勝又壽良のワールドビュー

好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。

    カテゴリ:経済ニュース時評 > アジア経済ニュース時評

    a0960_008527_m
       

    現在、75歳以上の高齢者の過半は、医療費の保険料や窓口負担が1割り負担となっている。これが、現役世代の保険料負担を大きくしているという理由から見直しが進んでいる。 

     

    政府は株式の配当など金融所得を高齢者の医療費の保険料や窓口負担に反映する方針を固めた。損益通算のための確定申告をしなければ、保険料負担などが軽くなる不公正を是正する。2020年代後半(28年度)の開始を目指す。金融資産を多く持つ高齢者の医療給付費を抑え、現役世代の負担軽減につなげる目的だ。

     

    『日本経済新聞 電子版』(11月18日付)は、「高齢者の配当・利子、2020年代後半に保険料反映へ 現役世代の負担軽く」と題する記事を掲載した。

     

    政府が月内にまとめる経済対策に「具体的な法制上の措置を2025年度中に講じる」と明記する。26年の通常国会に関連法の改正案を提出する方針だ。

     

    (1)「自民党と日本維新の会が10月に結んだ連立合意書で、25年度中に制度設計を実現すると明記していた。まずは、75歳以上が入る後期高齢者医療制度への反映を目指す見通しだ。働き方の違いによる加入保険の差がない75歳以上から始めた方が、不公平感を生まないとの見方がある。医療やマイナンバーなどに絡む複数の法改正が必要となる。自営業者らが入る国民健康保険や介護保険への反映も検討する。会社員らが入る健康保険は対象外とする。確定申告と関係なく給与をもとに保険料が決まり、労使折半で負担するため反映のハードルが高いからだ。現役世代の資産形成を促す少額投資非課税制度(NISA)の口座も算定対象から外す」

     

    現行の窓口負担は、70~74歳は2割、75歳以上の後期高齢者は1割が原則だ。ただ、70歳以上でも「現役並み所得」があれば3割負担となる。75歳以上では、課税所得が145万円以上で、年収が単身世帯で383万円以上、複数人世帯で520万円以上を基準としている。こういう大雑把な基準が廃止されて、配当・利子が所得へ加えられる。

     

    (2)「後期高齢者医療制度や介護の保険料は、給与や年金といった所得に応じて決まる。上場株式の配当や社債の利子といった金融所得は、損益通算のために確定申告をすればいまも翌年度の社会保険料に反映されている。ただ医療保険を運営する自治体などが、未申告の金融所得を把握するルートはない。保険料や窓口負担が軽くなるケースがあり、不公平さが指摘されていた。厚労省は対象となる金融所得のうち、金額ベースで約9割が算定から外れているとみる」

     

    厚労省は、対象となる金融所得のうち、金額ベースで約9割が算定から外れているとみる。この未申告の9割が、今後は保険料算定基準に加えられる。保険料の窓口負担1割の人たちがかなり減るであろう。

     

    (3)「申告の有無によるひずみは金融所得を多く持つ高齢者の方が大きいとみられる。総務省の全国家計構造調査(2人以上の世帯)によると、60代以上の金融資産は2019年で平均1800〜2000万円台に上る。30代では資産が500万円台まで下がる。データ把握には証券会社などが国税庁に提出する税務調書を使う。市町村などが把握できるよう専用の「法定調書データベース(仮称)」をつくる方向だ。厚労省所管で医療費請求書の審査を手掛ける社会保険診療報酬支払基金(東京・港)に置く案がある。金融と保険データの照合を自治体が担うのは荷が重く、負担軽減にも配慮する」

     

    毎年、証券会社などが国税庁に提出する税務調書が渡されている。市町村は、このデータを使えば自動的に金融所得が把握される。

     

    (4)「財務省の試算によると、75歳以上で配当収入が同じ年500万円でも申告をしなければ医療保険料は年1万5000円ほどで済む。確定申告をすると、およそ35倍の約52万円に跳ね上がる。医療費の窓口負担も原則の1割から3割に上昇する。75歳以上が入る後期高齢者医療制度の給付費は、総額の4割を現役世代らの保険料を原資とする「仕送り」が支える。所得のある高齢者が能力に見合った負担をすれば、結果的に現役世代からの支援は抑えられる」

     

    75歳以上が入る後期高齢者医療制度の給付費は、総額の4割が現役世代らの保険料で賄われる。金融所得が健康保険料に加算されると、現役世代の負担が減ることは確かだ。内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査」によると、65歳以上の高齢者世帯のうち、約27.%が「配当・利子収入あり」である。そのうち、年間配当収入が50万円以上の世帯は約8.%を占めている。

     

    この前提で荒っぽい計算だが、100万高齢者世帯あたり「追加財源約9億円」規模の効果が見込める。制度の設計次第では、現役世代の負担比率が数%単位で軽減される可能性があるという。これは、大きな改善効果かも知れない。「負担公平」という時代の波が、高齢者へ押し寄せてきた。

     

     

    caedf955

       

    中国の10月固定資産投資が、前年同月比約11%もの急減になった。過剰生産に根を挙げた企業が、ついに設備投資を諦めたのか。あるいは、地方政府が財源難でインフラ投資を手控えているのか不明である。いずれにしても、GDPの42%(2023年)を占める総資本形成に異変が起こっている。仮に、実勢悪を示すものであれば、今後の中国経済は経済成長率が急低下する公算が強まるであろう。最終的には、今少し様子を見る必要があろう。

     

    『ブルームバーグ』(11月17日付)は、「中国、異例の投資急減-他の指標と整合性欠き実体経済見えず」と題する記事を掲載した。

     

    中国の投資が急激に落ち込んでいる。14日発表の公式統計に基づくと、10月の固定資産投資は前年同月比で11%余り減少したと推計され、新型コロナウイルス流行初期の2020年以来最悪の落ち込みとなった。国家統計局は固定資産投資について、年初来の累計のみを公表しており、月次データは開示していない。

     

    (1)「このまま投資がさらに急減すれば、中国の国内総生産(GDP)のほぼ半分を占める活動が揺らぎ、輸出減速に苦しむ経済全体への下振れリスクを高めかねない。それにもかかわらず、エコノミストらはこの異例の投資急減を他の経済指標と整合的に説明できず、原因を把握しかねている。7月から始まった顕著な固定資産投資減少は、現時点では成長率を大きく押し下げる要因にはなっていない。別の投資指標である総資本形成は、79月(第3四半期)GDP成長率の約2割を押し上げた」

     

    顕著な固定資産投資減少は、この7月から始まっているが、GDP成長率には表れていない。この点が、「なぜか」と疑問を呼んでいる。事実は一つで、固定資産投資が減っている点だ。増えてはいないのだ。

     

    (2)「スタンダードチャータードの丁爽チーフエコノミスト(大中華圏・北アジア担当)は「投資減少には幾つか説明できる理由があるが、ここまで落ち込んだ理由は理解しがたい」と述べ、投資の重石は10~12月(第4四半期)にさらに大きくなり、「GDP成長鈍化の最も際立つ要因になる」と警告した。

     

    固定資産投資の急減が事実であれば、今後のGDP低下要因となるのは確実である。

     

    (3)「興味深いのは、投資の落ち込みが政府による反「内巻」キャンペーンの開始時期とほぼ一致している点だ。内巻とは、過剰な生産能力が激しい競争を引き起こし、企業の利益をむしばんでいく状況だ。反内巻政策は産業全体の過剰生産を抑える狙いがあるが、具体的な投資や生産能力の抑制目標は公表されておらず、その影響度は測りにくい。産業投資の抑制は過剰供給を抑える一方で、景気刺激策がない限り雇用や家計所得を圧迫する恐れもある」

     

    興味深いのは、投資の落ち込みが政府による反「内巻」キャンペーンの開始時期とほぼ一致している点と指摘されている。となれば、固定資産投資の数字を操作し、地方政府が意図的に「減らした」とみられる。

     

    (4)「国家統計局によれば、固定資産投資は物価下落に押し下げられたが、総資本形成は価格調整後の成長を反映している。統計局はブルームバーグ・ニュースに対し書面で、この2つのデータは対象範囲が異なり、固定資産投資には土地購入費や中古設備の取得費など、総資本形成に含まれない項目も入っていると伝えた」

     

    国家統計局は、固定資産投資が企業報告の「生データ」という位置づけだ。GDPの総資本形成と概念が異なるとしている。それ故、固定資産投資の急減をGDP成長率へ直結させることは、「正しくない」という指摘である。これも、一理ある説明だ。日本でもよくある例だ。

     

    (5)「ギャブカル・ドラゴノミクスの中国調査ディレクター、アンドリュー・バトソン氏は、実際の企業投資はすでに鈍化していて、今回の投資急減は実体経済へのショックではなく、報告方法の変更を反映したものかもしれないと分析している。不動産投資の悪化に加え、地方政府が隠れ債務返済や企業への未払い金の清算を優先したことで、インフラ投資も減速。さらに製造業投資の年初来伸び率は、5月時点の9%近くから10月には2.%まで急低下した。  一方、減速の兆しがほとんど見られない反内巻政策の対象となった業種もある。例えば自動車業界では投資が18%近く急増した」

     

    固定資産投資の急減の真相は、今のところ不明である。ただ、減っていることは事実であり、これが、中国経済のGDP減速へ反映されることは疑いない。落勢を強めているのだ。

     

     

     

    a0960_005041_m
       


    斜陽化の広東省成長率

    BYD成長も食い潰す

    AIやロボットも限界

    30年代1.7%成長へ

     

    中国経済は今後、どのような方向を歩むのか。世界中が注目している。肝心の中国政府自体が、確たる方針の下で進んでいるとはみえないからだ。権威主義政権を維持するには、絶えず経済成長率を高めなければ国民の信頼を失うという「脅迫観念」に苛まされている。これが、景気即効性の大きいインフラ投資や設備投資を強行させてきた理由である。だが、ここに大きな落とし穴が控えている。個人消費を犠牲にするという罠にはまったのだ。現在の中国経済が、方向感覚を失っているのは、この罠によるものである。

     

    投資優先による消費軽視の経済が、中国では改革開放(1978年)以降、実に50年弱も続いている。これが、もたらした投資と消費の壮大なギャップは、簡単に埋まるものではない。ましてや、習近平政権は15次5カ年計画(2026~30年)でもこれを継続の方針だ。言葉の上では、国民生活の充実などと言ってはいるが、「新質生産力」(AIやロボットなど)の育成を前面に掲げている。人口高齢化にともなう社会福祉重視などは「付け足し」にすぎないのだ。

     

    習近平氏が、自らの権力基盤を守るには、是が非でも経済成長率を引上げるほかない。それは、権威主義政治を維持するには絶対不可欠の手段である。まさに、中国共産党は「矛盾の再生産」の上に成り立っているひ弱な政権である。

     

    中国経済の矛盾を一目で理解するには、中国最大の省である広東省の経済状況を観察することがもっとも手短な方法である。広東省の域内経済(GRP)は、中国GDPの10.4%(2024年)を占めており、過去36年間1位を占めきた。省内には、広州市や深セン市を擁する。自動車の広州に対して、ハイテクの深センという組み合わせだ。こうして、中国経済のエンジンが、広東省であると言って差し支えない状況にある。

     

    一方、不動産バブルの原点も広東省である。中国恒大集団は、派手な不動産ビジネスを展開したが、資金繰りが続かずに「自滅」する形となった。恒大のほかに、碧桂園や万科企業という中国不動産業界を牛耳った企業も広東省が出自。今や「気息奄々」状態へ追い込まれている。バブルの発祥地だけに、その後の落ち込みは他省を上回る深手を負っている。これが、広東省経済に大きな後遺症を残しているのだ。25年上半期の東莞市(伝統産業の主産地)では、住宅価格が前年同期比58.8%も急落したほどである。

     

    これをみれば分る通り、広東省は「二つの顔」を持っている。製造業と不動産の「二頭馬車」で、中国経済を牽引してきた。だが、不動産は自滅した形であり、その後遺症によって広東省経済に深い傷跡を残している。こうして、広東省は完全に中国経済の「縮図」になった。広東省経済を分析すれば、中国の未来も解けるのである。

     

    斜陽化の広東省成長率

    ここで、広東省の域内経済(GRP)成長率と中国全体のGDP成長率の推移を見ておきたい。(表省略)

     

    中国GDPと広東省GRPの成長率を比較すると、2015~19年までは広東省が上回っている。だが、21年以降は中国GDPが上回って逆転した。理由は、不動産バブルが広東省GRPを押上げ、21年以降は不動産バブル崩壊が逆転させたことだ。広東省経済は、不動産バブルの「光と影」を100%反映している。バブル崩壊の影響が今後、強く出るであろうことを予測させるに十分だ。

     

    次は、製造業へ視点を移しておきたい。

     

    製造業付加価値は、先進製造業と伝統産業(非先進型)に分けると、24年で先進製造業は約56.7%を占めている。業種は、電子・電機、自動車、ロボット、集積回路、スマホ、新エネ車などだ。先進製造業の比率が6割弱にも達したことは、広東省が全国でも最も早く「製造業の高度化」に成功しつつある地域であることを示している。

     

    広東省のハイテク企業は、約7万5000社を数えており、1兆元(約21兆円)規模の産業クラスターが9つも形成されている。有名企業名を挙げると、ファーウェイ(華為技術)やZTE(中興通訊)の通信機器、BYD(比亜迪)やOPPO (歩歩高)のEV、DJI(大疆創新)のドローンなどだ。いずれも、深センの技術革新と広州の製造基盤が合わさり、世界市場に向けて先端製品を輸出している。

     

    伝統産業の付加価値は、24年で製造業の43.3%である。業種は、繊維、家具、玩具、一般家電(扇風機など)、食品加工、建材など。地元経済の雇用維持に大きな役割を果している。有名企業は、繊維・アパレルのYISHION(以純)や南海繊維集団、陶磁器の冠珠陶瓷(GUANZHU Ceramics)、家具の紅蘋果家具(Red Apple)などだ。いずれも,輸出でブランド名が知られている。

     

    BYD成長も食い潰す

    以上で、広東省製造業の先進製造業と伝統製造業の大まかな分類と輸出状況をみてきた。問題は、広東省がファーウェイやBYDという世界的に有名な企業を抱えながら、最近の広東省GRP伸び率が全国平均を下回っている点だ。つまり、先進製造業がどれだけ成長力を付けても、広東省GRPを押上げられずに深い溝に落込んでいる現実を知ることが極めて重要である。

     

    習近平氏は、「新質生産力」と称して15次5カ年計画で、ロボットやAI(人工知能)の開発に力を注ぐことで、中国経済を浮揚させられると信じている。だが、広東省経済をみれば分るように、中国は不動産バブル崩壊という大津波によって飲み込まれているのだ。この津波跡の「ドロ沼」を片付けない限り、中国経済は浮揚できないことを広東省経済がものの見事に証明している。習氏は、この現実を直視しなければならないのだ。(つづく)

     

    この続きは有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』に登録するとお読みいただけます。ご登録月は初月無料です。



    https://www.mag2.com/m/0001684526



     

    a0001_001078_m
       

    スタバは、1999年に北京市で中国1号店を開き、コーヒーが一般的ではなかった同国にカフェ文化を広めた。中国内陸部の雲南省では、コーヒー農園を支援し、グローバルでの調達力を背景に現地のコーヒー豆市場でも強い影響力を持ってきた。そのスタバが、現地資本の現地資本のボーユーと合弁会社を設立し事業の立て直しを急ぐ。企業価値は、40億ドル(約6100億円)で、ボーユーが6割、スタバが4割を出資する。合弁会社はスタバ本社からブランド使用のライセンス供与を受けて事業を展開する。

     

    『レコードチャイナ』(11月15日付)は、「スタバなどが中国事業を一斉売却?その真相は…―中国メディア」と題する記事を掲載した。

     

    中国メディア『第一財経』(11月13日付)は、米スターバックスなど外資系飲食チェーン企業が中国事業を「一斉売却」するという情報の真相について報じた。

     

    (1)「記事は、スタバが今月3日に中国事業について、自社が40%、中国企業が60%の株式を保有する合弁会社を設立して店舗運営を行う戦略的提携を発表し、米ファストフードチェーンのバーガーキングも10日に中国事業について合弁会社を設立し、中国の投資会社が83%を出資する計画を明らかにしたと紹介した」

     

    スタバが、現地資本と組んで合弁会社にした理由は、中国市場が不況で未曾有の低価格追求時代になっているからだ。スタバの国際標準の経営システムを適用困難になったので、すべてを現地化する目的である。上海市中心部で11月初めにアメリカンコーヒーを注文する場合の価格は、スタバが27元(約590円)からなのに対し、ラッキンは割引クーポンを適用すれば14元からと約半分という。消費者が、節約志向を強めるなかで、スタバは「ぜいたく品」に映る。スタバが、生き残るには低価格化路線へ転換するほかないのだろう。トヨタもEV(電気自動車)では、部品からすべて現地化している。

     

    (2)「外資系飲食チェーンの中国事業をめぐる2大トピックにより、中国国内ではハーゲンダッツやコスタ、ピザハット、デカトロン、イケアなどさまざまな外資系ブランドの中国事業売却に関する未確認情報が飛び交う状況となり、「激しい市場競争や消費トレンドの変化に適応できず業績を悪化させている外資系ブランドが中国から一斉に撤退するのでは」という議論が起きていることを伝えた」

     

    中国では、外資系ブランドの中国事業売却に関する情報が飛び交っている。

     

    (3)「一方で、スターバックスが先月29日に発表した2025会計年度通期決算で、中国事業の売上高が31億500万ドル(約4780億円)ドルと世界平均を上回る前年比5%増となったことを指摘。店舗運営利益率も二桁水準を維持しており、同社が中国を国際市場の中で「最も収益性が健全な地域の一つ」と評価していることを紹介した。その上で、スタバやバーガーキングによる合弁会社設立の動きに関連して起きた外資ブランドの「集中撤退」の論調について、業界関係者が否定するとともに「運営モデルを調整している」ことの現れと強調したことを伝えた」

     

    スタバは最新決算において、中国市場で世界平均を上回る前年比5%増の売上を上げている。より高い利益を上げるには、現地化がベターという選択なのだろう。

     

    (4)「記事によると、業界関係者は、中国が巨大な消費市場であり、外資ブランドにとって引き続き魅力的な市場である一方、現地での競争が激化しており、外資ブランドは競争に対応すべく「運営や拡大の権限を現地のチームに委譲し、国境をまたぐ管理コストを抑えるいわば『軽資産型』モデルへの切り替えを進めている」との見方を示したという。また、確立されたブランドと予測可能な成長性を持つ外資ブランドは、中国資本にとっても魅力的な投資対象であると指摘。スターバックスの案件も「特に引く手あまただった」としている」

     

    外資ブランドは、厳しい中国での競争に対応すべく「運営や拡大の権限を現地のチームに委譲し、管理コストを抑える」という選択に切替えた。自前主義から提携主義への転換だ。

     

    (5)「記事は、バーガーキングの合弁会社設立も中国事業でさらなる成長を求める上での積極的な「戦略的行動」であることを示す情報として、中国資本の資金と力を使って35年までに中国国内の店舗数を現在の約1250店舗から4000店舗以上へと大幅に拡大する目標を設定していることを伝えた」

     

    バーガーキングの合弁会社設立も、中国資本の資金と力を使って35年までに中国国内の店舗数を3.2倍へ拡大する。「郷に入っては郷に従う」という外資の経営転換だ。

    a0070_000030_m
       

    日銀の植田和男総裁は、10月の金融政策決定会合後の会見で、26年春闘の動向について、米国の関税措置の影響で収益が下押しされている製造業、中でも「自動車関係は注意深くみていきたい」と指摘した。26年も確実に賃上げが進むのか。「期待」される自動車総連は、物価高が続く以上、賃上げで今年を下回る理由がないと強気姿勢だ。国会では、国民民主党が予算委員会質問で、企業法人統計データを使い、企業がいかに内部留保を手厚くしているか指摘。賃上げ余力は十分と援護射撃している。

     

    『ロイター』(11月14日付)は、「26年春闘、昨年より下向きで臨む選択肢はない=自動車総連会長」と題する記事を掲載した。

     

    自動車総連の金子晃浩会長は14日、ロイターとのインタビューで、2026年の春季労使交渉(春闘)に臨むにあたり、昨年の要求を下回ることはないとの考えを示した。米国の関税措置が企業収益を圧迫しているものの、物価高が継続し、実質賃金がマイナス圏で推移する中、「昨年よりも下向きベクトルで臨むという選択肢はない」と語った。

     

    (1)「米国の自動車関税は最大27.5%から15%へ引き下げられたとはいえ、従来の2.5%に比べると大きな負担増となり、今期の企業収益は約3割減少するとの見通しもある。金子会長は「それを無視するわけにはいかない」としつつも、それが要求を見送ることにはつながらないと語った。「我慢し続けてきた過去30年間と同じ轍を踏んではいけない」と指摘。賃上げが消費を拡大し、消費拡大が成長を加速させるという好循環を安定させるには、状況が悪化しても賃上げの流れを維持することが重要だとの認識を示した」

     

    自動車総連は、これまで「物わかりの良い労組」で有名だった。景気が悪いと、労使一体で企業防衛という美辞麗句に酔ってきた。企業は、その裏で利益剰余金(内部留保)を手厚くするという「裏切り行為」に出遭ってきたのだ。こういう「甘さ」が、日本経済を失われた30年へ追い込んだという痛烈な反省だ。

     

    (2)「自動車総連の25年春闘の最終集計によると、賃金改善分(ベースアップ相当)と定期昇給(定昇)相当分を合わせた賃上げ額は1万2886円となった。1976年以降で最高となったものの、年代別では40代後半から60代にかけて物足りなかったとの認識がある。金子会長は「執行部の責務として、すべての組織のすべての組合員が実質賃金を上回り、生活水準が改善されることを求めている」と強調。生産性向上やサプライチェーン(供給網)全体で取引適正化へ、組織的に粘り強く働きかけていく考えを示した」

     

    これからは、40代後半から60代にかけての賃上げを手厚くするという。20代だけが、集中的に賃上げの恩恵を受けてきたが、中高年労働者への配分も配慮するという。

     

    (3)「自動車総連は、25年春闘で中小組合を念頭に賃金改善分として月額1万2000円の水準を踏まえて要求を構築する方針を示した。金子会長は、「今年はまだ決めていない」としつつ、労組が要求を躊躇しがちになる状況であるため「何かしら数字は出した方がいいんじゃないかと思っている」と語った。自動車総連は自動車関連の労働組合で組織され、1015組合が加盟、78万人超で構成している。今後、12月12日の組織内機関会議で取り組み方針を確認。26年1月15日に開く中央委員会で正式決定する予定」

     

    自動車総連は25年春闘で、賃金改善分として月額1万2000円の水準を踏まえて要求を提出した。26年もこれを下回らないという姿勢であろう。

     

    (4)「自動車総連の上位組織にあたる連合は、賃上げ率(定昇分含む)が24年に5.10%、25年に5.25%と加速したものの、実質賃金はマイナスが続き、生活が向上したと実感している人は少数であるとし、26年春闘の基本構想で5%以上の賃上げ率を目指すとしている。日銀の植田和男総裁は、10月の金融政策決定会合後の会見で、26年春闘の動向について、米国の関税措置の影響で収益が下押しされている製造業、中でも「自動車関係は注意深くみていきたい」と指摘。政策判断を巡っては、春闘の「初動のモメンタムを確認したい」と述べた」

     

    連合は、26年春闘の基本構想で5%以上の賃上げ率を目指すとしている。日銀は、自動車業界の賃上げに注目している。

     

    (5)「SMBC日興証券の集計(11月13日時点)によると、TOPIX(東証株価指数)を構成する3月決算企業の26年3月期の通期純利益予想は、製造業の落ち込みが響き、前年比3.1%減の43兆2406億円となっている。製造業は同8.4%減の20兆4997億円と予想。このうち輸送用機器は同30.5%減の4兆7798億円と落ち込みが大きくなっている」

     

    11月のロイター企業調査で、2026年春闘について実現可能な賃上げ(ベースアップと定昇)幅を聞いたところ、25年と「同水準」との答えが72%を占めた。米国の関税政策が賃上げ機運に水を差す懸念がくすぶる中でも、25年春闘の見通しを質問した前年11月調査と比べ、「下回る」と回答した割合が13ポイント低下し、その分がほぼ「同水準」に移行した。具体的な賃上げ率は「3%以上5%未満」と「1%以上3%未満」がそれぞれ40%で最も多く、前年11月の調査結果と同じ傾向を示した。企業側も25年並みの賃上げを「覚悟」している。

     

     

     

    このページのトップヘ