を高めた結果である。

     

    コロナウイルスは、次々と新種が登場して感染力を高めている。中国製ワクチンでは、とうてい予防が不可能であり、米欧製ワクチン「mRNA」でなければ対抗不可能とされている。新種のコロナウイルスでも「mRNA」であれば、簡単に対抗可能とされている。こういう高度のワクチは、中国では製造できない状況が続いている。だから、ゼロコロナで都市封鎖して逃げ回っているだけだ。

     


    (2)「新華社によれば、習主席は「中国の人口基盤は大きい。『集団免疫』や『寝そべり』政策を採用すれば、その結果は想像を絶する」と説明。「一時的に経済発展に多少の影響があったとしても、高齢者や子供など人民の生命の安全や身体の健康を損ねるようなことがあってはならない」と述べた。また、中国の発展は独立性と自主性、安全性を高める必要があるとも指摘。科学技術の「命綱」は自国の手でしっかりと握り続けなければならないと言明した」

     

    習氏は、矛楯したことを言っている。「集団免疫」と「寝そべり」は無関係であり、これを並列しているところに習氏の恐怖感が期せずして現れている感じだ。

     


    「集団免疫」は、「ウイズコロナ」によって感染者が増えても、治療態勢が完備していればおのずから達成できる道である。中国では、治療態勢が不備であり、一度感染者が急増すれば、医療崩壊を起す危険性を高めるのだ。そこで、次善の策として感染者そのものを増やさないゼロコロナ対策を取らざるを得ない事情にある。苦し紛れの逃げ道であって、自慢すべきことでなく恥ずべきことなのだ。

     

    寝そべり」は、習氏の強引な政策に対して若者が絶望感のあまり、就職しない・結婚しないという形を変えた政府への抵抗運動である。習氏は、こういう表面的な現象だけを見ており、それが奥深いところで中国共産党への絶望感であることが分らないのであろう。「集団免疫」が実現できる社会環境であれば、「寝そべり」は生まれないのだ。

     

    習氏は、科学技術の「命綱」を自国の手でしっかりと握り続けなければならないと主張している。これも苦し紛れの発言だ。自国だけで有効なワクチンを開発できなければ、人命に関わるだけに米欧からの導入を躊躇してはならない。習氏は、自国ワクチンを自慢し過ぎて、今さら米欧製ワクチンを導入できないというジレンマに立たされている。それを、言葉巧みにカムフラージュしているだけだ。

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    韓国は、去年から人口減になった。日本の人口減入りが2010年である。韓国はあらゆる経済データが、日本と約30年のタイムラグがある。このパターンから言えば、韓国は2040年に人口減入りしても不思議でなかった。それが、2021年の人口減だ。19年も前倒しである。ちなみに、中国は今年から人口減入りが確実である。

     

    中韓に見られる、大幅前倒しで人口減入りする原因は、「合計特殊出生率」の急低下にある。韓国は、人口横ばいに必要な合計特殊出生率「2.08」を大きく下回って、「0.84」と世界最低記録を更新中だ。

     

    この背景には、儒教特有の「男尊女卑」がある。韓国の若者社会では、男性と女性の意識が鋭く対立している。若い女性が、結婚・出産に乗り気でない理由の一つに、夫の育児協力のなさを上げている。女性は、職業と育児の両立は不可能としており、韓国の「男尊女卑社会」の悪弊が改まらない限り、出生率はさらに低下する運命のようだ。

     


    米ノースウェスタン大学経済学科のマティアス・ドゥプケ教授の研究チームが5月、全米経済研究所(NBER)を通じて公開した「出産の経済学:新しい時代」と題する報告書が注目されている。OECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に約40カ国が調査対象だ。

     

    それによると、女性の経済活動が活発な国で出生率が高いこと。また、男性が育児と家事にあまり積極的ではない国で出生率が低い傾向が見られた。男性の家事や育児への貢献度の高いスウェーデン、アイスランド、ノルウェー、フィンランド、米国の上位5カ国は、いずれも合計特殊出生率が1.8人を超えた。寄与度の低い下位5カ国は1.5人未満だった。チェコ、日本、韓国、ポーランド、スロバキアがこれに属した。日本にとっても耳の痛いデータだ。

     

    『中央日報』(6月28日付)は、「『韓国』が絶滅する?」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙のキム・チャンギュ経済エディターである。

     

    テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は先月、韓国の人口減少に言及した。日本の人口が11年連続で減少していることについて「出生率が死亡率を超えるような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう」と警告した後だ。マスクCEOはツイッターで「韓国と香港は最も速いペースの人口崩壊に直面している」とし、世界銀行の2020年国別出生率の順位表も共有した。

     

    (1)「これによると韓国の出生率は0.84人で、200カ国のうち最も低い。世界で人口が最も急速に減少している国が韓国だ。香港は0.87人で199位、日本は186位(1.34人)だった。マスクCEOは「韓国の出生率が変わらなければ3世代のうちに韓国の人口は現在の6%以下に減少するだろう」とコメントした」

     

    欧州の出生率も、ゆっくりと下がっている。男女同権が地に着いているので、夫の育児協力は当たり前のことだ。それでも低下しているのは、女性の高学歴化と社会進出によるもの。韓国では、男性は女性より「偉い」という根拠なき優越感に浸って、夫「風」を吹かせているようだ。日本もその嫌いはあるが、韓国はより鮮明に出ている。儒教の悪しき弊害であろう。

     


    (2)「最近の韓国経済は風前の灯火のようだ。原油価格が上昇し、サプライチェーン問題で世界はインフレーションの恐怖に包まれている。今回の景気沈滞は、韓国にとって時期的に良くない。韓国は2020年(注:正しくは2021年)から人口の減少が始まった。初めて死亡者数(31万人)が出生数(27万人)より多い「デッドクロス」が発生した。人口の減少は成長潜在力を低下させる。統計庁の将来人口推計によると、総人口は2020年の5184万人から2030年に5120万人、2040年に5019万人、2050年に4736万人に減少する。30年間に釜山の人口(336万人)の1.3倍ほどの448万人(8.6%)が消える」

     

    景気が悪いことは、出生率低下に拍車をかける。雇用不安を抱えていたのでは、結婚・出産を諦めるからだ。韓国で、今年1月から4月までに全国産婦人科など医療機関で新生児を分べんした産婦は8万1454人。過去最低で、今年は年間で25万人程度と最悪予想が出ている。「韓国絶滅」は、冗談として聞き逃せなくなった。

     


    (4)「人口が減れば創業する人が減り、雇用も減少する。こうなると成長が鈍って所得が減る。収入が減れば若者が結婚を避け、子どもを持とうとしない。結局は「人口減少→成長率低下→所得減少→人口減少」の悪循環に入る。英国の人口学者ポール・ウォーレス氏は人口減少が大地震に劣らずマイナスの影響を与えるとし、これを「
    人口地震」と表現した。状況がこれほど深刻であるにもかかわらず、政府も民間も総体的な対応をしない。政策決定権者が主に暮らす大都市では人口減少を肌で感じることができないからだ」

     

    文政権は、出生率低下に対して冷淡であった。北朝鮮と統一すれば、全体の人口が増えると言った感覚であったのだろう。新政権では深刻に捉えている。

     


    (5)「2005年に低出産高齢社会委員会が発足してから15年間、220兆ウォン(約23兆円)以上の資金を少子化対策に投入した。それでも人口問題は悪化していった。最悪の状況になればその時には打つ手がない。いま韓国は、徐々に温まっていく水の中のカエルと同じだ。新政権も24日、人口危機対応TFを設置した。過去の前轍を踏まないためには国を救うという使命感を持って取り組む必要がある。韓国という国を存続させるために」

    韓国に巣食う儒教倫理の男尊女卑社会を改めなければならない。「社会改造」する気迫で取り組まなければ、韓国は消える運命だ。

     

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    中国が、3隻目の空母「福建」の進水式を行なった。実際に就役するのは数年後とみられている。空母は、「金食い虫」と言われるほど維持費に高い費用がかかる。そういう「高コスト」空母をさらに増やした理由はなにかだ。

     

    空母は、遠距離での戦闘に使われる。「移動する基地」と言われる理由のように、本国から遠く離れた場所での戦闘に不可欠である。だが、台湾は中国と「目と鼻」という至近距離である。空母を台湾侵攻作戦に使うとしても、相手国から潜水艦やミサイルで攻撃される危険性が極めて高くなる。そういうリスクを冒してまで、空母を建艦するのは別の目的とみられる。近隣国への威嚇用だ。潜水艦を持たない国には、中国の潜水艦は恐怖の的。中国は、そこへ付け入る計画であろう。

     

    『ニューズウィーク 日本語版』(6月27日付)は、「なぜ今どき空母?『ポスト米国』見据える中国の不可解な3隻目『福建』」と題する記事を掲載した。

     

    中国は6月17日、3隻目の航空母艦を進水させた(純国産としては2隻目)。真にグローバルな機動力を備えた軍事大国を目指す中国政府の決意を見せつけるものだが、そこにはアメリカの誇る世界最強の空母艦隊と対等に張り合いたいという願望も透けて見える。

     

    (1)「アメリカの軍事的優位を支えてきたのは海軍力であり、海軍力の要は空母艦隊だ。しかし今、中国は「うちのほうが巨大で高性能な空母を造れるぞ」と言いたいらしい。だが、まだ無理だ。「福建」と名付けられたこの空母(狭い海峡を隔てて台湾と向き合う省の名であるのが不気味だ)が、既存の2隻より高性能なのは確かだ。今までの2隻は小さく、艦載機の発進にはスキーのジャンプ台のように反り上がった甲板を使っていた。しかし福建には、アメリカの最新鋭空母ジェラルド・フォードと同様に電磁式カタパルトが採用されている」

     


    初めて電磁式カタパルト(艦載機押出し装置)を装備するが、大変に電力を消費する。そういう電力多消費のカタパルトが、通常動力の空母には不適当というのが軍事専門家の意見だ。台湾侵攻目的であれば、戦闘機は中国本土の基地から飛び立つ方が効率的である。中国の本当の狙いは何か、だ。

     

    (3)「福建は、原子力空母ではない。だから補給なしの航続距離は限られる。しかも進水したばかりで、実戦仕様にまで高めるには何年もかかる。一方でアメリカには福建級の空母がたくさんあり、どれも福建以上の戦闘能力を備えている。第2次大戦時のミッドウェー海戦のように、空母を中心とした艦隊の激突が21世紀に再現される可能性は低い。今や攻撃の主役は潜水艦や対艦ミサイルであり、空母はその標的になりやすい」

     

    中国空母が、台湾海峡で作戦行動するケースを考えると、その前に米国の原子力潜水艦攻撃で沈没させられているとみられる。中国海軍は、近代戦を戦った経験がゼロだ。米海軍は、世界の海軍で古い歴史と豊富な実戦経験がある。米中海戦で、中国海軍の劣勢は免れないとされる。米海軍の総合戦略は、中国の比でないのだ。

     


    (4)「そもそも冷戦終結後のアメリカが空母を実戦で使ったのは、海からの攻撃に無防備な国(イラクやリビア)に対してだけだ。中国の意図も同じだろう。中国は巨大空母を弱小国に対する威圧や懲罰に使いたいのであり、アメリカと戦うつもりではない。もちろん、現時点で中国が太平洋に空母艦隊を出そうとすれば、どこかでアメリカの安全保障ネットワークに引っ掛かる」

     

    中国は、ロシア軍の戦略を採用している。ロシア軍が、ウクライナ軍にてこずっていることから分るように、中国軍が米軍と戦えばその帰趨は明らか。日清戦争に次いで「二連敗」を喫しよう。

     


    (5)「アジア太平洋に張り巡らしたアメリカの安全保障ネットワークが、ほころんできたらどうか。現に中国は南シナ海で、ほとんど誰にも邪魔されずに人工島を造ってきた。
    つまり中国は、アジアにおけるアメリカの軍事的存在感が今よりも低下する時代を見据え、「アメリカ以後」のアジア太平洋で周辺国を威圧するために福建のような空母を必要としている。ただし、空母艦隊だけでアジアの海を支配するのは無理だ。太平洋は広い。いくら中国の軍事的リソースが豊富でもカバーし切れない」

     

    「ポスト・アメリカ」という想定は非現実的である。米中経済の比較では、中国が先に衰退過程へ入ることになる。人口動態から見て、中国の衰退は不可避なのだ。となると、中国が空母を建艦しても「お飾り」程度の役割しか果たさないであろう。周辺国への威嚇目的である。

     


    (6)「そもそも中国が力を入れてきたのは、自らが太平洋における覇を唱えるための戦力ではなく、アメリカの覇権を阻止し、後退させるための戦力だ。そのために対艦攻撃能力を向上させ、潜水艦をはじめ、超低空飛行ミサイルを搭載した航空機、小型の高速艇、航行中の船舶を標的にできる弾道ミサイルなどの配備を進めてきた。こうなると、米軍の艦艇も容易には中国の沿岸部に近づけない。中国が、軍事面でアジアの海洋大国になるのを全面的に阻止するのはコストもリスクも高すぎる。空母は中国のパワーの象徴ではあるが、だからといって、中国が必然的にアジア海域を支配するようになるとは限らないのだ

     

    中国海軍は、世界覇権を目指す戦略に基づくものでなく、米軍を中国沿岸部に近づけない目的としている。ならば、空母は不必要となろう。矛楯した戦術になるのだ。あわよくば、世界覇権を狙うという戦略の飛躍も隠されている。ここに、落し穴があるのだ。

     

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    中国は、長引いたロックダウンの影響と、政府のハイテク企業規制強化で雇用状態は最悪期を迎えている。大手ハイテク企業は、1割の人員削減を迫られており、大学生の就職内定も取消されている。中国では、参政権を奪われている代わりに、高い経済成長が約束されてきた。この「約束」が反古にされており、改めて中国共産党への信頼感が揺さぶられる事態に直面している。

     

    『ロイター』(6月25日付)は、「中国の大学新卒者『空前の就職難』ゼロコロナが拍車」と題する記事を掲載した。

     

    中国経済は昨年の不動産市場の冷え込みや地政学的問題、当局によるハイテク、教育など幅広い産業への締め付けで既に減速していた。そこに追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ政策」と言える。一方で、数十年来で最悪の状況となった労働市場に、ポルトガルの全人口を上回る規模の中国の大学新卒者(1080万人)が、一斉に参入しようとしている。足元の若者の失業率は、全世代の3倍以上で過去最高の18.4%に達している。

     


    (1)「こうした就職できない若者の大量発生が、中国社会にどう影響するかは全く読めない。中国が何十年も高成長を続けてきた後で、職探しに苦労するという事態は、せっかく高等教育を受けてきた若者にとって全くの想定外だ。社会の安定を最優先に考える共産党指導部にとっても、特に今年は習近平国家主席の続投が秋に正式に決まろうかという局面で、若者の雇用不安が起きるのはあまりにも間が悪い」

     

    過去の高度成長の成果で、大学進学者は大幅に増えた。今年6月の卒業生は1080万人である。これらの人々が就職するには、「5.5%前後の」GDP成長率が不可欠であった。これも今や実現不可能で、3%前後の成長率予測が多数である。大量失業は不可避だ。

     

    (2)「北京大学のマイケル・ペティス教授(ファイナンス)は、「(中国の)政府と人民が交わした社会契約では、人民が政治に参加しない代わりに、生活水準が年々向上すると保証されている。だから、懸念されるのはいったんこの保証が崩れれば、契約の他の部分も変わらざるを得なくなるのではないか、という点にある」と述べた」

     

    中国では、選挙権ゼロの代わりに「失業ゼロ」が、共産党と国民の間で一種の「社会契約」となってきた。この契約が守られない以上、政府はペナルティをどう払うのか、という新たな課題が出ると指摘される。単純に言えば、習氏が責任を取って、国家主席3選を止めることだが、そんな殊勝さを持っている筈がない。

     


    (3)「李克強首相は、大学新卒者の雇用確保が政府の最優先課題だと明言している。実際、新卒者向けにインターンシップ枠を設けている企業には、他の一般的な雇用支援措置を差し置いて補助金が支給される。一部の地方政府は、起業する新卒者に低利の融資を提供。いくつかの国有企業は、民間で余剰化した非熟練雇用の一部を吸収する見通しだ」

     

    地方政府は細々とながらも雇用支援措置を行なっている。だが、焼け石に水であろう。1080万人の新卒に手厚い保護など不可能だ。

     

    (4)「総合人材サービス企業・ランドスタッドの広域中華圏マネジングディレクター、ロッキー・チャン氏は、中国の非熟練雇用市場は2008~09年の世界金融危機時よりも悪化しており、新規雇用は昨年比で20~30%減ると見積もっている。20年にわたって求人業務に携わってきた同氏は、今年はこれまで見てきた中で市場が最も低調だと指摘した。大手求人サイト、智辯招聘によると、予想給与水準も6.2%低下するとみられる」

     

    新規雇用は、昨年比で20~30%減ると見込まれる。それだけでない。給与水準も6.2%低下予想という。賃下げである。

     


    (5)「最近まで中国の大学新卒者の大量採用してきたのが、ハイテクセクターだった。ところが、業界全体では今、雇用を縮小する動きが広がっている。インターンネットサービスのテンセント(騰訊控股)から電子商取引のアリババまで、多くの大手IT企業は規制当局の取り締まり強化のあおりで、大規模な人員削減を強いられた。ハイテクセクター全体で今年、何万人もが職を失った、と5人の業界関係者がロイターに明かした。上海を拠点する人材管理サービスの許姆四達集団が4月に公表したリポートを見ると、ハイテク大手約10社のほぼ全てが最低でも10%の人員を減らし、動画配信の愛奇芸などさらに削減幅が大きくなったケースもあった」

     

    過去、雇用の受け皿であったハイテク大手10社は、最低でも10%の人員減らしを計画している。中国経済の落込みを反映したものだ。

     

    (6)「教育サービスも当局からにらまれた業界の1つで、やはり何万人も解雇した。最大手の新東方教育科技集団は6万人の削減を発表している。逆に新規採用の動きは鈍い。人材紹介会社ロバート・ウォルターズのジュリア・ジュー氏は、「インターネット企業は多くの雇用を減らしている。今、彼らに採用資金があるなら、新卒者よりも経験者を選んでいる」と説明した。近年はハイテク企業との仕事がほとんどだった北京拠点のヘッドハンター、ジェーソンウォン氏は目下、政府系通信企業が主な顧客だ。「インターネット企業の採用が、活発化する黄金時代は終わりを迎えた」と言い切る」

     

    インターネット企業の多くは、新規採用を減らして即戦力の中途採用に切り変えている。これで、新卒者の採用は一段と狭まる。

     

     

     

     

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