手で曲がるフィルム状の太陽光発電ペロブスカイトは、耐用年数を30年へ引上げることが可能になった。軽量・柔軟で、ビルの壁面や窓にも設置可能で広範囲の利用が見込めるエネルギーの切り札が登場する。日本のように平地が限られた国に最適とされる。日本発技術で原料のヨウ素は、国内に豊富で世界2位の賦存量である。次世代エネルギーとして、一挙に世界最前線へ飛び出た形である。
『日本経済新聞』(11月26日付)は、「『曲がる太陽電池』耐用30年 コニカミノルタ、保護膜供給 従来の3倍、車載へ前進」と題する記事を掲載した。
コニカミノルタは25日、ペロブスカイト太陽電池の耐用年数で従来の3倍の30年程度を実現した検証結果を発表した。「有機EL照明」の技術を転用した保護膜を、新興のエネコートテクノロジーズ(京都府久御山町)に供給し検証した。エネコートはトヨタ自動車と車の屋根につける太陽電池を開発している。耐用年数が延びることで車載実現に前進する。
(1)「ペロブスカイト型は軽くて薄く、ビルや車の屋根など曲面にも設置できる。コニカミノルタは太陽光が当たる電池表面を保護し、わずかな水分も通さない樹脂製の保護フィルムを開発する。京都大学発で2018年に創業したエネコートは27年からまず小型電池で量産を始め、コニカミノルタのフィルム採用を順次検討していく」
ペロブスカイトは、水の浸入に強くなれば、屋外やビルの壁などに設置してもより長期にわたり風雨に耐えられる。これまで、10年が限度とされてきた耐用年数が、一挙に30年まで伸びれば、需要は急拡大するとみられる。耐用年数が長くなれば、ライフサイクルコストが下がり、普及が加速する。日本が、太陽光発電分野で世界トップに躍り出る可能性を示し、非常に重要な技術進歩である。
(2)「コニカミノルタとエネコートは、コニカミノルタの保護フィルムを使って水分の透過試験を実施。その結果、屋外での耐用年数を理論上30年ほどまで長くできる可能性を確認したという。ペロブスカイト型はわずかな水分に触れても結晶が分解して性能が落ちる課題がある。これまで耐用年数は5~10年程度と、一般的な太陽光パネルの半分程度にとどまってきた。エネコートは今後、トヨタの電気自動車(EV)の屋根などにペロブスカイト型を搭載することを目指している。EVに搭載すれば常時発電することで航続距離を伸ばせる」
ペロブスカイト型は、わずかな水分に触れても結晶が分解して性能低下という課題を抱えてきた。それが、コニカミノルタの保護膜によって耐用年数を30年まで延長できれば、障害は一挙に解決される。
(3)「同日、オンライン記者会見に登壇したエネコートの加藤尚哉社長は「コスト面などの条件を満たせば、トヨタのEV向けの電池にコニカミノルタのフィルムを使う可能性もある」と話した。事務機が、主力のコニカミノルタが保護フィルムを開発できたのは、薄くて曲がる有機EL照明の事業を手掛けていたためだ。約10年前に参入し、自動車や電車の天井に張り付ける照明として普及を狙った。最終製品まで供給したが、事業として広がらなかった。大幸利充社長も「事業としては失敗だった」と認める。それでも有機EL照明に水を通さないための保護膜を開発・生産し、そのノウハウが社内に蓄積された。電気を光に変換する有機EL照明は、構造が光を電気に変える太陽電池と本質的に似ている。岸恵一執行役員は、「35年度に保護フィルム市場は500~800億円の見通しで、シェアナンバーワンになりたい」と意気込む」
フィルム状のペロブスカイトは、広範囲な利用が可能である。EVの屋根やバンバーに設置される可能性も出てきた。中国はタンデム型(筒状)で高出力(800W超)を実現し、量産体制を整えているが、耐用年数は10〜20年程度が主流だ。日本の30年耐久素材は、長期的な導入コストの回収や建材一体型用途において圧倒的な優位性を持っている。特に都市部のビル壁面や車載用途では、軽量・柔軟・高耐久という日本の技術が強く求められる。中国が、タンデム型へ進出したのは、日本がフィルム状での特許をすべて取っているため、やむなくシフトしたもの。日本の先手必勝による。
(4)「ペロブスカイト型は、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が開発した日本発の技術だ。国内では積水化学工業やパナソニックホールディングス、リコー、シャープなどのメーカーが、フィルム型や建材一体型などのメーカーとして参入している。調査会社の富士経済によれば、ペロブスカイト型の世界市場は40年に3兆9480億円と、24年(590億円)から急拡大する。10月には高市早苗首相が所信表明演説でも言及し、政府も国内生産を補助金などで後押しする」
実用化フィルム型(印刷方式)の電力転換効率は、15~20%程度とされている。ただ、住宅や車載、衣類、農業用ハウスなど、「設置面積の自由度」が活かせる分野では、15〜20%の効率でも十分な価値を持つと指摘されている。衣類でも利用できるとなれば、スマホの充電は「自家発電」で補える。




